「生き延びろ、ユダヤ人であることを忘れずに」ふたつの名前を持つ少年 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
生き延びろ、ユダヤ人であることを忘れずに
キネコ国際映画祭(旧・キンダーフィルム・フェスティバル)にて、吹替ライブシネマで鑑賞しました。上映の場で声優たち(声優科で勉強中の学生たち)が台本片手に吹替えるというもので、その迫力は一入(ひとしお)でした。
戦時下のサバイバル譚であるが、スルリック=ユレクを演じる少年の名演もあって、凄まじい迫力である。
(少年を演じていたのが、双子の兄弟と知ってビックリしたが、そういえば、ところどころで若干顔つきが違うなぁとは思ったのですが)
生き延びるためにキリスト教徒を装っていた少年が、いつしかキリストや聖母マリアに心を傾けていくさまなど、少年の心情の揺らぎも感じられて興味深い。
(手に入れたロザリオを手放そうとするが、もういちど手に取るシーンなどで、それが感じられます)
このような描写があるので、ラストシーンが活きてきます。
すなわち、終戦後、ユダヤ人孤児の救済センターの職員が来て、ふたつの道を示すシーンである。
左は、最後の最後まで少年の面倒をみて助けてくれたポーランド人一家へと続く道。
右は、ユダヤ人孤児救済センターへと続く道(この道は、遠くイスラエルまで続いていることが仄めかされている)。
この左右ふたつの道は父親が遺した言葉「生き延びろ」「ユダヤ人であることを決して忘れるな」のふたつでもある。
揺れる少年の心であるが、少年はユダヤ人であることを選ぶ。
静かであるが、力強い決断でもある。
その後のエピローグが描かれ、ここでビックリした。
年老い、イスラエルで暮らす少年の姿が写し出される。
老人は、あの少年の本物の姿であり、この物語は実話であったのだ。
(チラシの裏などには書いてあったんだけれど、読んでいませんでした)
それにしても、壮絶な生き様だったのですね。
「戦争は残酷、悲惨」は、いわずものがな。