この世界の片隅にのレビュー・感想・評価
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普通の人のリアルな日常
この映画には私たちのおじいさん、おばあさんのような大勢の普通の人たちのリアルな日常がたくさん詰まっているように感じました。決して悲惨一辺倒ではなかったし、だからこそなんでもないところでじわっと来てしまう。その時代を生きた人が世を去って個としての記憶にアクセスすることはできなくなったとしても、このような形で記憶は継承されるのですね。
主人公すずの得意な絵と絡めて織りなされる表現も素晴らしかったです。
当たり前に生きていることが奇跡であることを思い知る
戦時中の昭和18年広島に住むすずは、幼い頃出会った周作から求婚を受け、軍港のある呉へと嫁ぐ。縁もゆかりもない土地で、すずは美しい街の光景の中、自分の居場所を見つけていくが、やがて戦火が街を変えていく。
映画は大体三部構成になっていて、すずの幼少期から嫁に行くまでは、ただひたすら美しい故郷の風景や幻想的な出来事が描かれ、呉へ嫁いでから一年の間は、周作との夫婦生活や家族関係の絆・美しい呉の街並みについて語られ、そして最後に戦争の理不尽さが美しい世界を奪っていく過程を描く。
前半は情景描写がただひたすら瑞瑞しい美に溢れていて、主人公すずを取り巻く世界が如何に美しく、優しい時間であることを見せる。戦争が始まり、食糧難になっていっても、本で読んだ調理法を実践したり、純真に創意工夫で乗り切ろうとするすずの生活には、楽しさがあって、彼女は自分らしく生きようとする。
しかし、昭和19年後半から呉の街は空襲に見舞われ、人々とすずの生活を変えていく。それでもあくまで生来の明るさと純粋さを失わず生きていくすずを、周りの人々は温かく見守るが、戦況が激しくなり、物語の後半、すずは絶望的な喪失を味わうことになる…。
主人公すずはのんびり屋で「抜けている」と周りから言われて育つけれど、その生来の純粋さを通して見た彼女の世界は、本当に優しく温かさに満ちていて、過酷な現実があっても、いつも彼女の世界は美しい輝きに溢れている。そして、やがて広島を襲う悲劇を知っている鑑賞者は、その美しさに胸が締め付けられるのだ。
「この世界の片隅に」は、面白い作品に出会った感動とはちょっと違って、見終えた時、素敵な人と友人になれたような喜びがある。すずさんという主人公に出会って、海の波がうさぎに見えること、すみれの花がお味噌汁になること…世界が瑞瑞しい美しさに溢れている事を、すずさんに教えてもらった気分…。
活気のある広島の町があって、豊穣な海があって、呉の軍港があって、街の灯りと人々がいて、その中ですずさんという一人の女の子が生きていたということ。一人の普通の女の子が、戦時中という状況で普通に生きていこうとしたこと。当たり前のすずさんの毎日がある奇跡が美しいのだと。
私も泣いてしまったクチなのだけれど、それは戦争の悲惨さに泣いたんじゃなくて、それは、すずさんの世界が瑞瑞しくてきらきら輝いていたから。世界の優しい美しさに、涙を溢したのだ。
私は時々、当たり前に生きていることが当たり前じゃないことを忘れそうになる。だからたぶん、やっぱりまた観に行くだろう。当たり前に生きていることが奇跡であることを思い知るために。
主人公役の能年ちゃん(のん)が好きなので、半分位彼女目当てで行ったんだけど、彼女の演技が神憑り的に素晴らしく、おっとりとした主人公すずの純粋さは、彼女でなければ演じられなかったと思うくらいハマり役だった…。本当に、こんな美しい世界を見せてくれてありがとう…って言いたい映画だった。
