「淡く 儚く たくましく。」この世界の片隅に 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
淡く 儚く たくましく。
戦争がすぐそばにあった土地と、時代に生きたすず。「黒い雨」「はだしのゲン」「火垂るの墓」・・・、戦争や原爆、市井の子供や若者を扱ったものは数あれど、この漫画のもつエネルギーは、それらにも負けない力強さがある。そのくせ、水彩画をベースにした物語のトーンは淡く、思い通りにいかないはがゆさは儚く、主人公然としたキャラではないくせにたくましい。当時の日本人の価値観や生活様式の描写も丁寧だった。「不発弾の時」のパチパチや、「右手の状態」を知ったすずの脳裏で反響した声や、病伏の妹の腕のアザだけで見せる原爆の末恐ろしさなど、表現が上手い。(ただ最後まで、のんの声には馴染めなかったが)
この映画に魅せられた人には、是非とも、続編ともいえる『夕凪の街 桜の国』を一読されることをおススメしたい。登場人物は全く別だが、戦後の広島に生きた一般の人々の静かな憂いに、胸を焦がされることでしょう。
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