「死にゆく母が家族を繋ぐ!」湯を沸かすほどの熱い愛 だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)
死にゆく母が家族を繋ぐ!
まずは観終わってすぐに感じたことは、日本アカデミー賞主演女優賞の宮沢りえ、助演女優賞の杉咲花の迫真の演技に、ただただ拍手を送りたいと思いました。喜怒哀楽すべてを演技きったお二人のすさまじい演技力あってこその作品ではないでしょうか。これぞプロ!と思わせられます。
余命2カ月宣言を受けたおかあちゃんがやっておくべきことを命がけでやり通していきます。この映画全体に言えますが1つ1つが非常に重い課題です。通常の映画であればどんよりと凹むようなテーマばかりなのですが、おかあちゃんのたくましさと明るさで、映画の中だけでなく観ているこちら側も何だか救われている気持ちになります。
いじめられている娘を立ち向かわせた母、女にだらしがない頼りにならない旦那を連れ戻し銭湯を再開させる母、旦那が浮気した相手の子供を引き取り育てる母、自分の余命が少ないのに周りにいつも元気づける母。全ての人を思い不幸も幸せに変えていくおかあちゃんは偉大でした。強さそして優しさを感じます。
2時間ちょっとという時間で、これだけたくさんの話を混ぜ込んでいますが、全くだらけることもなく中途半端にすることもなく、1つ1つにしっかり意味を持たせた物語になっています。通常ならドラマにできるくらいの濃い内容をよくぞこれだけ詰め込んだと感じます。
さらに見事と思わされたのは、細かい伏線のようなシーンが後にすべてつながっていき、何一つ無駄なシーンがなかったです。もう、ずっとこの作品にのめり込み時間を忘れて見入ってしまいました。例えば、娘の安澄が手話を読み解くシーン、ヒッチハイカーが子供達におかあちゃんから産まれてきてうらやましいと話したシーン、蟹のお礼の手紙を安澄に書かせていたシーンも全てが意味があり繋がるのです。
本作評価が非常に高い映画ではありますが、ラストだけ結構賛否両論となってしまっているようですね。急に恐ろしいカルト映画のような終わり方をしてしまっています。正直私もラストはびっくりしましたし、なんだか今まで語ってきたことを無かったことにするくらいの衝撃度でした。しかしながら、終わってみて改めて考えると、あのおかあちゃんだもん、普通な終わり方させたらそれはそれでラストでがっかり映画の評価なります。そう思うとラストああするしかなかったんではと思えてくるほどです。
「湯を沸かすほどの熱い愛」ラストでこれだけタイトルが意味を成してくるとは。。。
素晴らしい映画でした。