黄金のアデーレ 名画の帰還のレビュー・感想・評価
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絵が欲しいのか金が欲しいのかわからんけど
現在のマリアが法廷闘争を繰り広げながら過去を回想するようにオーストリア在住当時を場面場面で見せていくやり方や、全体的なスリリングさ、ランディとマリアの友情のような絆、親子の絆、祖国についてなどのストーリーの部分、ぐちゃぐちゃになりそうな詰め込み気味のボリュームにもかかわらずスッキリとまとまっていた。
ランディが絵画の返還に熱をあげていく過程が少々弱かったけれど、それほど気になるものでもない。
つまり、ほとんど文句の付けようがないほどに良い作品だったし、面白かったのだが・・・
実話を元に作られているということで、ついつい、表面に見えているストーリーだけではなく、その下に眠っている別の物語について考えてしまうのである。具体的には、ユダヤ人の祖国についてと、アメリカという国についてだ。
他にもレビューに書いている方がいたが、政府の関与とか、そういった意味ではなくアメリカという国が、アメリカの国民性が、オーストリアから絵画を強奪したように見えてしまう。そう感じてしまう。
この物語ではマリアのアメリカ人としての国民性ということになる。彼女の新しい祖国アメリカ。その前の祖国は父親が移住してきたオーストリア。その前は・・・と、最初に書いたユダヤ人の祖国についてに繋がる。
映画の内容とあまりにかけはなれるので細かく書くつもりはないが、要は、スゴい美談のように作られている作品だったけど、目を凝らしてよく見たり、ちょっと考えてみると、ものすごくモヤモヤとした黒いものの存在を感じて複雑な気持ちになるんだよね。
それでも、余計な事を考えなければ面白かったし、余計な事を考えてもある意味面白かったので、やっぱり映画としては良作なんだな。
演技面では、ヘレン・ミレンは安定して良かったし、ランディを演じたライアン・レイノルズも頑張ってた。少なくとも、少年と揶揄されるだけのピュアさや頼りなさげな感じはとても良かったと思うよ。演技じゃなくて単なる素である可能性もあるけどさ。
やられたらやり返せ
オーストリアの裕福な家庭で育ったマリアには、クリムトのモデルになるほど美しい叔母がいた。その叔母アデーレを描いた絵は、戦争により奪われてしまった。戦後何十年も経ってしまったが、その絵を取り戻す過程を描いた作品。
ヘレン・ミレンのシャキッと伸びた背筋、ヒールでカッカッと歩く脚、傲然と上がる顔、すべてがお貴族様! 両親との別れのシーンは、自分も号泣。飛行機に乗る前もドキドキハラハラ。過去と現在のシーンの橋渡しがスムーズで、とても美しかった。
BS松竹東急の放送を録画で鑑賞。
文化財返還運動を先取りしたナチス批判映画の新たなバリエーション
2013年、ミュンヘンの民間アパートの1室からナチスの収奪した絵画1,400点が発見されて、世界的に話題になった。そして、その所有者は誰か、返還すべきかが問題となった。いわゆるグルリット事件である。
本作のクリムト『黄金のアデーレ』返還はこれに先立つこと7年、2006年の実話だが、2015年という映画製作時期を考えると、上記グルリット事件に触発されたのかもしれない。
映画の内容はナチスによるユダヤ人迫害、財産収奪の経緯と、収奪されたクリムトの絵画の相続人がオーストリア政府に対し返還を求めた経緯の2つを交互に描いたものとなっている。
広義のナチス批判映画に含まれるが、最近のトピックを含むという点ではホロコースト否定論を巡る訴訟を扱った『肯定と否定』(2016)に類似している。これら2作品のように、ナチス批判映画もいかに迫害が行われたかを描くことから、近年はバリエーションを増やしていく傾向にあるらしい。
これは頷けることで、ナチス批判映画はもはや水戸黄門と同様、勧善懲悪で一律の紋切り型映画になりがちだからある。本作も、ナチスによる迫害とそれから逃走するシーンは他の映画で何度も見せられた話であり、ほとんど興味を呼ばない。
むしろ興味は、戦時はドイツにあっさり併合され、その後もナチス収奪絵画を国宝のように扱っていたオーストリア政府と、米国帰化ユダヤ人との返還交渉のシーンの方にある。返還を頑なに拒むオーストリアの学者が、何やらナチスのような悪漢として描かれているのは笑えた。