追記。素晴らしかったので、映画を観た直後、原作の漫画三巻も読みました。原作でのすずさんの苦悩はアニメより深く…特に映画では省かれてしまった、すずさんの分身とも言えるりんさんのエピソードや、終戦直後の彼女の言葉は、この映画を観て感動した人は、是非とも読むべきものだと感じました。尺の関係で映画では省かれてしまった原作の箇所は、それほど重要なものでした。もし映画でこの作品に惹かれた方が居れば、原作で描かれているりんさんの境遇と、すずさんの苦悩を知ってほしいと思うので、原作漫画をお薦めします。
日々の生活の向こう側にある戦争が迫ってきて、怖かった…
「となりのトトロ」以来、二度目のキネマ旬報の日本映画の1位になったアニメだ。遅ればせながら、ようやく映画館で観た。戦争物のアニメというと、私はどうしても「火垂るの墓」を思い出してしまうのだが、この映画は、描かれている期間も長いし、真正面から戦争の悲劇を描いている訳ではない。その前に、日常生活が横たわっているのだ。すずは、毎日の生活をより楽しめるようにしようと努力していた。物資が乏しい中でも、いろいろ工夫して過ごしていた。それでも、戦争は容赦なく忍び寄ってくる。呉市が軍港ということもあると思うが、空爆も激しくなって行く。生活もどんどん苦しいものにならざるを得なくなる。いくらがんばっても、もう無理なくらいにだ。終盤のすずの叫びが、私の胸に突き刺さった。それまでずっと、その生活を受入れていたように見えた彼女が、とうとうその本当の心情を露わにしたのだ。「火垂るの墓」は、条件反射的に涙が止まらないアニメだったが、「この世界の片隅に」は、その叫びが私の心に深く残る映画となった。
すばらしい
原作に感動して、観賞。
映画になるとどうなのかなーと思ったけど、世界観そのまんまで驚いた!
むしろ、音楽とゆるふわアニメーションが世界観を120%表現してくれてる感じ。
すず、いう愛すべき女の子を通して語られる、戦争の時代の、日常の話。
昔の広島の、日常の話。
序盤~中盤のあたりは自分の祖母から聞く戦時中の話と、なんだか雰囲気が似ているなぁと思った。
戦時中にも普通の生活があり、笑いもある。
アニメーションは、ジブリのかぐやひめの物語や、ライアンラーキンのそれに似ていて、自由で繊細で美しかった。
のんちゃんの声優が素晴らしくて、すずののんきさ、さみしさ、つらさ、怒り、など全ての感情がびんびんに伝わってきて、心が震えた。
あまりにも素晴らし過ぎて・・・
あまりにも評判が良いので観に行きました。
でも大体が、期待し過ぎて肩透かしをくった!
、というのがオチなのですが・・・
コレは違いました!
あまりにも素晴らし過ぎて、
もう、言葉では言い表せません!
間違いなく今後語り継がれていくであろう名作!
この作品を観て、万が一「何も感じなかった」という人は、
きっと人間として一番大事な「何か」が
欠落しているのだと思います。
特にあの事故の後の、
「良かった・・・?何が良かったのか、私には全く分かりませんでした」
というモノローグの件は、胸が締め付けられる思いでした。
ああ、もうこのレビューを書いてるだけで、思い出してしまい涙が・・・
そしてあの観ていてホッコリする優しいアニメーション。
動き、絵柄、とにかく観ていて優しい。
声優陣も素晴らしく、特に主人公の「のん」は秀逸!
彼女以外は考えられない!くらいハマっていました。
音楽も素晴らしく、全てが素晴らしいです!
そしてあの「ユーモア」と「悲しみ」のバランス!
ああ、もうこの素晴らしさを伝えきれない自分がもどかしい!
上映中、ずっと自然に涙を流している自分がいました。
本当に自然に涙が溢れ出して止まらないのです!
