「話が長すぎる」ブリッジ・オブ・スパイ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
話が長すぎる
感情移入できるキャラクターを演じさせたら、トム・ハンクスにかなう人はいないんじゃないか。
一見、理知的にふるまう弁護士という職業柄、演技における感情の振幅は感じ取りにくいものになりがちだろうと思える。それでも、彼がおかれた社会的疎外感は想像を絶するものであることは、画面を通じて十分に伝わってくる。
電車のシーンが象徴的に使われているのがよかった。アメリカではまるで社会の敵として乗客に白い目を向けられ、肩身の狭い思いをしながら乗っていた電車で、自身の貢献を伝え知られるようになると、尊敬のまなざしを向けられる。そして、見下ろした風景に、何の気なしにフェンスを乗り越える人々。これが、平和的光景として象徴的に描かれている。ベルリンでは問答無用で銃殺されるのだ。
それにしても、気の毒な学生が、東ドイツに拘束され、人質の交換要員にジョーカー的役割で、交渉を攪乱させられることは、全カットでよかったんじゃないかと思う。あくまでも、ソビエトとアメリカの2国間での交渉で、その舞台にベルリンが選ばれた図式で、もっとシンプルに話が進んだ気がする。これが、コーエン兄弟の気質というやつか。どうにも好きになれない。
歴史ものを扱った時のスピルバーグ作品にありがちな、いつものトーンで、思い切って切ったほうがいいエピソードを判断できなくなっているんじゃないかと思う。話もずいぶん長くなったし。