訴訟は所詮、単なる法的手続きなのでさして面白くはない。ただ、最初は返還不可能のところから徐々に盛り返し、最後の仲裁裁判で逆転するところや、その間の所有者の老婦人と弁護士の姿は引き込むものがあった。ウイーンの光景、重厚な建築物等も魅力的だが…それ以外、取り立てて目を引く箇所はない。
本作の公開後、この文化財返還問題は遥かに大きな動きとしてヨーロッパに拡大する。つまり、ナチスの収奪文化財返還から、近代に欧州諸国が植民地から収奪した文化財の返還に広がって、この傾向が現在に至ってますます強まっているのである。
2017年、マクロン仏大統領は植民地の文化財返還を約束、翌2018年にはアフリカ文化遺産返還に関する仏政府の報告書が提出され、以後、イタリア、さらに英国も渋々返還に動き出している。2023年現在ではギリシャ・パルテノン神殿の彫刻の返還が俎上に上っているという。
こうして見ると本作は、ナチスの収奪したユダヤ人の財産返還問題を通じて、欧州諸国による植民地の文化財収奪と返還を射程に入れており、話題性としては現在でも新しいと言えるかもしれない。
見逃してたよ!最高。
ナチスに侵略されて逃げ延びた主人公が。
叔母の肖像画「アデーレ」を、オーストリア政府に返還を求める。
「オーストリアのモナリザ」と称される絵画の行方は。
最後まで見てわかりました、実話なんですね。
前半は主人公の、若い時の回想シーンが挿入されてて。
後半は返還裁判の話。話が上手に織り込まれてます。
関係者に「あんな“スクールボーイ“で、弁護大丈夫?」と揶揄される弁護士が。
主人公の姿勢や直向きさに感化されて、後半ぐぐっと伸びるところも。
見ててドキドキでした。
100分ほどで濃縮された1作。ぜひ。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「私は過去の記憶を、死なせたくないの」
ESTEE LAUDER
2023年1月29日
映画 #黄金のアデーレ #名画の帰還 (2015年)鑑賞
#クリムト が描いた「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」を巡る裁判の顛末を実体験を基に描いた映画
#ヘレン・ミレン はどんな役でもこなせるイギリスの #メリル・ストリープ みたいな人ですね
実際の絵画を見てみたい
絵画の美しさを再確認
叔母をモデルにした絵画、ナチスによって奪われた絵画を取り戻そうとオーストリア政府を相手に裁判を起こしたマリア。
現状のマリアと、叔母アデーレと過ごした幼少期、ナチス支配のオーストリアから逃れようとする若き頃のマリアと過去を振り返る場面とが絶妙に交差して、とても面白い。
ヒトラーが集めた美術品を隠した映画もありましたね。タイトル思い出せません。
でも大好きだったおばさんの絵画、取り戻してと姉の遺言、でも、裁判を起こす勇気もすごいが、勝ち取った弁護士も凄い。
オーストリアを脱出するシーンもとても緊迫感があり、オーストリアでの華やかな暮らしもとても美しく、そしてアデーレを演じた役者さんが、とてもあの絵画の中のアデーレにそっくりで、美しかった。
ナチスに強奪され、オーストリアの美術館に展示されている絵画の返還を...
ナチスに強奪され、オーストリアの美術館に展示されている絵画の返還を求めてオーストリア政府を訴える。
経験の浅い弁護士が大手事務所を退職し、多額の借金をしながら取り組んだというのがすごい。
最後は調停で返還が認められた。
日本の場合、調停案が不服であれば応じないという選択もできるわけだが、オーストリアの調停はほとんど裁判に近い制度だということが意外だった。
こんな事実があったとは。
オーストリアで芸術に造詣が深い裕福なファミリーの一員だったアデーレ。クリムトのあまりにも有名な黄金のアデーレの絵画に秘められた、ナチス時代の暗黒の事実が明らかになっていく。
あらためて、ナチスや戦争の恐ろしさを感じた。幸せな生活。徐々に状況が変わっていく、少しの判断の遅れが家族を喪う。間一髪で国外に脱出出来ても、その時の恐ろしさは何十年経っても薄れることなく、祖国に足を踏み入れたくないとさえ思わせる。
唯一幸せだった頃の生活の中にあったもの。クリムトの絵画に描かれた叔母。なぜ絵画を取り戻したかったのか、理解できる気がしました。
あの頃の幸せは取り戻せないけど、ナチスに略奪されたままにはしたくなかったんだろう。
あらためて。色々な有名美術館に展示されている絵画の数々にも、それぞれの歴史があるんだろうなと、次に美術館に行く時はそんな気持ちで観ることになりそうです。
ナチスに略奪されたクリムトの名画の返還をオーストリア政府に求め訴訟...
