「表面上からでは分かりにくい同情とか嫉妬といったものを、人の過去や他人との繋がりなどの中に上手に埋め込んで観るものに語りかけてくるヒューマンドラマです。」スターレット もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
表面上からでは分かりにくい同情とか嫉妬といったものを、人の過去や他人との繋がりなどの中に上手に埋め込んで観るものに語りかけてくるヒューマンドラマです。
最寄りの映画館で上映していた「ショーン・ベイカー傑作選」。
そのポスターを眺めていて気になったのが「スターレット」。
解説を読んでいたら「アノーラ」の監督作品と知り、この作品
がどんな内容か気になって鑑賞することに。 ・_・シマシタ
アノーラはR18でした。この作品は… これもR18か。
紹介文を読んでいくと
・ヒロインはAVポルノ女優… あらま こちらも性風俗従事者
・もとの邦題「チワワは見ていた」…家政婦犬?
あまり過度な期待はしない方が良いのかも… と
失礼なことを考えながらの鑑賞です。@_@; スイマセン
鑑賞開始。
この監督、LAとかベガスとか性風俗の女性とかクズ男とか…
アノーラと同じようなキーワードを散りばめてました。
そして、現在の自分から脱却したいと切望する人物をも上手に
描いているように感じました。
主な登場人物は3名。…と一匹。
ジェーン。主役。演じた女優さんは文豪ヘミングウェイの曾孫。へえ
容姿整った女優さんです。この作品以外の出演作が
見当たらなかったのが残念。
せィディ。もう一人の主役。80過ぎの老女。家族に先立たれて
現在は庭付きの家で一人暮らし。 この作品に出演した
翌年に亡くなられていたようです。
メリッサ。ジェーンが間借りする家のオーナーの彼女(…多分)
自己主張と承認欲求強そう。感情の起伏が大きい。
最後に余計なことをやってくれる残念な女。
スターレット。ワンコ。チワワの♂。スターレットという名前は
女性の名前らしいが、この名前で呼ばれている。
性格は温厚。悟りを開いた賢者の雰囲気あり。
ストーリーに絡めて、もう少し紹介。
ジェーンはメインヒロイン。所属するAV事務所(?)の中では
おそらくトップクラスの人気女優。ある日ガレージセールで購入
魔法瓶の中から、高額紙幣の束を見つけ、金を返しに行きます。
セィディは魔法瓶の元の持ち主。庭付きの住宅で一人暮らし。
郵便配達員が自宅の階段で転倒してケガをしたことで、家の内外
を片づけるよう裁判所?から指示されてしまい、色々と売却。。
その中に魔法瓶もあったという訳ですが…。
札束のことを伝え、お金を返そうと自宅を尋ねるが、魔法瓶の
返品と思い込んだセィディが話を聞いてもくれない…。あら
けれどもジェーンは挫けません。セィディに返すタイミングを図ろ
うと、セィディの外出先に出没しては ♪偶然を装って待つわ♪ な
ジェーン。(BGM:まちぶせ)
うん 立派なストーカーだ…。
そしてもう一人。
ヒロインのジェーンと同居するメリッサ。彼女はアノーラの原型か
とも言えるような気がして、最後まで目が離せませんでした。
で、最後近くになってセィディに爆弾を放り込みに(比喩です)
行くわけですが…。あれあれ。
と、まあ
この3名と一匹を中心に、日常のお話を描いていく訳なのですが、
セィディに無理やり接触を図っていくジェーンと、その強引なやり
かたに警戒感満タンで対応するセィディ。
ある事件をきっかけに、ジェーンの行動に悪意が無いと知ったセィ
ディの態度が軟化していきます。ゆっくりと、年齢差のある友人と
して親密度を深めていくのですが…。
◇
アノーラを比較対象として意識し、鑑賞した作品でしたが
アノーラ よりも構成の しっかりとした作品との印象です。
同じR18作品ですが、こちらでの性描写シーンは、上映時間の長さ
や全体の中でのバランスを考えたのか、抑えている印象あり。
(その抑制がアノーラで噴出したのかは不明ですが…)
で。ラストシーンの意味。
はっきりと明かされていない気が…。@△@;
視聴者の想像に委ねる終わり方に意図的にしたのか。 はたまた
私が重大な情報を見落としたのでしょうか? (ありそう)
そこが分からずに、悶々としています。
# セイディには亡くなった娘がいて、ジェーンの母親の名前が墓標
に刻んであった とか (実の祖母と孫)
# 脇の墓標の名前はセィディ自身。実はセィディはユーレイ とか
(まあ、無いでしょうケド)
パンフ売って無かったのが残念。(売り切れ?最初から無い?)
ともあれ
作品への印象としては、アノーラよりこの作品の方が好みかも。
観て良かった。
◇あれこれ
■スターレット
イメージ的に男性の名前と思い込んでました。
今回初めて、女性の名前と知りびっくり。 ・△・;
機動性高そうな印象があったので…。 かっ飛びスターレット。
■スターレット その2
女二人が大げんか。
取っ組み合いが始まりそうな喧騒の中でもスヤスヤ。
大物犬です。
あ、もしくはスヌーピーみたいな哲学者タイプかも。・-・
■タイトル(邦題)
「チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密」
笑う所なのか と思いながら、意外にこの作品の本質に触れて
いるタイトルのような気もしてきました。インパクトがあり、
奥深いです。
(最初に見た瞬間には固まりましたが…@▽@)
◇最後に
また、ブーツの中の札束に気がついたメリッセですが、盗んだりは
しませんでした。この監督さん、根本の所では人(の善性)を信じ
ている監督なのかも。そんな気がします。
機会があれば、また別の作品も観てみたいです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
二人のパリ旅行を想像する空白も残してくれるショーン・ベイカー監督、いいですね!「井戸の茶碗」調べさせてしまってすみません。映画の途中から「井戸の茶碗」が頭から離れなくなり、落語の世界をジェーンが動き回り笑ってしまいました
ショーン・ベイカー監督は人の善性を信じている人、私もそう思います。ショーン・ベイカー監督の映画を見れば見るほど、辛い環境にいても幸せな(幸せ求める)大人と子どもをあたたかく包み込みたくなります


