劇場公開日 2016年1月30日

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「さらばあぶなかった刑事」さらば あぶない刑事 不敗の魔術師さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5さらばあぶなかった刑事

2023年11月4日
iPhoneアプリから投稿

思えばリターンズの時点ですべてが終わっていました。
「あぶ刑事」はトンデモ刑事モノの代表格のような扱われ方を世間的にはされてしまっていますが、元々は
デリケートな対象を勝手に捜査・挑発しては署長に怒られた課長に怒られ、
県警が目を付けていた犯人に手を出しては柴野のような県警のエリート刑事から怒られた課長に怒られ、
越境捜査をしようとしては止められて旅費が出ずに有給を取って自腹で出掛け、
という風に、ある意味「踊る」よりも先にサラリーマン的悲哀を描いた刑事モノでもあるのです。
横浜という地元に密着した、等身大のスケール感の中でオシャレで突飛な事をするから2人の魅力は際立ったのに、「リターンズ」の敵は「ブレーメン」とかいう「国際的カルト組織」でボスが白フン履いて登場という何だか良くわからないものに・・・

「フォーエヴァー」は「NET」なる謎の組織、「まだまだ」でもまだまだ「謎の組織」・・・・そして今回「国際犯罪組織」。
宿敵である銀星会の元幹部が組を再興しようとする話じゃダメなの?
片桐竜次まで起用しておきながら、あの扱いは一体何なの?
何故体育館に高級ソファーを円形に並べるの?手下が家具屋で高いソファーを注文して、体育館に運び込んでえっちらおっちら円形に並べて準備する図を想像してマヌケだなあーと思わなかったの?

「もっとも」の村川監督という事で期待したものの、寒いギャグを更に寒くする「ギャグ用効果音」、「ブラックマーケット捜査」で「戦後の闇市」みたいな場所を作っちゃうなど、ヤバさが「まだまだ」までと共通しているというのは一体どういった呪いなんでしょうか!?
そもそも「あぶ刑事」のギャグというのはこんなその場限りの一発芸のようなものじゃなかった筈です。
劇場版1作目の、人質を取った兵藤にお互い手錠で繋がれ、タンゴを踊りながら港署に帰ってくるシーンの小気味よさと凝りようを見ろと!
「もっとも」で下水道から出てきたユージがパレードに紛れようとしてウージーを高々と掲げながら行進するシーンの自然な笑いを見ろと!
(これは村川監督の作品なんですよね・・・・本当に何故なんだろう)

「見せ場」がないのも不満です。この映画、一体どこを見ればよかったのでしょうか?「もっとも」までは映画の中で幾つもの「見せ場」つまりカッコイイ銃撃戦がありますが、「さらば」にはありましたか?
ユージが走るシーンでトオルのツッコミボイス?が聞こえる謎演出、ラストの尻切れトンボな銃撃戦・・・
2016年に「ショットガンによる狙撃」を見せられた事にもビックリだし、バイクのタカに小走りでユージが近付いてショットガンを手渡しするシーンは目を疑うカッコ悪さでした・・・カッコ悪いといえばタカの慟哭シーンも最悪にカッコ悪かったなぁ・・・。

更に今回の2人は「あぶなくない」。劇場版2作目の「またまた」冒頭で犯人を追い詰めるべくレパードを片輪走行させて爆走させるユージと、助手席で平然とマッチを擦りタバコに火をつける涼しい顔のタカ・・・・こういう所が「あぶなくて」カッコ良かったんですが、どこかありましたかね?今回そんなシーンが・・・・
BGMがカッコ悪いのもキツかったです。「もっとも」までのサントラは今聴いてもカッコイイんだから、ファンサービスを考えても名曲使い倒せば良かったと思うんですが・・・。

最後に「ぼくのかんがえたさいきょうのあぶでかさいしゅうかい」を。
県警か隣の署あたりで、サングラス姿でハデな捜査をして高い検挙率を叩き出す2人組の若手刑事が現れる。
何かの拍子でタカ&ユージと出会い、「鷹山先輩大下先輩に憧れて刑事になったっす!お会いできて超光栄っす!」的なリアクション。
お調子乗りのタカとユージはすっかりいい気分で交流する。
しかし、2人の検挙率が高いのは実は悪党と癒着しているからだと判明し、可愛さ余って憎さ百倍で2人を追い詰めるタカ&ユージ。
まずはカーチェイス。そしてお決まりの「米軍跡地」に追い詰める。(今は無いんだったらそれに類する廃墟)
表と裏口に別れて進入。それぞれ1vs1で戦い、合流して2vs2でシリーズ最長の銃撃戦!(歳は取ってても見せ方次第で幾らでもカッコイイ銃撃戦は撮れる!!)
ってな感じだったら随喜の涙だったんですが、若手刑事が犯人という展開は「まだまだ」でつまらない使い方をされちゃったんですよね・・・本当に罪深い作品です。

今ふと思ったんですが、近藤課長は作中でも2人の歯止め役だったけれども、「あぶ刑事」という作品そのものにとっても歯止め役だったのではないでしょうか。
中条静夫の地に足の着いたシッカリした存在感があれば、「謎の組織」が敵になる、なんて浮ついた展開は有り得なかったんじゃないかとそう思えてなりません。
あらゆる意味でかけがえのない方を失ってしまった不幸なシリーズなんだと思います。

*公開日に劇場で鑑賞直後、他サイトに書き殴ったものをサルベージ

不敗の魔術師