「ジョニデがこわい」ブラック・スキャンダル なかばさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョニデがこわい
実在した犯罪王・ジェームズ・'ホワイティ'・バルジャーを演じたジョニデがめっっっっちゃこわい……無言の圧力……視線の警告……こわい……
はい『ブラック・スキャンダル』の要約おわり!
実際にあった汚職事件を基にした映画だけれど、なんというか、娯楽性に欠ける。ドキュメンタリーとも言いがたく、かと言ってエンターテイメント作に仕上がっているわけでもない。もちろん、人間の心理に深く突っ込んだ傑作でもない。
バルジャーが町の人に愛されている、というのは作中で語られていたが、それを物語るシーンなどが足りないのでバルジャーの光と闇(という表現でいいのだろうか)の描写があまり……。
一方、バルジャーがもっとも大切にしていたものは、作品を貫いて描かれていた。犯罪王と呼ばれ、冷酷で残忍な男であるバルジャーも、一本貫いたものがある。家族の前では笑顔を見せ、裏切り者には銃口を向ける。そのギャップは、なるほどとても恐ろしい。もしも一人で観ていたら、途中で顔を背けただろう。ありがとう、隣でチップスをバリバリ頬張ってくれたお兄さん。
ただひとつ、私の目には、なぜかバルジャーは「英雄」に見えた。FBIでそう称えられたジョン・コノリーよりもずっと。バルジャーは、単なるケチな悪人ではなく、心の中の「悪」が強すぎただけの、ひとりの人間なのだろう。だから惹きつけられてしまった。
皆さんの目には、誰が「英雄」に映るのだろうか?
残忍だが信念を貫き通すバルジャー?
何が起きてもバルジャーと手を組み続けようとするコノリー?
兄の存在を知り連絡を取り続け、危険が及ぶと知れば協力せずにいられないビリーか?
決して悪と正義を描き双方の葛藤を描くような作品ではないが、私はこの映画に、「本当に正しいのは誰なのか?本当に彼らは悪人なのか?」と尋ねられたような気がする。
結構中盤で退屈するので、怖さ軽減のためにも、鑑賞の際はポップコーンやチップス必須。