「音楽が夢を見せてくれる」ラ・ラ・ランド fall0さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽が夢を見せてくれる
ミュージカルパートとか、夢を追う人間の熱い気持ちとか、ぐっとくる要素に溢れてるのに、恋愛パートが在り来たりでメソメソしていて好きになれなかった…。序盤は最高なのに中盤でテンションが下がり、良かったはずの終盤もどうでもよくなっちゃってた。
オープニングの、渋滞の車から飛び出して愉快に歌い踊るシーンなんて、スタンディングオベーションしたくなる位素晴らしかった。酔っ払ってるか大麻でもキメてるのかって位ゴキゲンでカラフルなミュージカル。夢の国にようこそって感じで、最高なの。
なのに、だんだんと様子がおかしい。衝動的に惹かれあい、またすぐにすれ違い出すミアとセブ。すぐ別れるカップルの典型だ。カップルの愚かで在り来たりな痴話喧嘩を聞かされ、心が冷める。秀逸なカメラワークも鮮やかなセットもカッコいい音楽も、台無し。メソメソ言い争いをするくらいなら、せめてニーマンとフレッチャーのように罵りあって欲しい。全然違う映画になっちゃうけど。
ミアが「夢を追う人間をバカにすんな」の歌を歌ったシーンは好き。
5年後、そこにはヨリを戻したミアとセブが…とはならず、ミアの「こうだったらよかったのにな」回想が始まる。めちゃめちゃセンチメンタル。ここは秀逸だと思った。虚しい願望を鮮やかで綺麗なミュージカルで描かれて、側頭部を殴られたような気持ちになる。中盤でテンションが下がってなかったら殴られたショックでもっと盛り上がれたと思う。
この二人は出会って正解だったし別れて正解だったんだろうなと思う。喧嘩のシーンで「失敗してる俺に同情していただけ」ってセリフはある意味正しくて、世間に踏みつけられながらも夢を諦めきれない姿にお互い自分の姿を重ねてたんだろうなと思う。いざ夢が叶ってしまったら、四六時中いっしょにいる事は無理で、でもそれは嫌で、もっと安定感のある平凡な相手に落ち着いた。(ミアの夫がどんな人間かは推測だけど、元カレと雰囲気が似てたので、無難でそこそこ裕福な紳士なんだろうなと思う。)
セッションと対比して観ると、夢を軸に、憎しみ合う二人が同じ舞台に立つ展開と、想い合う二人が舞台を分かつのと、両極端だなぁと思った。
足の引っ張り合いの末互いにとんでもなく嫌悪を抱いてようが音楽が素晴らしかったらその瞬間だけは最高で二人は一つになれるし、深く共感し応援し合ったところで、けっきょく他人は他人。
二人の人間が強く心を通わせようがそれは束の間だけど、音楽や演劇は人を夢の中に連れて行ってくれる。
ダークカラーで地獄のようなセッションが終盤はアツい夢で終わり、優しくて煌びやかなララランドが夢から覚めて悲しく微笑み合うので終わるなんて、凄いギャップ。