「超人的頭脳のジェットコースターに乗って」探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
超人的頭脳のジェットコースターに乗って
御手洗潔シリーズの初映画化で、主人公を玉木宏が演じている。
ポスターや予告編から、「御手洗は、もう少し変人っぽいイメージがあるんだけれど、こんなイケメンでいいのかしらん」と少々危惧したのですが・・・
数々の難事件を解決してきた脳科学者・御手洗潔(玉木宏)のもとに、女性編集者・小川みゆき(広瀬アリス)がやってくる。
御手洗が解決してきた事件を小説の形で執筆してきた石岡和己(出張中で不在)に代わって、自分が助手を務めるから、新たな事件を解決してほしいというのだ。
提案された事件のなかから御手洗の目に留まったのは「死体島」と見出しの付いた記事。
その島では、ここ数か月の間に何体もの死体が上がっているというものだった・・・
という出だしで、その前に、冒頭、豪雨の滝壺で杭に縛られた夫婦と、首を折られた乳児の死体が発見されるというエピソードが描かれる。
さらには、外国人女性の変死体や、村上水軍、忽那水軍など歴史秘話が登場し、謎(というか事件)は、てんこ盛り。
それを御手洗の超人的推理(というか一発で見抜いている)が次から次へと紐解いていく。
この映画、原作はミステリーだろうが、映画としてはミステリーではない。
通常のミステリーだと、
1.謎(多くは殺人事件)が提示されて、
2.その謎を読者(映画では観客)と共有して、
3.その謎を解いていく過程を愉しみつつ、
4.結果(多くは意外な犯人や意外な殺害方法など)に驚く、
という起承転結がオーソドックス。
で、多くの探偵たちは、次から次へと起こる事件を「後から」追いかけて、犯人に追いつけないのが常である。
(結果として、金田一耕助は、ああぁ~といいながら頭を掻き毟る)
でも、この映画の御手洗は、起こった事件を観察して、瞬時に次の行動に移り、「先回り」をする。
特に顕著なのが、外国人女性の変死体発見の件(くだり)。
すぐさま、犯人一派を待ち受けるという行動に出る。
つまり、事件は提示されるが、提示された時点で謎ではなく、単なる障碍(ハードル)になっている。
障碍を、危機に置き換えれば、冒険活劇であり、御手洗=インディ・ジョーンズとなる。
インディの超人的身体能力に代わって御手洗が持っているものが、超人的頭脳と超人的長広舌である。
なので、事件の全容が御手洗の口から説明されたのちに登場するのが、水上活劇となるわけだ。
そういう映画であるから、御手洗のジェットコースター的頭脳の活躍の流れにのって、あれよあれよと展開する物語を愉しみたいものだ。