「数学が苦手でも、ラマルジャンを知らなくても」奇蹟がくれた数式 liskyさんの映画レビュー(感想・評価)
数学が苦手でも、ラマルジャンを知らなくても
天才数学者ラマルジャンが映画になりました。
もともと、「世にも美しい数学入門」という新書で紹介されていたのを読み、興味を持ちました。天才ながら決して常に栄光の中にいた、という訳ではない人なので映画にならないかなと思っていたらなりましたね。
まず、ジェレミー・アイアンズはとっても素晴らしいです。繊細で、知的で。「枯れ専」にはたまらないでしょうね、おそらく。イギリス人なのでイギリス風の古風なスーツ、スリーピース姿がとてもステキです。
数学もあえて深い所までは描写されていないので、数学を知らない方でも話はついていけると思います。
が、その一方で、話の筋の方は、というと、ちょっと物足りなさが残ります。
「なぜラマルジャンがこんなに数学の天才なのか?」というところがなかなか掘り下げきれてません。
「世にも美しい数学入門」では、ラマルジャンはじめとして、インドが天才数学者を輩出している背景に「多神教」「自然への畏怖」があると書かれていました。(日本人が数学に優れているのも同様、とありました)
そのあたり、無神論者のハーディとの対比で描ければもっと話が深まったと思います。
前述の通り数学の細かい理論については出てきません。これは数学の知識が無い方でも観られるように、ということだと思います。しかし、その代わり、数学の理論が描写されないので、ラマルジャンの書いた論文がどれだけすごいのかわかりづらい、ということになってしまっています。
また、ちょうど第一次世界大戦中ということで、そのあたりの描写ももっともっと出来たのではないかと。(ありましたけどね、少しは)
ただ単に「天才数学者が偶然、ケンブリッジの大学教授の目に止まって、奥さんおいてイギリス行って、認められるけど、失意のまま亡くなった」という深掘り出来ないストーリーになってしまったのではないかと。。
非常にもったいない作品です。