「日々の生活の向こう側にある戦争が迫ってきて、怖かった…」この世界の片隅に 瑞さんの映画レビュー(感想・評価)
日々の生活の向こう側にある戦争が迫ってきて、怖かった…
「となりのトトロ」以来、二度目のキネマ旬報の日本映画の1位になったアニメだ。遅ればせながら、ようやく映画館で観た。戦争物のアニメというと、私はどうしても「火垂るの墓」を思い出してしまうのだが、この映画は、描かれている期間も長いし、真正面から戦争の悲劇を描いている訳ではない。その前に、日常生活が横たわっているのだ。すずは、毎日の生活をより楽しめるようにしようと努力していた。物資が乏しい中でも、いろいろ工夫して過ごしていた。それでも、戦争は容赦なく忍び寄ってくる。呉市が軍港ということもあると思うが、空爆も激しくなって行く。生活もどんどん苦しいものにならざるを得なくなる。いくらがんばっても、もう無理なくらいにだ。終盤のすずの叫びが、私の胸に突き刺さった。それまでずっと、その生活を受入れていたように見えた彼女が、とうとうその本当の心情を露わにしたのだ。「火垂るの墓」は、条件反射的に涙が止まらないアニメだったが、「この世界の片隅に」は、その叫びが私の心に深く残る映画となった。
コメントする