「設定とタイトルでドキドキしてたら、痛い目にあう。」エクス・マキナ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
設定とタイトルでドキドキしてたら、痛い目にあう。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」、「オデッセイ」、「レヴェナント 蘇えりし者」。
視覚効果ではどれもげっぷが出るほどのものだが、そんな作品群を押しのけ、アカデミー視覚効果賞を獲得。
もちろん、興味としてはその点もあるにはあるが、女型AIという、古今東西いろんな形で描かれてきたこの設定にドキドキするのは、おっさんとしては止めようがない。そう、昔から女型AIといえば、エロチックな要素はあるわけで、バカじゃね?と言われても、それはデフォルトと思わないわけにはいかない。
「メトロポリス」「ブレードランナー」「空気人形」(これはまんまだな)、変則系では「her 世界でひとつの彼女」、マンガではちょっとまえにビックコミックスピリッツに連載した「デモクラティア」という作品もあった。
「エクス・マキナ」
なんとなく、タイトルでドキドキするのはおっさんゆえ。そこは勘弁いただきたい。
「世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。」(映画.com作品紹介より)
想像通り、マッドサイエンティストものとして、物語は進む。マッドサイエンティストものという点で、「フランケンシュタイン」等が思い浮かぶが、俗なおっさんとしては、ここはロメロの「死霊のえじき」が頭に浮かんだ。
以下、ネタバレ全開。
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飼い犬に咬まれる。
ただ、他のマッドサイエンティストものと違うのは、咬まれるのは、マッドサイエンティストだけではない、と言う点。
オスカー・アイザック演じる社長のやっていることは、オタクの究極系。金にモノを言わせ、自分だけの世界を作り、秘密のAIの研究を進める。そう、IT長者のこのオタク社長こそ現代のマッドサイエンティスト。
IT長者がイッてしまう映画は他にもあるが、彼の真の目的が分からないだけに、いってみれば、でっかいフィギュア、というか、ダッチ〇〇〇を作りたいだけにも見える。
そしてそのビカンダー演じるAIロボ「エヴァ」をテストするため、呼ばれた男が、グリーソン演じる「童貞」社員。
社長は童貞に筆おろしさせようとするが、「童貞」ゆえ、めんどくさいモラルが邪魔をし、そこを「たがが【ダッチ〇〇〇】に付け込まれる」という、オタクと童貞が震え上がる話。
まあ、テーマ的には、
「オタクと童貞が世界を滅ぼす」
ロメロの「ゾンビ」の現代的解釈ともいえる。
劇中、原爆の父オッペンハイマーの言葉が引用されたように、オタクは「死神」であり、放たれたアレは「希望」ではなく、人類を滅ぼす「怪物」「病原菌」。その白い衣装は「処女性」「純潔」というより、「浮いている違和感」「純粋な異物」の象徴にも見える。
科学者は罪を知ったが、オタクと童貞は本作を見て何を思うだろうか。
追記
そうそう、アカデミー視覚効果賞。
アリシア・(美観だ)ビカンダーの美しい姿がその貢献であるのは間違いないだろう。
だが、それをガラス越しにみるグリーソン。「常に」ガラスに阻まれるグリーソン。
まったく童貞には、どこまでも手厳しいな、おい。
追記2
70、80年代風の音楽、B級ホラーテイストのエンディング曲からも、これはゾンビ映画と言って問題ないと思う。
「アイアムアヒーロー」で騒ぐ日本映画だが、本家は遥か先に進んでいる。