劇場公開日 2015年5月30日

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「思い出の虜囚」ロスト・リバー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5思い出の虜囚

2024年1月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

この映画はデトロイトを初めて訪れたときの、ライアン・ゴズリング自身の衝撃がベースになっているらしい。
凋落したとは言えアメリカ第4の大都市だったこともあり、エミネムのような時代を代表するアーティストを排出した街でもある。
栄華を極めた伝説の街。外国人だからこそ受ける衝撃、というのもやはりあるんじゃなかろうか。

実際、「ロスト・リバー」のさびれっぷりはヤバい。廃村レベルの過疎だ。
住人はどんどんいなくなり、街は街の体裁を保てないほど荒れて、それなのに主人公一家は街から出られない。

聞いた話だが、思い出というのは場所に紐付いているのだそうだ。立ち寄ればふと思い出す、他愛ない会話やちょっとしたアクシデント、あの時の気持ち。

なるほど「ロスト・リバー」のビリーは祖母から受け継いできた家に執着するがゆえに、街からも出られず苦しい生活に陥っているように見える。
冒頭に出てきた街を去る老人も「ここには思い出が沢山ある」と言い残した。
ラットの祖母なんかは思いっきり思い出にどっぷり浸っている。

もう1つ挙げるなら、「水に沈む」というのは不安や無力感を感じさせる。中身の見えない心細さ、生存できない空間への恐怖、もう元に戻らない諦め。
貯水池に沈んでいる街は、思い出を捕らえて離さない。この街の「呪い」とラットは言うが、確かに一見合理性のない執着は「呪い」と言っても差し支えないように思う。

リアルの印象をファンタジー溢れる「呪い」に落とし込み、何故だか目が離せない不思議な魅力があった。
だだ、もうちょっとこう、「キレ」みたいなものが欲しかったよね。映像とかとても幻想的で綺麗で、心地良いんだけど、むしろちょっと不快感があるくらいの方がストーリーを進める推進力になったんじゃないかなぁ。
結構好みな映画なんだけど、いまいち物足りないのはそのせいかも。

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つとみ