劇場公開日 2015年6月27日

  • 予告編を見る

「マカロニ・ウエスタン真っ青 『スモーガス・ウエスタン』」悪党に粛清を kamakiri2006さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マカロニ・ウエスタン真っ青 『スモーガス・ウエスタン』

2016年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

『スモーガス・ウエスタン』 理屈抜き、カンヌがどうたら、どうたら賞がとうたら関係なしで意外とイケる。

なんじゃそれ、『スモーガス・ウエスタン』?

公開から一年以上たって今更解説はないだろうから、以下ほとんどTRIVIA。

御用とお急ぎでない方はスルーがよろし。

北欧製のウエスタンをどう呼ぶのか知らないがIMDBのレビューを見たら、デンマークを象徴する食べ物 SMORREBROD(オープンサンドウイッチ)にちなんで「スモーブロー・ウエスタン」とある。

これは日本でもなじみのスエーデン料理スモーガス・ボード(いわゆるバイキング料理)の延長線上にあって、日本から見ればスモーガスもスモーブローも似たようなもの。

イタリー発ウエスタンが日本ではマカロニ・ウエスタン(西欧ではスパゲッティー・ウエスタン)として定着したように、いずれOOO・ウエスタンとなるだろうけれど、とりあえずここは「スモーガス・ウエスタン」と、勝手に命名。

さて、オリジナル・タイトル”SALVATION”とは、「ある対象にとって、好ましくない状態を改善して(脱して)、望ましい状態へと変える(達する)こと」とWIKIにある通りを実行した男の物語。

「神父兼保安官」など奇想天外な設定が笑わせる。

IMDBによると、本作のロケ地は南アフリカで、製作資金も南ア、イギリス、デンマーク、ノルウェイ、EUからのかき集め。

おもしろいのが、ウエスタンお約束のインディアンが全く登場しないこと。先住民が完全に始末され消滅したあとの設定となって、話が単純明快。

トラブルの発端は ”駅馬車で同乗した見知らぬ他人との「乗り合せ」”がまずかった・・・

そして、展開は ”ヴァイキングに荒らされた古代ブリテンの因縁が19世紀末のアメリカ西部で、移民になったヴァイキングの末裔がこれも移民のブリテンの末裔との間で「目には目を、歯には歯を」の復讐劇として蘇った”ような話なのだ。

いかにも北欧ヌーベルバーグらしい容赦なきバイオレンスの連鎖に圧倒され続けのあっという間の1.5時間。続編が待たれる。

クレディットを見る限り、

Mads Mikkelsen と Eva Green 以外は監督も含めてすべてがOOOOWHO???。

しかし、映画は中身で勝負、例のタランティーノ絶賛の世紀の巨匠監督(笑)デイヴィッド・ミショッドの「奪還者」の腹立たしいほどの大コケもある。だからどうでもよい。

久しぶりに映画らしい映画に行き当たったと言いたい

ミケルセンはは今や注目の成長株で期待を裏切らない迫真のそれぢて抑えた熱演、本人曰く「どんな作品でも一作一作すべてに全身全霊で打ち込むのが身上」だけあってB級ウエスタンの範疇と言われ当然の本作でも手抜きはしない。

エバ・グリーンも本作のための申し子のような悪女を演じて、男性の征服欲を掻き立て男を狂わせるその妖艶かつ浮世離れした歪んだ美貌が「シン・シティー」そのもの。

真っ当すぎるほど真っ当なミケルセンと極め付けの悪女グリーンの結末は見てのお楽しみ。このあとどうなるんだろね・・・と妙な余韻が残るエンディングはB級ならではのサービス精神旺盛。(笑)

あえて言わせてもらえば個人的に物足りない点があって、とうぜん諸悪の根源、巨魁デラルーは最後にミケルソンの復讐の銃弾をしこたま撃ち込まれて一巻の終わりとなるのだが、その前にやけくそになったデラルーの手で例の「神父兼保安官」(実はもっとも卑劣)を地獄に送り込むべきだったと思うが、皆さんどうだろう。

ファンのために更なるTRIVIA。

まず Mads Mikkelsen、日本表記ではマッツ・ミケルセンだが、デンマークでは通じないようだ。

FORVOで検索したら、なんと”マス・ミケスン”(イントネーションはスンの語尾が上がる、「マス・ミケスン?」と尋ねるような感じ)が正しいようだ。

ja.forvo.com/word/mads_mikkelsen/

ついでの私見だが、エンディングの外景パンがまるで絵コンテをキャプチャーしたような稚拙なCG(シーンの必然性さえ無い)で、画竜点睛を欠く結果になったことが惜しまれる。

スケール西部劇ではないのだからハリウッドを意識した壮大なエンディングにする必要はなかっただろう。

観終わって気づいた、これはフランク・ミラーのコミック「シン・シティー」の世界だと。

kamakiri2006