この世界の片隅にのレビュー・感想・評価
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しみる…。
深く深く余韻の残る傑作
優しくて丁寧な映画
多くの人々に見て欲しい日本映画です。
描かれている時代は戦中、場所は広島と呉。
このキーワードで戦争映画だと決めつけないで欲しい。
庶民の生活の中に『大東亜戦争』があるだけなんです。
決して悲しいものではありません。
こう言う時代だからこそ、笑って暮らしたい人々の普通の生活が描かれてています。
この作品の原作者、こうの史代さんは『夕凪の街 桜の國』が有名な作品です。
同じ広島県が舞台になっている為、切り離す事は避けられませんが、直接影響の無かった周囲の地域に住む人々の当時の反応が描かれています。
後半に少し辛いエピソードがありますが、悲しみの事実から避けて通れないながら、その先には希望の光が優しく差し込んで来ます。
EDロールの背景にさえストーリーが描かれているので、最後の映倫マークが確認出来るまで席を立たないで下さい。
片渕須直監督はスタジオジブリにいた事のある監督です。
『名探偵ホームズ(TVシリーズ)』『魔女の宅急便』等に参加されていて、後継者扱いされている細田守監督や新海誠監督よりも宮﨑駿の直系とも言えます。
中途半端な再現では無く、今では消えてしまった街を資料と当時を知る人々の証言を自腹を割いて集め歩き、真実を描く事を大切にする事で、形や色、音までもが実写よりリアルに感じられます。
見ている観客が、その世界の片隅に存在するかの如く……。
分かり易く言うと『サザエさん』の様な『笑える』作品なんですけどね。(笑)
アニメは子供っぽいとか思わないで下さい。
アニメだから再現出来た真実があります。
戦争を知らない世代、同じ時代を生き抜いた世代、幅広く全ての人たちに見て欲しい映画です。
上映スタート時の上映館が微妙に少ないのですが、徐々に増える予定になっています。
映画は初動が肝心です。
公開初日と二日目で今後の扱いが決まります。
見に行ける人はなるべく早く見に行って下さい。
何年経っても大切に語り続けたい日本映画です。
日常の大切さと、それを奪われることの悲惨さ
70代で幼少期に戦争体験をした世代の人と観に行きました。彼女の感想は、「ひもじさは、こんなもんじゃない」。しかし片渕監督は6年がかりで資料や現地調査など、当時の状況を徹底的に調べ上げているので、史実とそんなに食い違いはあるとは思えない。その齟齬の原因は、おそらく、のん演じるすずさんのメンタリティにあると推察します。いわしの干物4匹で一家4人の3食分のおかず(これもおそらく比較的マシなときの設定ですが)、など、徐々に追い込まれている状況は描かれて入るものの、描写も淡々としているし、すずさんは相変わらずほんわか、のんびりしていて、めげる様子がないので、悲壮感がないのです。しかし、この作品は、ほんわか、明るいメンタリティの人をどこまで追い詰めたら壊れるか、の思考実験的な側面があり、淡々と平和時からの日常を描くこともその思考実験の前提になっているので、その点への了解がないと、なかなか壊れないメンタルはおかしい(ので、ひもじさの描写が甘い、と映る)とか、日常描写もトロ臭いとか感じる人も居ても仕方がない。逆に、その点への了解があれば、どんなに明るいメンタリティの人でも究極に追い詰められれば壊れて笑顔を失うし、そのことが戦争の問答無用の悲惨さを状況証拠的に描いているという話の構造もわかってきます。反戦イデオロギーを大上段から振りかざして、グロテスクなシーンを盛りだくさんにして厭戦思想を押し付ける作品は過去にもありますが、このように、平和時の日常風景からはじまり、真綿で首を絞めるように主人公を追い詰め、状況証拠的に戦争の悲惨さを浮き彫りにするという方法論は今までにないと感じました。この方法論を成立させるには、すずさんのメンタリティの描き方が精緻でなければならず、その点から、のん以外の役者では本作は絶対に成立しなかったでしょう。
「すずさんのボンヤリな日々」
漫画と映画で補完しあう「この世界」
公開日2016年11月12日以来、2回目の観賞。
もともと原作ファンで、1回目はなるべくフラットな状態で観たが、今回は原作を久しぶりに再読し、アートブックも読んだ上で映画館へ。
アートブックを読んだ後だと、1秒にも満たないちょっとした画にもいろんな情報が盛り込まれてることが分かる。
