「ショーン・ベイカー監督版「井戸の茶碗」」スターレット talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
ショーン・ベイカー監督版「井戸の茶碗」
この映画では、茶碗でなくてチェック柄の水筒型魔法瓶。水筒と聞いて連想するのは「子ども」。子どもと一緒に家族でハイキング、子どもが幼稚園や学校の遠足で持って行くもの。アメリカでもそういうイメージはあるのかなあ。
魔法瓶をガレージセールに出していたセィディおばちゃんは気難しそうな人で、その魔法瓶を買ったジェーンに返品不可!と言い放つ。でもその中には信じられない程たくさんの高額紙幣が入っていた!ジェーンは返しに行くが、話も聞かず、返品不可!の繰り返し。じゃあ!とブランドもの買ったり豪勢にチップを払ったり。でもなかなか減らないお金。どうにかセィディに接近して、スーパーへの買い物や亡き夫の墓参りの車送迎を申し出ることに成功する。警察沙汰にもなったがジェーンに悪意はないことがわかる。ジェーンの人懐こくてめげなくて賢い雰囲気は、愛犬チワワのスターレットに似ていて笑ってしまう。
若くて美しいジェーンは同居させてもらっている友達メレッサと同じ仕事、ポルノ女優だ。メレッサは性格が強烈でかなり問題がある。ジェーンはどうにかおさめる役割。二人が所属しているエージェントのトップはカレン・カラグリアンが演じている。ショーン映画の常連!アダルト系にもコミコンのようなのがあることを知ってビックリした!
パリが大好きと言いながら実は行ったことがないセィディに、ジェーンはパリ旅行を持ちかける。ファーストクラスのフライトでパリの高級ホテルに1週間!セィディは、行かない!とつれない。そしてBINGO会場。ジェーンが先にBingoになったらパリ行きだぞ!ジェーンはBingo受付でカードを全部買う。マーカー・チェックがすごく大変!どちらが勝っても二人の間には固い優しい友情関係ができている。メリッサがジェーンのお金のことをチクリに来てもセィディの気持ちは変わらない。
空港に行く途中で墓参りをすると言うセィディ。あなたがお花持って行って、と初めてジェーンに言う。地面にはめ込まれた一つの墓石にはセィディの夫の名前。その隣には女の子の名前(多分18歳位で亡くなっている)が刻まれた墓石。セィディは子どもは居なかったと言っていたのに。ジェーンは茫然と佇む。
あの魔法瓶はその女の子が使ってたものなのかな?スターレットを一時的に預かったセィディ。スターレットがどこかに行ってしまい探し回る。その時、彼女に何が起こり何を考えたんだろう?映画が終わっても、ゆっくりと思いを馳せる時間と空気を残してくれる作品。とてもよかった。
おまけ
1)この映画出演が生涯で唯一のベセドカ・ジョンソン(セィディ役)は、「スターレット」が2012年に公開され、翌年の2013年に87歳で亡くなったとwikipediaにあった。
2)ジェーン役、美しく魅力的で聡明、自然でとてもいい女優だ。
3)メレッサはポールダンスがなかなかうまくできなくて彼氏にムカつかれる。映画ANORAでは、アノーラが素晴らしいポールダンスを見せてくれた。真面目な練習の賜物だろう!
こちらこそ、たくさんの共感とコメントありがとうございました。
あまり文学的知識もなく語彙不足で、表面をさらっとなぞったような軽薄なレビューしか書けず、へこむばかりですが、talismanさんのような博学な方たちのレビューを拝読させていただき、日々勉強させてもらっています。
引き続きよろしくお願いします。
りあのさん、朝から共感やコメントの嵐で驚かれたかと思います。すみませんでした。早く起きたこともあり映画.comを見て、りあのさんの「スターレット」のレビューを読んで魔法瓶の中のお金のこと、に加えて二つの疑問は同じく!なので嬉しく思いました。りあのさんがご覧になっている映画の本数と種類に感動しつつ重なるものが多く、それでまた嬉しくなって、辿ってしまいました。
これからもりあのさんのレビューを楽しみに拝読いたします!お騒がせいたしました。
こちらこそ沢山の共感とコメントをありがとうございます
共感、コメントありがとうございます。
100ドル札を10枚ずつ束にして丸めてあって、それが10束出てきたと思います。
1万ドルは大金だけど、ほとんどをセイディのために使おうとするところが可愛いですね。
性格良い子だなぁ、って思いました。
「井戸の茶碗」、
なるほどですね。ショーン・ベイカーは上手い噺家の風情がある。人情噺で観客の心を動かす名人。
語り過ぎない短編だからこそ、短歌や俳句に通じる絶品の余裕が生じる。―そんな気がします。
だから劇中での黙っている二人や、その沈黙の様子が 実はとてつもなく多くのことを語るんだなぁ。
talismanさん、コメントありがとうございます。・_・
>「井戸の茶碗」調べさせてしまってすみません
いえいえ。
気になるワードは調べたくなる性分なものですから。
またひとつ、知識が増えるきっかけをありがとうございます。
「井戸の茶碗」、オチも良いですね。洒落た感じで。
talismanさん、共感とコメントありがとうございます。・_・
>映画が終わっても、ゆっくりと思いを馳せる時間と空気を残してくれる作品
同感です。余韻に浸れます。
パリではどんな道中だったやら。
「井戸の茶碗」
何か分からなかったので調べてみたら古典落語の人情噺。
なかなか良いお話です。好みかも。
大変ためになるレビューありがとうございます。
勉強になりました・-・♪





