パパ、遺伝子組み換えってなぁに?のレビュー・感想・評価
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農家の哲学
この古いドキュメンタリー(2013)で農民の真の哲学を見せてもらった。
以前観た『food Evolution』(2016年)というドキュメンタリーでは島国の米国ハワイの日系人の科学者は、ハワイのパパイヤの絶滅を救ったのはモンサントのGMO(遺伝子組み換え)のお陰だと、感謝していると言ってた。それで、現在ハワイのパパイヤは全部がGMOパパイヤになった。
これとは対照的に、このドキュメンタリーではハイチの農民の活動家や農民はモンサントからのタネを焼き捨てたと。モンサントは金儲けだけで、環境問題を考えていないと。土地をダメにし、人々もと。USAIDというアメリカの企業?が、モンサントの苗も送ったが、それも全部引き抜いて捨てたと。これが農民の選択だと。農民はモンサントの種を植えれば、一年しか芽がでず翌年もモンサントの種を買わなければならないと。しかし、農家の従来作付けしている種子は毎年発芽すると。
貧困であるハイチは島国だからこの選択は一致団結する決断がいったと思う。
映画にはないが、島国である日本は大豆、麦、などの種子を従来日本の農家が守ってきたが、安倍内閣の時、種子法が改正になって、海外からの種子が入り込むことができるようになり、例えば、モンサントGMOの種子が作付けされることになる。食の安全の供給が変わってくる。 悪く言えば、モンサントのような類の会社に身売りしたことになる。
監督の二人の子供はおかしい、特に『ブレイヤー』のアイスクリームを食べているとき、ハイチではGMOを悪魔扱いしていると父親が言っても『このアイスクリームは今まで、一番美味しい』と。ここで、現代の子供たちはGMOだから、食べないという感覚ではなく、美味しければいいという。 こういうのは子供でなくても一般的な人々の発想であるし、食の安全性を親が解かない限りどこから学ぶの?この監督は食の教育がいると思い、子供たちにいろいろな経験をさせている。
子供の視点を除いて、いくつかなるほどと思ったことがある。 モンサント、テフロン訴訟で悪名高いデュポン社、中国資本シンジェンタ、ダウ、BASFなどの化学薬品の企業。これらを『自然というものに専売特許権を与える』という考え方に違反してると考える良い発想。海を私有地化してビーチを使えないようにしているのと同じで、倫理的? 自然は誰のもの?
それに、ある農民の考えだが、GMOが花粉や種で、他の農作物の汚染するが、それ以上に、心配していることは、ラウンドアップのような雑草・害虫退治の化学薬品が人間の体内に入る方だと。GMOを心配するよりもっと有機栽培の食材をすすめるという意味だと解釈する。
余談だが、アイダホ州にあるシンジェンタに行って様子を見たことがある。ハイウェー26のそばの田舎に立地する小綺麗な会社だが、会社の名前も小さく書かれ、 GMOや化学薬品に興味がなければ見に行くこともないが、私は見てみたかった。鎖で、閉ざされ、駐車場すら入ることができなかったが、化学薬品の会社の特徴は目立たないところに立地して、会社の看板も小さいことにあると思う。これは私の経験だとして取ってほしい。千葉にあるモンサント(いま、社名が変更に?)を外から見学してみたらどうだろう。
この時、ついでにアイダホ州でGMOのトウモロコシ畑を見学した。真っ直ぐに立ったモロコシの周りに草一つない。そして、緑で一列に行儀よく並んでいる。これは畜産用(?)のとうもろこしだが、この映画でも説明があるように、このGMO+化学薬品のを家畜は食べている。あと、グアテマラでも、とうもろこし畑を見たことがあるが、これは明らかに遺伝子組み換えされていない、収穫率の悪そうなとうもろこしだった。
日本の場合、納豆に遺伝子組み換えでないの表示を見たことがある。表示が必要とされているのは全食品ではない。加工品(食用油、醤油など)の表示義務はないとなっているらしい。 米国でGMO の王様はアルファルファ、菜種、トウモロコシ、綿、パパイヤ、大豆、甜菜糖、黄色のスクワッシュなどなどである。
このドキュメンタリーは古いのでその後の展開をちょっと調べた。
米国は来年(2022)の1月にはTraceGains(1/2021)よると、Genetically modified (GMO) と bioengineered (BE) の表示がされるようになる。GMO食品を透明化することで、消費者に安心感を与えると思う。このことで、消費者に選択権を与えることができる。GMOを食べるかどうが私たちが選択できるのがいい。
この法律には例外があると。
