「評判ほどではない。」この世界の片隅に シバの女王さんの映画レビュー(感想・評価)
評判ほどではない。
戦前、戦中、戦後の暮らしが良く描かれていて、映画の画面の中に引き込まれた。この点は高く評価したい。
しかし、戦中での暮らしの中で、主人公が、戦争や、人の死に向き合う姿勢が「平和ボケ主義」的で、違和感を感じた。日本でしか通用しないと思った。この映画は、海外では閑古鳥だろう。
人の死のシーンがあるが、張り詰めた様な緊張感がない事が気になった。私が若い頃、目の前で友人が高所から滑落し、大けがをし、人里離れていたために、救助が間に合わず、目の前で死んで行くのを見た。20年以上過ぎた今でも、鮮明に覚えていて、忘れる事ができない。深い慟哭と、何もできなかった自分への怒り、、様々な感情は、今も忘れる事はできない。
時代は違うが、戦争中、人が死ぬ度に、同様の事があったはずだ。
この映画の中の戦争は、人が命を掛けているのに、緊張感が希薄で戦中暮らしごっこのファンタジーにしか見えなかった。
映画の中で、主人公が手を引いていた子供が死に、自分も右手を失うシーンがある。人の命が掛かった出来事なのに、どこか軽すぎる気がした。悲しみに、現実感がなく、全く涙も出なかった。
子供が爆死するシーンがあるが、その部分は全く描かれず、スリガラスの向こうを見ているように思えた。戦前、戦中、戦後の暮らしを現実的に描くなら、街の爆撃での人の死の具体的描写を加えて欲しかった。但し、街の人の死のシーンを、リアルに入れたら、この映画は作品として成立しないのかもしれない。。
後半の一部のシーンは、作画やストーリー展開の粗雑さを感じた。もし可能なら、予算の制約で取りやめたシーンを加え、監督の思う完成版を見せて欲しいと思った。
また、戦後の暮らしを取り扱った続編が作られれば良いなと思った。