ブリッジ・オブ・スパイのレビュー・感想・評価
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アメリカという国
国威発揚に全く乗り、アメリカは犯罪者の人権ですら守ろうとする人がいるのだな、と純粋に感激する。もちろん、そのうらにはおそらくビジネスとしての計算は当然あるのだろうけど、お互いが何らかの形で利することがなければ、偽善的で、逆に気持ちが悪い。いいことをしているという満足感であってもよいわけだし。
とにかく冷戦時代のヒリヒリする交渉は、面白い。双方に規律と統率があって、個人の劣等感とか、疎外感のような感情でないところで、政治がなされるところに、ドラマを感じる。ほんとのところは当事者にとってはどうだったのか、一度聞いてみたいけど。
いかにも能天気なよきアメリカでも裏ではどうかわからない、という風情の弁護士、国とともに運命をともにする覚悟のできた、もしくはともにするしかないロシア人、二人の演技も良かった。
人からどう見られようと、自分の信じる道を行く。言うは易し行うは難し。響くセリフでした。
後半嗚咽
重厚です
渋い
職務に忠実。
1950年代半ば、アメリカとソ連の冷戦時代。
アメリカで、ソ連のスパイが捕捉される。
そのスパイを弁護することになった弁護士の話である。
スパイなのだから死刑にすべし、という論は極端にしても、スパイ許すまじという風潮はわからないでもない。だからといって弁護士を攻撃する単細胞ぶりもアメリカということか。
この裁判が終わり、ソ連に捕まったアメリカの諜報員のために、このスパイを生かすべきという弁護士の進言は功を奏すことになる。
後半は、この交換交渉の様子が描かれる。
スティーブン・スピルバーグ監督の演出は、今回、かなり手堅い。
飛行機の撃墜シーンこそ彼らしい演出だが、総じてかっちりした映像になっている。
交渉はうまく行くことはわかっているし、トム・ハンクスはいつも堂々としていて、スリルを感じることはなかった。そういうところは狙っていないのであろう。
ドノヴァンはいつも自分の職務に忠実であった。そのことこそ尊い、そんな作品であった。
久しぶりの良作でした
スピルバーグだから
電車の中で
張りぼて
ラストマン・スタンディング 【追記】
明けましてずいぶん経ちましたがおめでとうございます。
2016年も宜しくお願いします。
年明け最初の鑑賞作品は
S・スピルバーグ監督の最新作。
米ソ核開発競争による緊張が高まっていた1957年。
米国に捕らえられたソ連人スパイと、
ソ連に捕らえられた米国人スパイ。
そのスパイ同士の交換交渉という危険な役を
政府から任されたのは、民間のいち弁護士
であるジム・ドノヴァンという男だった――
という、実話に基づくサスペンス作品。
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前半はソ連人スパイ・アベルの弁護という
不利な裁判に挑み続けるドノヴァンの姿と、
米軍偵察機パイロットがソ連側に拘束される
までの経緯が描かれる。
このパートは物語の背景やドノヴァンという人物を
紹介するパートという感が強く、やや大人しめだ。
だが後半、舞台が東ベルリンへ移ってから
映画はギアチェンジ。緊張感がグンと増し、
息詰まるようなサスペンスが展開される。
当時は、米ソ冷戦のシンボルともいえる
ベルリンの壁建設の真っ最中。WWⅡの
爪痕が色濃く残る東ドイツの治安は悪く、
おまけにドノヴァンにとっては右も左も
分からない異国の地なのに、政府は
道案内も通訳も援助してくれない
(あくまで民間人の交換という“建前”で
交渉する必要があるため)。
東ベルリンで拘束された別の米国人の救出も
絡み、事態はさらに複雑化。そんな状況で、
ドノヴァンは各国の思惑が絡む高度な交渉に
挑まなければならなくなる。
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なかなか本心を見せない相手との
駆け引きの数々が不気味でスリリングだ。
アベルは米国に情報を売ったのでは?と疑うソ連、
大国アメリカとの交渉で独立国である事を世界に示したい東ドイツ。
民間人の救出は二の次、あくまでスパイ交換だけを成功させたい米国。
それら全てを満たして全員を救出しようとするドノヴァンの、
“駆け引き”と呼ぶにはあまりに綱渡りな奮闘ぶりがスゴい。
英語以外の言語をあえて訳さない演出もグッドだ。
相手が何を喋っているか、何をする気なのか、
言葉の端々や身振り手振りで推測するしかない怖さ。
