「ストーリーはありきたりでも期待を裏切らない良作」サウスポー エディさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーはありきたりでも期待を裏切らない良作
大好きなジェイク・ギレンホール主演で、まずはその鍛え上げられた肉体に魅了される。「ナイトクローラー」でげっそり病的に痩せたダークヒーロー的キャラとは180度異なる。
「スポットライト」でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたレイチェル・マクアダムスが、その妻を演じるが、彼女が銃の暴発により亡くなるところから物語が大きく動き出す。
このボクシング映画はひと言で面白いとか表すのが難しい。ギレンホール、マクアダムス、フォレスト・ウィテカーなど名優が名を連ね、主人公の娘役ウーナ・ローレンスがまた凄まじい存在感。本物の親子のようだった。
素晴らしい演技の裏で、素晴らしい脚本。ボクシングを通じて主人公の再生劇と親子の愛の物語を紡ぎ出す、一見ありきたりなストーリー。だけど、そこにはリアルなファイトシーンや監督のアントワン・フークアが徹底して作り出した現場の緊張感など、あらゆる化学反応を起こして人々の記憶に残るような一本の映画ができたかのよう。
衝撃を受けたのはボクシングのラストシーン。だいたいのボクシング映画では「会心の一撃が決まり、ノックアウト勝利!」となるところを、ノックアウトパンチの後にもう一発空振りの左フックを入れたところが印象的だった。リアリティを全身で感じた。
ギレンホールの役作りや演技が素晴らしいのはもちろんのこと、この作品で特に素晴らしいのウィテカーとローレンス。
ウィテカーは無敵の主人公を唯一追い込んだボクサーの元トレーナーで、その男にボクシングを習いに行くんだからそりゃあすげぇ奴なんだろうと思ったんだが、これまた人間臭い。不器用で、お酒を断ってるとか言いながらしれーっと破ってるところとか。愛着の湧くキャラでした。
ローレンスは初めて見た子役でしたが、子供らしさというよりも、亡くなった母親の代わりを必死に演じようとする凛々しさを感じました。「ルーム」に出てた子も良かったですが、また凄い子が出てきたなぁと。
目頭が熱くなる場面が多く、家族や友人など身の回りの人を大切にしたい、そう改めて感じさせられるいい映画でした。また観たい。