例えば、祝言のために浦野家一同が呉駅を通るシーンだけでも、駅のあちこちに海軍の軍人がいること(逃亡する兵隊がいないか見張っている)、改札の駅員に女性しかいないこと(男性を兵隊に取るために、女性ができる仕事に男性が就くのは禁止されていた)など、語られない背景にも細かい情報がぎっしり詰め込まれている。
それとやっぱり、画の美しさ、緻密さが凄い。
原作の絵を尊重しつつ、ここまで微細で美しいアニメーションになるのか…!という驚きは、原作を読み直した後の2回目のほうが大きかった。
個人的に、映画オリジナルで一番好きなのは最初の空襲シーン。
初めての空襲に怯えるすずさんと晴美さんに対して、発動機部に勤めるお父さんは2人を守りながらも自分が携わった航空機が活躍するのを誇らしく思い、「広工廠歌」を歌う。
画用紙に絵筆で色を置くように、放たれる砲弾。
空襲の恐ろしさとともに、「恐ろしい」だけでは片付けられない呉の人々の複雑な心情が描かれていて、なんとも言えない気持ちになる。
が、映画の尺に収めるため、漫画で描かれた大事なことの多くがすくい取られないままになってしまっているのもまた事実だと思う。
リンさんのエピソードの多くが削られているのはもちろん、それに伴いすずさんと周作さんの関係性の変化、心の機微もだいぶ簡略化されてしまっている。
そして例えば、近所に住む知多さんや刈谷さんが8月7日に広島へわらじを届けたことでどうなるのか、とか、終戦後にすずさんが生家を訪れた際、家はどうなっていたのか、とか、ストーリーの枝葉の部分なれど「この世界の片隅に」という作品を形作る上では欠かせない様々な要素も間引かれている。
また、これも尺の都合だと思うが、特に映画の前半部分で「もう少し間を取ってほしいなぁ」と思う場面が散見された。
特にコミカルなシーンは、ちょっとした間でもう少し笑えるようになるのに…と思うことが多かった。
また、すずさんと周作さんが橋の上で語らうシーンなど、大事な場面の会話ではもう少し緩急を付ければもっとセリフが生きてくるように思えた。
この作品の漫画と映画はどちらが優れているというものではなく、補完関係にあると思う。
もし映画を観て「良い作品だった」と思うのなら、ぜひとも原作を手に取り、そしてできれば細かい注釈まで読み込んでほしい。
それにより、すずさんがいる「世界」にもっと奥行きが生まれ、物語がさらに愛おしく感じられると思うから。
傑作。必見。
絵の力、人の力
言葉が見つからない…
生きていく勇気とチカラが沸いてくる・・・
先行上映を観てからしばらく経ったのですが、
まだ毎日映画のシーンのひとつひとつが思い起こされ、頭の中を
ぐるぐる駆け巡るのです。
ことさらに反戦を訴えるでなく、悲しみや残酷さのみに焦点を合わせる
でなく、ただその辛い日常を生き抜くすずさんの佇まいに
しなやかな強さと、軽やかな明るさを
圧倒的な愛おしさで描き切る。
思いのほかテンポがよいので、のんびりした絵柄とのギャップに
戸惑いますが、ラストに向かっていくにつれ、
登場人物たちに寄り添いたい、とのめりこんでしまいます。
どんな時代にいても、社会の不条理さは変わらない・・・
戦争はなくても、
誰かが簡単に殺されたり、災害に遭ってしまったり、
死なないまでも辛い思いを抱えて生きている。
一方で、
それでも面白かったら何かを忘れて笑い飛ばしたり、
人目を忍んで泣いてしまったり・・・
人は弱く、でも強い。いろいろあっても生きていくんだ、
そんな決意を思い起こさせてくれる映画です。
最後にキャストの皆さん。とてもよかったのですが、
特にすずさん役ののんちゃん。(本名:能年玲奈さん)
あまちゃんでのアキちゃんのイメージを払拭、
彼女の凄いところはそれを第1声から微塵も感じさせないことだ。
すずさんというビジュアルとのんちゃんの声が合致し、
一人の女優となった。
それは実写でなくても主演女優賞級の素晴らしさでした。
なのにテレビメディアでの全国的な紹介がない・・
宣伝的にはかなりのハンディ。
まあ事情は察しますが、こんなクオリティの高い作品、
才能を発揮した主演女優をほとんど紹介しないなんて、
メディアの役割放棄ですね。
民放テレビキー局は凋落していくわけですね。納得・・・
文句なしベストワン
戦争映画ベストワン
日本映画史に名を残す傑作
戦争の中で生きている
ずっと残っていく映画だと思う。
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