「エンタメフランス映画」エール! だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメフランス映画
家族だからと、血縁を免罪符に連帯を強いる父と母に納得がいかないものを感じながら観ました。苦手な価値観なものですから。
ポーラに依存していた一家の生活は致し方ないけれども、他のことがしたいと言ったらさせてあげなさいよ、と思いました。
って、オチではちゃんと巣立たせてるんだからいいんですけどね。
素晴らしいと思ったのは、学校の発表会でのシーンです。
両親と弟の世界を表現していました。
ろう者の世界を垣間見ることができて、新鮮な感動と、この世界にいる疎外感に想像がおよび、両親と弟のハンデの手触りが少しわかったように思いました。
振動は聞こえるのですね。無音ではなく常に雑音だけの世界なのですね。
表現したのは映画を作った人なのだから、本当のろう者の世界である確証はないですが、精一杯の取材と想像力で表現したのはのだろうと信じています。
わたしはきこえますから、分からないのです。聞こえないとはどういうものか。
そのことに近づく機会が思いがけず得られたことに感激しました。
下ネタまみれの日常は、楽しく思いました。病院で娘に通訳させる内容が、セックス時に男性器に軟膏を塗ったか?とか、3週間性交渉禁止、いやいや長くて無理!といった内容。可哀想すぎます。笑いましたが。
で、ポーラは高校生で結構体格が良いのに初潮がまだという、驚きの設定でした。ありえへんくね?と思いましたがまぁ良しとしましょう。その初潮は気になる彼と抱き合いながら歌っていたら急に来た!きゃー女性ホルモンが一気に分泌したのね、これは当事者の女の子には可哀想だけど面白かったです。
弟のラテックスアレルギーも笑えました。これからはラテックスフリーのコンドームをちゃんと用意しないとね。
ガブリエルがそんなに歌がうまく思えなかったのがなんだかなーです。
ろう者の両親と弟の生活を支えることを義務と思い込み(そらあんだけ両親にせめられたらそうなる、本当にこのあたりは親の身勝手さにイライラしました)、音楽学校の受験を諦めるローラですが、学校の発表会での喝采を目にし、父はポーラの望みを叶えるべきと思ったのでしょう。
発表会後の夜の庭でポーラの首元に手を当てて肌の振動で音楽を懸命に「聴こう」とする父に泣かされました。
その後はべたな展開ですが、父が強引に受験会場に連れて行き無事試験を受けます。
で、ポーラは手話をつけて歌います。家族に意味がわかるようにという配慮と、自分の思いを代弁しているかのような歌詞なので、旅立たせてくれという意思表示のようでもあり、良かったです。
イライラするところもあるし、雑なストーリー運びもキャラ配置も気にはなりますが、本筋はグッとくるものがあり、よい映画だと思いました。
フランス映画といえば小難しげで消化不良なところで急に終わるから苦手、という方にもお勧めできますね。
小難しげなフランス映画も好きですが、わかりやすいこういう映画も嫌いじゃないです。
ヨーロッパの映画では、中年夫婦の性交渉があるべきものとして描かれるのが素敵だなぁと思います。