1)動物の肉、ミルク、卵など
2)油や砂糖など精製された原料
3)レストランでサービスされる食物
4)地方の小さい店で(惣菜屋など)作られて売ってる食べ物
5)食べ物じゃないもの
しかし、気になることはGMOの作物が種子や花粉で土壌汚染してしまうことの解決策は? 右の土地がGMOだと、自ずと左側も花粉で汚染されてしまうということだが。
『食の未来』(2004年)というドキュメンタリーで、『GMO』の歴史を紐解いたことがる。
それは1970年に食糧危機を考えて、ノーベル平和賞をもらった農業学者ノーマンボーロークの考えた『緑の革命』 で世界の食料不足を救うことになった。特にインドの食糧危機を救ったらしい。
GMO(non GMO)じゃないよと知らせている商品には時々、紛い物がある。個人的に経験したことだが、何年も前、国際線の無料のスナックのNON GMOのレベルに不信感があって、NONGMOの消費者団体に電話をして確認したことがある。それで、嘘レベルだと発覚した。
ラウンドアップとコロナワクチン(あくまで私見)
映画で監督がアイオワ州を訪れた時、学者がラウンドアップの耐性について話していた。これはまるでコロナワクチンの耐性と同じだと思った。雑草でオオブタクサ(Giant Ragweed)と害虫でオオタバコガ(Bollworm)の巨大化。これらはこの環境条件でラウンドアップに耐えて生きる性質になってしまっていることで、耐性化されたことだ。ラウンドアップではもう死なない。ラウンドアップでは死なない雑草、害虫が増えていっている。 コロナ感染症ワクチン、ワクチンと3度も接種しても、耐性をもった新たな変異種ができることと同じではないか???
悪の組織モンサント
三児のパパが、遺伝子組み換え食品とは何か、ということを追求していくドキュメンタリー。
遺伝子組み換え食品とは、発がん性があるかもしれず、自然の環境を破壊し、モンサントなど特定の企業が貧しい農家から利益を搾取するためのもの、みたいなことがあきらかになってくる。
しかも、我々は知らずに遺伝子組み換え食品をすでに食べ続けていて、それを避けた食生活をすることも容易ではないという。
実際、日本でも、加工品や家畜の飼料レベルから遺伝子組み換え食品を避けた食生活はかなり難しいと思われる。
そういう、遺伝子組み換え食品を食べない、という選択肢が事実上できない状態にある、ということの問題提起は優れていると思う。
映画でも、遺伝子組み換え食品を避けようとしてもどうしても避けられない、という現実にあたり、家族がナーバスになっていく様子がリアルだ。
遺伝子組み換え食品が良いのか悪いのか、という議論に関しては、この映画は一方的に悪く見る材料だけを提示し続けるので、それがかえって説得力をなくしているところはある。
要は、プロパガンダ的だと感じられる。
例えば、安全性については、モンサントに何度も取材を依頼したが断られた、とされ、健康被害があると主張する研究者のインタビューだけが出てくる。
遺伝子組み換えは不自然で悪の食べものである、という映像的な演出も露骨。
特にモンサントは、利益のために人々を不幸にする悪魔のような企業としか思えなくなる。
でも、現実社会の問題て、そんなに単純に善と悪がくっきり分かれてるようなものなのかな?と思う。
たしかにモンサントを悪として描けば、話としては分かりやすいけど、そんな単純なことではないような気もする。
そういうものがあるのかどうか知らないが、モンサントや遺伝子組み換え肯定派の反論も聞いてみたいところ。
追記
遺伝子組み換え作物肯定派の記事を少し探してみた。
(1)
日経サイエンス2013年12月号掲載
「組み換え作物は悪なのか?」
www.nikkei-science.com/201312_082.html
(2)
WEDGE Infinity
「遺伝子組換え食品 海外での“大事件”が報じられない日本」
wedge.ismedia.jp/articles/-/2498
これらには、映画で言及されていた、セラニーニの研究(組み換え作物がラットのがんの原因になる)についても出ている。
個人的な所感では、「組み換え作物肯定派」の方が信頼性が高いように思える。
反対派は、自説に都合のよいものだけを取り上げ、都合の悪いものは示さないか、過小評価しすぎているように見える。
(要は扇動的、運動家的に見える)
しかしどちらにしても、「遺伝子組換え食品を食べない」という選択肢が可能な世の中であるべきだとは思うし、もっとこのことについて国民的な議論をするべきだろう、ということに関しては、映画の主張は正しいと思う。
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