劇場公開日 2016年11月12日

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「じわり感動!学校教材になり得る映画」この世界の片隅に yshigeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5じわり感動!学校教材になり得る映画

2017年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

随分と話題になっているから、きっと号泣させてくれるだろうと期待しつつ、一方であの日本昔話しのようなほっこりした画風で果たして感情移入出来るのだろうかと不安もあった。しかし、そんな期待や不安はいずれも裏切られた。
戦争の酷さや恐怖を煽ったり、お涙頂戴の演出が多用されている訳でもなく、ごく普通の呉の軍港の片隅で生きる人々の日常が淡々とリアルに描かれていた。ただその日常が戦時下という辛く厳しい時代の中にあったというだけだ。人々は、些細なことで喜び、笑い、幸せを感じ、辛くとも努力し、工夫し、耐え、それぞれが穏やかな暮らしを求めていた。それは、時代背景が違うだけで、現代でも普遍的な欲求として皆が求めているものだった。戦火が激しくなるのに連れ、その日常に次々と悲劇が舞い込んでくるが、それでもみんな普通に生きていく。目の前の現実をしっかりと受け止め、一生懸命ではなく、あえて普通に生きていくことの大切さを感じた。
反戦や悲劇を謳ってただ泣かせるだけの映画ではない。観終わってからもしばらく感動を噛み締めていたい余韻を残す映画だった。
また、戦時中の昭和という時代のリアリズムを伝える学校教材にもなり得る映画として、きっと今後多くの人達に観られてくことになるでしょう。

yshige