きっとドノヴァンも同じような恐怖を感じていたのだろう。
サスペンス要素もさることながら、
淀みない語り口や仄かなユーモアも
流石スピルバーグといったところで、
142分の長尺も少しも苦にならなかった。
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近年の『戦火の馬』『リンカーン』をはじめ、
スピルバーグ監督は兼ねてから、国や人種の違いを
越えて人と人とを結び付けるものを描いてきたと思う。
敵国スパイに対しても弁護を全うしようとするドノヴァン。
それは彼が四角四面な人間だからという訳ではない。
ドノヴァンにとって憲法とは、
あらゆる人種・思想・異文化をひとつに
結び付けるアメリカ合衆国そのものであり、
例え相手が何者だろうとそれを蔑(ないがし)ろ
にしない事こそが彼の愛国心であり正義なのである。
国を隔てる橋の上で、
アベルの身を案じて最後まで立っていたドノヴァン。
アベルは、危険を顧みずに自分を護り続ける
ドノヴァンを不屈の男(standing man)と呼んだ。
何者も正当に裁かれるべきであるという固い信念、
敵国とはいえ祖国を決して裏切らなかった男への、
そして芸術を愛する1人の男への敬意と友情。
真っ当な人間同士として相手に接する心。
敵国同士をつなぐ架け橋は、彼自身の心根にこそあった。
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以上。
キャストの平均年齢はずいぶん高いけど(笑)、良作!
新年早々幸先良し。大満足の4.0判定で。
<2016.01.09鑑賞>
余談:
マーク・ライアンスについて触れるのを
忘れていたので追記。ソ連人スパイ・
アベルを演じた彼の演技は絶品だった。
ほとんど表情を動かさず、感情的なセリフも
吐かないのに、眼鏡を外して「気をつけろよ」
と繰り返すだけで、どうしてこんなに
彼の熱い心が伝わるのか? 見事でした。
地味だが、頼りになるヒーロー
事実に基づく作品。U-2撃墜事件でソ連に抑留されたフランシス・ゲイリー・パワーズの釈放にまつわる話を描いている。
U-2撃墜事件は、ちょうどベルリンの壁が構築されて時期にも近く、冷戦が最高潮の頃。それを理解しないと、アメリカでソ連のスパイを弁護するということの意味、そして、東ドイツに単身で、且つ、公的な身分を持たずに乗り込むということの危険さを理解できないかもしれません。って言うか、ジェームズも、ソ連のカウンターパートか、東ドイツのカウンターパートに、送迎くらいお願いしても良いのではないかと思うんですが、それすら憚られるような状況だったのでしょうか?如何に敵国同士とはいえ、いまの誰が敵で誰が味方かわからないようなテロとの戦争とは異なり、今回の物語のようにスパイ交換が成立するような関係であったのですから、多少の便宜の提供は不可能では無かったのではないかと思うんですけどね・・・。
公的な身分は無く、ある意味スパイ大作戦の「君もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで」的条件を味方のCIAに突きつけられながらも、使命のために力を注ぐ地味なヒーローを、トム・ハンクスが非常に見事に演じています。あれは、トム・ハンクスじゃないとダメだよね、やっぱり。
フレデリック・プライヤー開放のシーンが中々興味深いですね。ボーゲルの車のまま、アメリカ軍占領地域まで入ってきているように見えるんですけどね。あれはアリなんでしょうか?
142分と、比較的長い作品ですが、非常に面白かったです。
冷戦時の緊迫感を目の当たりにして
おいらの学生時代
世界は冷戦システムの真っ只中でした。
東側の国々には
漠然と暗くて不気味な
得体の知れない恐怖がありました。
ただ、日本という
戦争放棄のシェルターに生まれたお陰で
あくまで遠目の花見でしたが…
ベルリンの壁の緊迫感が半端ないです
まさにこれは戦場です
こんな時代のアメリカで
ソ連の諜報員の弁護を引き受け
職務を全うしようとするドノヴァンの心意気に
ひたすら頭が下がる思いです。
マーク・ライランスの
愛国心だの不安だの悲哀だのが
ない交ぜになったような演技に
目を奪われてしまいました。
おいら的には助演男優賞は
ポール・ダノ<スタローン<ライランス
…な気がしますが如何か?
人質の行く末までにも心を砕くドノヴァンに
暖かい感動を覚えるのでした…
父親と仕事
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