「ラクダと愛犬と砂漠を横断すると決めた女性の実行力」奇跡の2000マイル 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ラクダと愛犬と砂漠を横断すると決めた女性の実行力
誰にも理解されないことでも当人にとっては大きな意味がある、というのはよくあることだが、これほどパーソナルでありながらスケールの大きいケースも珍しかろう。というのも、ミア・ワシコウスカ演じる主人公は、なぜかひとりでオーストラリアの砂漠を歩いて横断することを決意し、そのために荷物を運ぶにはラクダがよかろうと考え、まず、ラクダの調教の修行をするところから始めるのだ。
堅実なのか無謀なのか、近道なのか遠回りなのか、外野からだとさっぱり判断がつかないのだが、この若い娘が不退転の決意と強い意志を持って、この冒険に挑もうとしていることは伝わってくる。
なんなら人間といるよりラクダと砂漠にいるほうが落ち着く、というメンタリティは理解できるような気もするが、本人にしたらわかったつもりになられてたまるかという気持ちもあるのではないか。そんな世の中の特殊ケースを、大自然の過酷さを踏まえつつも、非常に美しく切り取っている。
オーストラリアの砂漠をさまよう名作映画にニコラス・ローグ監督『美しき冒険旅行』があるが、本作は『美しき冒険旅行』へのオマージュシーンもあって、実話ベースとはいえ幻を見ているような不思議な感覚がある。ミア・ワシコウスカの浮世離れしたような持ち味と不器用そうな雰囲気も、この役にハマっていて素晴らしい。
コメントする