「七人のサムライネズミ」GAMBA ガンバと仲間たち 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
七人のサムライネズミ
ずいぶん昔……小学校低学年の頃だったろうか、
再放送か何かでこの『ガンバ』のアニメ版を見ていた記憶があるのだけれど、
可愛いネズミの絵柄やホンワカした主題歌に反してやたらめったら雰囲気が重く、
子どもながらにあまり好きでは無かった記憶がある。とはいえ
本作は記憶にある『ガンバ』とはキャラクターデザインも全く違うし、
日本CG技術界の雄・白組が制作を手掛けたアドベンチャー映画という事もあり、
どれ鑑賞してみようかぃとなった次第。
ストーリーは殆ど忘れかけていたけど……これってネズミ版『七人の侍』だったのね。
正義感と勇気はいっちょ前の主人公ガンバ、大食いで能天気な相棒マンプク、
荒くれネズミの親分ヨイショ、沈着冷静な参謀役ガクシャ、
ムードメーカーのボーボ、皮肉屋のイカサマ、そして小っちゃなチュータ。
個性豊かな彼らが、とある島のネズミ達を恐怖に陥れる強大な白イタチ・
ノロイの軍団に立ち向かうという物語。
90分間という割りと短い上映時間の中に、主人公たちの出会いから
島での冒険そしてノロイ軍団との総力戦までをギュウッと凝縮。
記憶とは違って重苦しさはそんなになく、シリアスな部分もあるが
明るく楽しいアドベンチャーに仕上がっていた。
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とはいえやはり、短すぎる上映時間がネック。展開がせわしなく、
アドベンチャーアクション的な見せ場やキャラクター描写の薄さには不満が残る。
特にキャラクター描写が淡白になってしまった点はかなり痛い。
会って15分で旧知の仲みたいになるヨイショとガンバとか、ボーボの為に男泣きするイカサマとか、
「盛り上がってるところ悪いんだがいつの間にそんなに仲良くなったん」と感じてしまう場面がちらほら。
そもそも街で満足な生活を送っていたガンバが海に憧れる理由も弱いし、
ヨイショとノロイの因縁についても匂わせるだけでほとんど語られないし、
その他イカサマや島のネズミ達(特にあの悲観的グループとか)の存在感も中途半端だ。
ガンバ以外の主要メンバーも、見た目や性格に個性はあるが、その個性を活かした見せ場となると、多くはない。
仇役ノロイの存在感も今一歩。登場するまでに話の端々にはその名前が出るのだが、
島に到着してからガンバ達がノロイの襲撃を受けるような場面があるわけでもないので、
後半になっていきなり登場して、そのまま退場してしまったという印象が強い。
あの妖しげな力も何だったんだろ。もう少しノロイの背景について描いてほしかった。
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しかしながら海上で繰り広げられるクライマックスは「流石は白組!」と唸るかなりの迫力で、
ガンバ達&○○○の大奮闘そしてノロイさんの大暴れはエキサイティングだ。
分かりやすくて素直な大団円にも、ほっとひと安心して終幕。
先述のようにキャラ描写やドラマ運びに関する不満は多いのだが……
さっくり観られる上映時間も含めて、口やかましい僕のようなヤツよりも
子ども達が観て素直に楽しむにはちょうど良い作品なのかもしれない。
親子連れで観に行くには良い映画かも。
とはいえ、個人的な評価としては、まあまあの3.0判定で。
<2015.10.10鑑賞>