観終わった後、瞼が腫れてました(苦笑)
とにかくもう、この映画を製作してくれて「ありがとう!」
この映画を、もっともっと多くの方が観てくれますように・・・
すごく面白かった
原作を見ないで映画から入りました。
その後に原作本も買わせていただいたのですが
漫画を見ないと理解できないシーンもありました。
それを踏まえた上で作品を思い返すと
かなり分かりやすく作られていて
作品の素晴らしさを改めて実感。
また平凡な絵柄なのに時折見せる
色気にドキッとさせられました。
最後は主人公のその後が気になる、
とても余韻の残る作品でした。
2016年ベスト映画
日々を、素直で真面目に出来るだけ笑顔で過ごすという日常系の真髄が描かれていて、只々感銘を受けました。
戦後の日本では長らく、反戦とはかくあるべき!というような強烈な教育を実施してきたように思います。その強烈さに、多くの方が、戦中を生き抜いてくれた身内への思いや戦争という歴史への認識を、他言できず心の内に秘めていたのではないでしょうか。
というのも、私自身、戦争は良くないことと思いながらも、戦死した祖父兄弟たちを悼む気持ちが上手く昇華できないまま、今まで時を過ごしてきたからです。しかし、この映画を見て、そのような気持ちに上手く折り合いがつきました。
私には、森羅万象に是非があるとする日本ならではの心情に、従来の反戦教育は不向きであるように思います。ともすれば、この映画に感銘を受けた方は、従来の反戦の有り様に無意識の中で疑問を感じていた方なのかもしれませんね。この映画のテーマが多くの方の心に響いた理由はそんなところにあるような気がします。
最後になりますが、能年玲奈さんのような才能が埋もれることなく活躍され続けることを祈っています。
終始泣いてた
見知らぬ家に嫁に行くことも空襲で片手を失うことも今の僕にしてみればこの映画に登場する出来事は全部とても驚くようなことばかりなのに、それをあたたかい映像とすずの声が包み込んでくれる。「ぼーっとしとるまま死んでいきたかった」と叫ぶすずの声にはっとさせられた。
のん、すずの声にぴったりだと思う。ハマりすぎて、白波がうさぎに見えるあたりからなぜかずっと涙をこらえ続けてた。
見てよかったなあ
評判につられて、遅ればせながら見に行きました。
一言で言えば、見る価値のある良い映画です。
主人公すずちゃんの子供時代からの半生が淡々と、細やかな情景描写とともに描かれていきます。
物語には強い主張はありません。でも、見る人それぞれが、いろんなことを感じるのではないでしょうか。そういうことを原作者さんは望んでいるようにも思えます。
私もクラウドファンディングに参加したかったなと思いました。
教材的な良い映画・・・なのか?
良い映画でした。
第二次世界大戦ものも好きでよく観ますし、舞台となる広島や呉も個人的にゆかりがある場所なので入りやすかったです。
強いて言うのであれば2点ほど
①戦艦の絵が、なんかジブリに出てきそうなデフォルメされている感じでカッコ良くは見えなかった。
②主人公の女の子が個性的すぎるように見えて、イマイチ感情移入できなかった。
とはいえ、良い映画ということには変わりはないですし、子供にも見てほしい映画の一つですね。
漫画を後から読みました。
映画のストーリーが保管されスッキリ。
去年見ていたらゴジラも、君の名はも越えていたかもしれない。
テレビではなく映画館の大音量で聴くべしと言うリアルなSEでした。涙と笑いと戦争に向き合う人の気持ちが伝わる素晴らしい作品です。
子供には怖いシーンもあるけどグロテスクではないです。
女性史ですが
戦争テーマで女性が主人公の場合に、高確率で男性が悪みたいに描かれることが多くて男性としてはそこがネックになるのですが、この作品にはそれがないです。むしろ主人公視点でそれでいいのか(笑)とツッコミたくなるように作られていて、それはあくまで当時の生活を徹底させた賜物でしょうね。本当は影で泣いていたんでしょうけど、それが女性の強さなんだなと暗示していたように感じました。
誰が悪いみたいな風に描かずに物語を作り上げたのは、誰もが共感できるように尽力したこの作品の製作者達の努力の証でしょう。
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