「黒い奴ら」ブラック・スキャンダル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
黒い奴ら
FBIの最重要指名手配犯リストであのオサマ・ビンラディンに次いで2番目にマークされ、アメリカ最恐ギャングと恐れられたジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー。
その生きざまや裏社会でのし上がっていく様を描いたクライム・ドラマだが、それ以上に、観たばかりの「日本で一番悪い奴ら」同様、反社会勢力と社会の治安を守る組織の黒い癒着が浮き彫りにされている。
さらに付け加えて言うと、こちらの方が親密と言うか、質が悪い。
何故なら、ギャングと政治家が実の兄弟、そしてFBIがその古くからの友人なのだから。
単なる街のチンピラに過ぎなかったバルジャーが大物ギャングになった経緯には、FBIとの関わりが否定出来ない。
ある大物ギャングを逮捕する為の、表向きは持ちつ持たれつのビジネス関係。
が、幼い頃からバルジャーに恩あるFBI捜査官コノリーにとって、ビジネス以上の感情があったのは明らか。
バルジャー逮捕が迫った時、政治家の弟から上に圧力をかけて欲しいとまで頼むほど。
そこに付け込み、FBIの擁護を武器に、全ての罪を見逃され、勢力を拡大していくバルジャー。
利用したされたもあるが、結果的にFBIがみすみすもう一人の大物ギャングを誕生させてしまったという皮肉。
勿論、公には出来ない関係。
その一大帝国の崩壊はあっという間で、関わった全員に影を落とす事になるが、法よりも強固な濃い血の絆にゾッとさせられる。
R15指定ではあるものの、バイオレンス描写は思ってたより控え目。
淡々とした演出・語り口なので、アクションを期待すると大肩透かしだが、クライム・ドラマとしては上質。
この静かな中の緊迫感を生み出しているのは、ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチらの名演に他ならない。
とりわけ、ジョニー・デップが素晴らしい。
相変わらず特殊メイクはしているが、ここ近年のおちゃらけ演技を払拭し、本来の実力派としての本領を充分に発揮出来た気合いの入った演技を披露。
いつキレ出すか分からず、ヒヤリとさせるシーンも度々。(特に、“家族の秘密のレシピ”とか)
冷酷で邪魔者は容赦なく殺(け)す一方、カリスマ性たっぷりで、家族には深い愛情を注ぐ人間味ある一面も体現。
ジョニー・デップ、復活!
…と、劇場で観ていたらここで称賛で終わっていたのだが、
全米での「アリス~」続編の大コケ、DV疑惑の“ブラック・スキャンダル”でまたまた崖っぷち…。