劇場公開日 2017年2月24日

「かなわなかった人生の物語でもある」ラ・ラ・ランド モーパッサンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5かなわなかった人生の物語でもある

2020年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

最近のハリウッド映画は、金とCGで物珍しさに走る印象があり、好きになれなかった。ましてボヘミアンの成功物語を描くミュージカルと聞けば、「またですか。はいはい、そりゃ売れるでしょうよ」と思っていた。賞を取って話題になったし、世の中について行くために、一応見ておくかと思った。
 冒頭の一曲で打ちのめされた。渋滞する高速道路というおよそミュージカルらしからぬ舞台を、カメラが縦横無尽に動き回る。しかも一曲まるごとワンカットとしか見えない。衛星回転、パン、水平移動を組み合わせるこういうカメラワークはTVドラマ「ER」で知っていたが、「ER」が建物の一角であるのに対し、こちらは高速道路。「ええっ!」「うそ!」の連続。エンディングで、手前のダンサーからカメラが引き、道路全体を対角線でとらえると、手前から遙か遠くまで道路上に並ぶおびただしい数のダンサーが一斉に決めポーズ。なんというスケールだ。「マンマ・ミーア!」の桟橋シーンを越える歴史的名シーンと言ってよい。
 音楽と踊りのレベルだけではない。メッセージ性も高い。ミア(エマ・ストーン)が台本のないオーディションを受ける場面。努力が報われぬ傷心、不安、迷い。本作が応援するのは、いつまでも芽が出ないミュージシャン志願、役者志願ばかりではない。「もっと勉強ができたら」と書き残して、先週電車に飛び込んだ高校生を思い出し、涙が出た。サクセス・ストーリーでありながら、かなわなかった人生の物語でもある。
 ハリウッド・ミュージカルの底力を見た。

モーパッサン