「安定安心のアメリカ映画」ブリッジ・オブ・スパイ SHさんの映画レビュー(感想・評価)
安定安心のアメリカ映画
冷静にアメリカを誇っているスピルバーグ、まさに巨匠という冠がふさわしい、本人はそんな冠嫌がるかもしれないけれど…だからこそ自分はスピルバーグに好感が持てる、といっても謙遜するという前提は自分の勝手な想像でありもしかしたらその真逆かもしれないけれども、まぁそんなことはどうだっていい。
光を巧みにコントロールしきっている見事な映像と、丁寧な衣装・舞台づくり・ストーリーテリングに、文句のつけようもない。
一目で冷戦時代へと引き込まれ、一目で東ベルリンへと誘われる。U2の勇姿に魅了されブランデーやベルリンの壁の演出に笑いと涙が誘われる。
アメリカ側のパイロットの並行した話が取って付けたようで気に入らなかった。そしてまた、ソビエト側の状況が西側的な目線での描かれ方で気に入らなかった。良くないと思ったのそれくらい。
所謂歴史的偉人を扱った話ではあるけれども、トム・ハンクスのさりげない演技とスピルバーグの無理のない演出によって、決して押しつけがましくなく、アメリカ人に意外でも非常に好意的にアメリカの偉人を受け止めることができる内容だった。
それにしても、まさかドノヴァンの嘘を家族の誰もが知らなかったなんて、あまりにわざとらしい演出何だろうけど、そのわざとらしさというか分かりやすさが不思議と感動を駆り立てる。まさにエンタメ最前線を走り続けてきた巨匠のなせる技といえるのかもしれない。
各場面場面における画面の質感の違いを堪能するだけでも意義ある映画。脚本によるきめ細やかな演出にも魅了させられる。
とにかくも、揺るぎない面白さがそこにはある。