「色々と基本的な設定や演出などが雑で、その「雑さ」がツッコミ所に。」イット・フォローズ Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
色々と基本的な設定や演出などが雑で、その「雑さ」がツッコミ所に。
外見は人間だが、この世の者ではない「何か」が自分に向かって一直線に歩いてきて、捕まると殺されるというホラー。まあ一種の「呪い系ホラー」で、不気味な雰囲気は良いんだけど、肝心の「どうしたら助かるのか」と試行錯誤する謎解き要素がほとんど無く、登場人物の言動などにもツッコミ所が多い。
自分に「呪い」を押し付けた相手を辿っても意味が無いので、その辺をもう少し考えて欲しかった。例えば追ってくる霊(?)の姿や来た方向、殺された人たちの共通点などがヒントになっていて、そこから呪いを生み出した「原初」の存在を辿って行くという謎解きがあれば面白かったのにと思う。
恐怖演出も中途半端。そもそも霊なのか何なのかもはっきりせず、そのくせ「視覚的には見えないのに物理的に殴ったりすることは出来る」という中途半端さ(笑)。また、人間を何メートルも吹っ飛ばす力がありながら、木の扉は破れないというのも何だかご都合主義的と言うか、ツッコミ所と言うか…。唯一、扉を開けた友人の後ろから巨人がのっそり現れるシーンがちょっと怖かったくらい。まあ神出鬼没で家の中にも簡単に入って来られたらどうしようもないのは分かるけど、ここはかなり重要な点なんだから、その辺の「設定」はもう少し考えて欲しかった。
そして最大の見せ場であるはずのプールのシーンが意味不明。わざわざ何個も用意した電化製品は何のため?敵を感電させようとしたのだろうけど、効くかどうかも不明なのにその結論に至った理由がよく分からない。そのくせ最後までトラップは使わずじまいで、主人公はプールで溺れてただけ(笑)。ラストも何一つ解決していない終わり方で、解釈は視聴者に丸投げパターン。肉体関係を持った人間の周囲のみの出来事なので、呪いが世界中に伝染していくような恐怖感も薄い。
ホラーとしてまだ色々と工夫や推敲の余地があったはずなのに、面倒なのでやりませんでした、みたいな手抜きを感じるのが難点。雰囲気を楽しめば良いとか言ってる人もいるけど、やはりいくらホラーであっても、最低限のあるべき整合性が無いと楽しむものも楽しめない。整合性の土台に則って作られた演出のための「不条理」と、単に脚本や設定が杜撰なだけの「不合理」は違うと思う。やり様によってはもっと面白怖く出来たはずだけにもったいない。