「黒白つけすぎかなあ?」黄金のアデーレ 名画の帰還 bluetom2000さんの映画レビュー(感想・評価)
黒白つけすぎかなあ?
本筋は感動的で、迫害されアメリカに生き延びたオーストリアの名家の女性がナチスの強奪されたクリムトを取り返す物語。ヒトラー・ナチスの蛮行とユダヤ人への迫害の歴史を経て、オーストリアが引き継いで美術館に収めた名画。名画の経緯・歴史も丁寧に、昔の描写も生き生きと表現され、彼女と弁護士の熱意や苦悩も伝わってくる。文句なしの感動作品。
一つ残念なのは、オーストリアへの批判が鼻につく点。迫害された彼女は、フロントで「ドイツ語は話せるが使わない」と最初は拒絶するが、次第に水に流そうとするのに比較し、オーストリアは絶対拒絶と壁を崩さない、と。当時のオーストリアの公僕であれば自然な姿でありこれ自体は批判できないし、戦時下のナチスへの迎合も自分の命さえ危険になる状況下で追従せざる得なかった人々もいたはず。なのに、数名の協力者以外はみんな敵で悪者のようなトーンがなんともすっきりしない。
最終的に名画はアメリカに移ったのだが、中盤で彼女自身が言ったように、置いても良かったのかもしれない。それが彼女の本意だったのではなかったか? 頑なな母国の仕打ちに嫌気がさしたのかなあ?
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