「壮大な前フリでも見応え十分な前半戦でした」64 ロクヨン 前編 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大な前フリでも見応え十分な前半戦でした
ロクヨン事件の解決に向けてはほとんど進展していない前編ではありましたが、でもこれ一本でも物凄く見応えを感じられる、近年少なくなった大人が見て楽しめる良質な日本映画に仕上がっていたと思いました。
まあ言ってしまえば前編は後編の壮大な予告編的内容だったとも言えるのですが、何せ登場人物が多かったですし、名立たる名優が勢揃いしていた映画ですから、それぞれの人間関係・人物相関図を丁寧に描くことはとても重要だったと思うので、最近はちょっと首を傾げたくなるような二部作物も存在していたりはしますが、この映画に限ってはこう言う作風にしたのは正解だったと思いましたね。
しかし驚いたのは、前置き無しにいきなりロクヨン事件の全貌を見せるところから始まったことですよ。
まさしく掴みはOK、緊張感たっぷりな事件の様相に、いきなりもう引き込まれてしまいましたね。
そこからなかなかコトは進まなかったですが、この残像があるからそれでも見応えを十分感じられたんじゃないのかな、長々と前置きを長くしていたら、作品の印象はまた違ったものになっていたと思いましたよ。
私は原作未読でドラマ版も未見なんで、この後どう展開していくのか全く想像がつきませんし、チラホラ映されていた伏線にもいまいちピンと来なかったので、正直後編が早く見たくて仕方ないです!
まあ原作ファンやドラマファンはまた違った視点で鑑賞していると思うので、比較すればいろいろと気になる部分はあるのでしょうが、知らない身から見ればロクヨン事件の残された謎、それに関わった者達が複雑な思いを抱えて生きている今の様子、そして組織対個人、ホント見応えたっぷりな内容で、今のところ満足度は高い状態の前半戦と言った感じでしたね。
それにしても本当にあってもおかしくないような題材が素晴らしい、永瀬正敏の哀愁も相まって、とても切ない気分にさせられました。
切ないと言えば、佐藤浩市の広報官が置かれた立場も切ないねぇ、上はアレだし、記者達はアレだし、サラリーマンの悲哀にも似ていて、何か物凄く分かる、胸が締め付けられた。
でも、それだけ警察の隠蔽体質がこれまでも本当に酷かったのでしょう、しかし瑛太腹立つ~(笑)そして滝藤も~(笑)
まあそんな訳で、佐藤浩市の魂の叫びの余韻を残しつつ、後編への期待は高まるばかり・・・期待していますよ。