ナチスに略奪されたクリムトの名画の返還をオーストリア政府に求め訴訟を起こすという実話を基にした話。
ユダヤものだけど残酷さはなく、優雅で綺麗にストーリーが描かれている。
ユダヤ人ということで迫害され、国を追われた女性。
自分の家族のものであるけれど生まれ育った国を訴えるということ、失ったもの大きさ、代償、家族への想い、国への想い、つながり。様々な想いが混ざり合っていて切ない。
生きるためにアメリカへ渡り、複雑な想いはあれど心が痛み追われる人生より光が芽生え、大事なものを取り戻して終えた人生は彼女にとって良かったのではないかと終盤のシーンを観ながらそう思った。
凛としたヘレン・ミレンが素敵だった。良い作品でした。
伝記映画だから、大なり小なり、虚飾はあると思う。 あのオーストリア...
伝記映画だから、大なり小なり、虚飾はあると思う。
あのオーストリア共和国もユダヤの人々から『そう思われる』所以があると言うのは少し驚いた。
同時に、日本は中国や韓国からどう思われているのか?少し気になった。
オーストリアはナチスドイツに併合された国で、解放後、永世中立国になった。今現在、NATOにも加盟していない。
だがしかし、正確に言えば、ヒトラーはオーストリア人だし、反ユダヤ主義は今でも根強く残っている。中立と言うが、ある意味、ナチスを払拭していないとも言える。
民族や国で個人を評価することが間違っているのだと思う。つまり、民族の前に階級と言うものがあると思う。マルクス的に言えば、資本家と労働者。反ユダヤ主義が根強く残るのは、資本家にユダヤの人が多いからなのではないだろうか?
ここで間違ってはいけない事は『全てのユダヤ人が、資本家』ではないと言うことだ。
よかったと思う、
「おもしろい」という表現が合うか、興味深い、感慨深いような内容だった。
歴史、過去、そのせつなさ、つらさ、でも変えられない現在の現実、その葛藤は、特にこの映画のストーリーでは胸が張り裂けるような思いもあると思う。
親との別れ、過去の楽しい日々との決別、それからの人生、そして「今」。
そんなことも考えさせられる内容でもあった。
「彼女は戦うプライドのある女性」
ヘレン・ミレンの自尊心はひとして生きた過去と現在の正義と怒りと気品がある。労働の価値とともに。それを見るだけでもこの映画を観る価値がある。演技でなく彼女そのものだから。
ライアン・レイノルズも知る限りいちばんよかった。
そして他国に占領されるとはこうしたことだ。
家族の遺産も思い出もそして最後のプライドさえ最後のひとかけらさえ奪われるのです。
オーストリアという国
日本人の一般的な印象として音楽、ザッハトルテやアプフェルシュトローデル、シェーンブルン宮殿、などなど‥
とても魅力的な国だ。
しかし、ちょっとやばい国だよ、言っていた人がいた。その意味がこの映画を観てよくわかった。この国はナチスの時代の精算をほとんど行なっていないらしい。
日本と似たところがあるのだ。
主人公が若かった頃のウィーン時代と、アメリカで暮らす中で起こしたナチスに略奪された絵画の返還訴訟が交錯する。
ナチスの略奪
オーストリアの国宝とまで言われるクリムトの名画。モデルとなったのはマリア(ミレン)の伯母アデーレの肖像画だったのだ。金箔で彫金、沈金を施した芸術作品が彼女の手に戻るのだろうか?といった内容。
就職したての弁護士ランディ・シェーンベルク(レイノルズ)は彼女の訴えを聞き、二人でウィーンへと飛び立つのだが、彼女はウィーンでの苦難の日々を思い出したくない一心で英語でしゃべることを貫き通す。ナチスに略奪された芸術作品は過去の反省のもと、返還訴訟事業を起こしていたのだが、国宝クラスの名画を返すことに役人たちはすべて否定的。諦めてアメリカへと戻った二人だったが、アメリカ国内でもオーストリア政府を相手に訴訟を起こすことが可能だとしったランディはすぐさま手続きを・・・
実話であると同時に過去にナチスから逃げ回っていたマリアと夫の姿も映し出され、小ぶりの良作となっていた。裁判の過程なんてのも、最高裁まで到達したことでかなり大がかりだったと思われるが、その終盤のクライマックスがちょっとだけ大人し目。
黒白つけすぎかなあ?
