二重生活 : 特集
背徳、なんだこのスリルは……他人の秘密を《尾行》でのぞき見
あなたも禁断の行為《理由なき尾行》を体感しませんか?
門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキーという、今最も注目を集める実力派俳優4人をメインキャストに、哲学論文制作のために「尾行」に没頭する女子大学院生の姿を描く「二重生活」が、6月25日から全国公開される。尾行によって目撃される「もうひとつの生活」。禁断の行為の魅力とは、いったい何なのか?
与えられた論文テーマ、それは「見ず知らずの他人の尾行を介した人間観察」
映画.comも体感した「哲学的尾行」のスリル! これは……やめられない!!
門脇麦演じる哲学科に通う女子大学院生を主人公に、見ず知らずの他人を尾行することで人間の本質に迫っていく「哲学的尾行」のスリルを描く「二重生活」。映画ファンの知的好奇心を駆り立てる匂いを感じた我々は、すぐさまマスコミ向け試写会に足を運び、その内容を確かめてきた。
これはまるで、自分たちも一緒に尾行しているかのような感覚だ──それが、本作を鑑賞した映画.comの素直な感想だ。主人公・珠(門脇)は論文制作のため、大学院の担当教授・篠原(リリー・フランキー)から、まったく縁のないひとりの人物を観察対象として追いかけ、生活や行動を記録する「哲学的尾行」を持ちかけられて、それを実践するのだが、その尾行シーンがとにかくリアル。「誰かをのぞき見る」という行為の、見る側とのゾクゾクするような一体感が半端ではなかったのだ。
珠は向かいの一軒家に住む編集者の石坂(長谷川博己)を書店で見かけ、そのまま「哲学的尾行」を開始するが、美しい妻と娘がいる理想的な家庭を持つ石坂の「もうひとつの生活」が浮かび上がってくる。石坂は人目を忍び、謎めいた女と情事を重ねているのだ。石塚の後ろを付きまとい、喫茶店、レストラン、ホテルと、同じ空間に身を置いて彼を観察し続ける珠……。「この男はいったい何をしているんだろう?」という好奇心と、いつ見つかるかもしれないというスリル。珠と同様に我々も、他人の秘密を知る興奮にグイグイと引き込まれるのだ。
「対象者と絶対に接触してはならない」というのが、この尾行のルール。あくまでも論文制作のための尾行であるはずなのに、石坂の生活をのぞき見る行為に魅入られていく珠に、観客である自分も重なっていく。いつ相手に知られるか分からない、でももっと秘密が知りたい、誰も知らない生活を見たいという禁断の快楽──気がつけば、自分も主人公と同じ目線で尾行を楽しんでいることに気づくはずだ。果たして珠は、石坂の生活をどこまで知ることになるのか。そして論文は完成するのか。本作はまさに、人間の心の深層に迫る体感型心理エンターテインメントと言って過言ではない。
門脇麦×長谷川博己×菅田将暉×リリー・フランキー
女子学生、敏腕編集者、デザイナー、大学教授の「表」と「裏」の生活が明かされる!
本作では、女子大学院生、大手出版社の敏腕編集者、ゲーム・グラフィック・デザイナー、大学教授という4人の人物が登場する。善良で誠実な恋人や夫でありながらも、「表」とは違うもうひとつの「裏の生活」=二重生活を送る複雑な人間たちの姿が、門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキーという実力派俳優たちによってリアルに描き出されているのだ。
大学院の担当教授・篠原によって「哲学的尾行」を勧められ、向かいに住む石坂の尾行を開始するが、その真面目な性格から、尾行の魔力にどんどん引き込まれていく。没頭するあまり、恋人・卓也との生活にも徐々に変化が現れていく……。演じる門脇麦は、「愛の渦」でキネマ旬報新人女優賞などを獲得した実力派。今作は彼女の単独初主演作となっている。
珠の尾行の対象となるのが、この石坂。理想的な家庭と一流の仕事を持つ理想的な人物に、実は誰にも明かせない秘密があったということが、徐々に明らかになっていく。意外性のある人間像が注目のポイントだ。演じた長谷川博己は、第2次世界大戦下の庶民を描く「この国の空」から、怪演が話題となった「MOZU」シリーズまで、幅広い演技が持ち味。
珠の同せい相手で、ゲーム作品のグラフィック・デザインを手掛けている卓也もまた、珠には言えない「裏」を抱えるようになる。珠が尾行に没頭していくがあまり、卓也の心には彼女に対する疑念が渦巻いていくのだ。菅田将暉は、「萌え系イラストを描く」オタク系の役柄に初挑戦。その高い演技力は、「共喰い」「ディストラクション・ベイビーズ」等で証明済みだ。
一見、誠実かつ研究熱心な大学教授の篠原もまた、密かに何かを抱えていることが明らかになってくる。珠に「哲学的尾行」を勧める張本人だが、彼の本意がどこにあるのかも気に掛かるところだ。哲学の研究者らしい、どこか浮世離れした印象を持つ篠原役には、「そして父になる」での演技のほか、イラスト、文筆、写真、音楽と多彩な才能を発揮するリリー・フランキーがぴったりハマった。
「この監督の作品に出演したい」4人の実力派の熱望が、本作でついに実現!
監督は、日本放送界の権威ギャラクシー賞ほか、数々の映像賞を受賞してきた岸善幸
本作の監督&脚本を手掛けたのは、13年のNHKドラマ「ラジオ」で、日本放送界の権威である文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門大賞、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞受賞、国際エミー賞テレビ映画部門ノミネートほか数々の栄誉に輝いた岸善幸監督。
同作のほか、「少女たちの日記帳 ヒロシマ 昭和20年4月6日~8月6日」「開拓者たち」など、テレビ界で長年あふれる才能を披露してきた名演出家に、「これまでの作品をいくつか拝見していて、いつかぜひご一緒したいと思っていました」(門脇)、「作家としてとても懐の深い方。役者の意見にもしっかりと耳を傾けてくださいました。今作で新しい現場、新しいモノ作りの楽しみを味わわせていただきました」(長谷川)、「新しい可能性がたくさんあると感じました。いい意味でどういう映画になるか想像できない部分があったので、そこが楽しみでした」(菅田)、「密度がすごくて、すべてに岸監督の執念が込められている。恋愛の映画でもあり、サスペンスでもあり、人間ドラマでもあると思います」(リリー)と4人の実力派も熱視線。気鋭の映像作家の劇場作品で、俳優たちの熱望が実現した形だ。
直木賞作家・小池真理子の同名小説を原作に、岸監督が大胆に脚色を果たした独自の世界観。日本の映像界を引っ張っていく才能に要注目だ。