本筋は感動的で、迫害されアメリカに生き延びたオーストリアの名家の女性がナチスの強奪されたクリムトを取り返す物語。ヒトラー・ナチスの蛮行とユダヤ人への迫害の歴史を経て、オーストリアが引き継いで美術館に収めた名画。名画の経緯・歴史も丁寧に、昔の描写も生き生きと表現され、彼女と弁護士の熱意や苦悩も伝わってくる。文句なしの感動作品。
一つ残念なのは、オーストリアへの批判が鼻につく点。迫害された彼女は、フロントで「ドイツ語は話せるが使わない」と最初は拒絶するが、次第に水に流そうとするのに比較し、オーストリアは絶対拒絶と壁を崩さない、と。当時のオーストリアの公僕であれば自然な姿でありこれ自体は批判できないし、戦時下のナチスへの迎合も自分の命さえ危険になる状況下で追従せざる得なかった人々もいたはず。なのに、数名の協力者以外はみんな敵で悪者のようなトーンがなんともすっきりしない。
最終的に名画はアメリカに移ったのだが、中盤で彼女自身が言ったように、置いても良かったのかもしれない。それが彼女の本意だったのではなかったか? 頑なな母国の仕打ちに嫌気がさしたのかなあ?
原田マハさんの小説につながる世界
クリムトの名画にまつわるお話。戦争の悲惨さも伝えていて一つの絵を通して人の生き様、生き方を。主演二人の演技も秀逸、挿入されたクラシック音楽もいい感じです。マハさん小説にはまっている私としては絵画の世界への興味がますます沸き、本物の絵を観たいと思いました。アデーレ役の女優さんも綺麗。
ナチスがしてきたこと。
1枚の絵を巡りオーストリア国と裁判し絵を取り戻した話です。
ナチスがユダヤ人を迫害し物品、財産そして命まで。。捕られた時代。
今はアメリカで暮らし幸せな生活を送っているマリア。
黄金のアデーレの絵を観たとき絵に込められた思いが甦る。当時を思い起こしマリアの半生を交えて物語が進んでいく。
マリア役のヘレンミレンがとてもチャーミングで惹き付けられる。(どこかエリザベス女王に似てる)
マリアの人柄、また当時の思いが強く感じられてたくさんの感動をもらった。
取り戻したのは、単なる「宝物」ではなかったのです。
名画として美術館で私が鑑賞してきたすべてに、私の決して知ることができない作者自身の個人的な思いがあったはずです。
また、すべての肖像画には、描かれた側の思いも同時に存在し、その親族たちにも思いがあったはずです。
美術品は、私たち第三者である観衆や、あるいはナチスや美術品泥棒にとっては「品物」なのかも知れません。
しかし、美術品の誕生に居合わせた者たちにとっては、単に金額でのみ計りうる宝物なのではないのですね。
製作者や関係者には、いくつもの思い出が、甘く、苦く、いまいましく何重にも絡みつく、だからこそ宝物なのです。
ナチスによってユダヤ人一家から奪われたクリムト作の「黄金のアデーレ」は、10年前に156億円という巨額でアメリカのギャラリーが購入したのですが、そのエピソードを「取り戻した側」から描きつつも、取り戻したのが単なる金ではなく、心と追憶を取り戻すことであったと解題してみせるのが、この映画が一級品の宝物であるゆえんでしょう。
なお、映画は最後に「タイタニック」の最後のエピソードと同じ手法で泣かせに入ります。
もちろん、この手法が成立するのは、「心そのもの」を主人公に立てたストーリーだったから。
……と分かっていても、これをやられると、私はとても弱いんです。
涙腺の弱い皆さん、念の為、ハンカチのご用意をお忘れなく。
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