「映画はこの目で見て、何を思い、何を感じたか」不屈の男 アンブロークン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
映画はこの目で見て、何を思い、何を感じたか
ベルリンオリンピック出場後、第二次大戦で日本軍の捕虜となったルイス・ザンペリーニの実話を元にしたアンジェリーナ・ジョリー監督作。
日本公開に至るまでの一悶着は一旦置き、まずざっくばらんに感想を。
壮絶なまでにドラマチックな半生!
問題児、イタリア系であるが故にいじめられた少年時代。
足の速さの才能が開花し、遂にはオリンピックに出場、好成績を残す。
パイロットとして出兵、エンジンの故障により太平洋上に不時着、仲間2人と共に漂流。
47日目、地獄のような漂流生活に終止符が。
しかし、待っていたのは、別の地獄だった…。
日本軍の捕虜となり、虐待、強制労働…。
その酷い仕打ちの数々。
オリンピック出場という目立つ存在だったらか、それとも悪魔との出会いか、収容所所長・渡邊伍長に目を付けられ、人一倍“可愛がられる”。
“敬意”のシーンは戦慄…!
やがて渡邊は昇進で収容所を去り、ルイスも別の収容所に異動、そこで出会ったのが…((((;゜Д゜)))
原作小説では日本人が人肉を食らうなど鬼畜の描写が問題となり、その映画化という事もあって当初は日本公開がボイコットされる事態に。
小規模ながら劇場公開され、やっとレンタルになって、実際見て思った事は…
これの一体何処が反日!?
確かに日本軍は鬼畜の描かれ方。
自分もあの渡邊伍長の蛇のような目を見る度に虫酸が走った。(最もこれは、演じたMIYAVIの憎々しい演技が見事なのだが)
しかし、戦時中の日本軍の悪行は歴史的事実。
だから今も反日なんて感情が根強く残る。
ここで間違えないでほしいのは、当時の全ての日本人がそうではなかったという事。
一般市民は戦争の被害者であり、軍部でも戦争に疑問を抱く者たちも居た。
ただ、ほんの一部、権力や地位を盾にした愚かな輩…。
同じ日本人でも、そんな輩には一切共感出来ないし、戦争が狂わせた…なんて安易な理由で擁護もしたくない。
本作はあくまで、ルイス・ザンペリーニの伝記映画。
そして、監督アンジェリーナ・ジョリーが最も伝えたかったであろう赦しの物語。
あからさまに日本を悪く貶めようとする描かれ方は感じなかった。
ボイコットした連中はこの映画を見た上での意見だったのだろうか。
いや、見てる筈がない。
だって、日本ではまだ公開されていなかったのだから。
見もせず、知ったように文句を付ける。
そういう輩は映画ファンの敵。
文句は見てから言え。
見た上でそう感じるのなら、それは確かな意見。
自分のような反対意見もある。
意見を戦わせる事が出来る。
映画鑑賞最大の醍醐味。
人それぞれ、その映画を見て、何を思い、何を感じたか。
ここでちょっと自分の意見になるが…
こういう映画はちゃんと見せるべきだ。
殊に日本の戦争映画は、美化して涙を搾り取ろうとするものばかり。
当時の悪行を包み隠さず見せ、反面教師的に戦争を考えさせる。
それを妨害しようとする輩は、未だ大日本帝国下に居る。
ルイス・ザンペリーニの不屈の精神。
十字架に磔にされたキリスト如くのあるシーンは胸熱くさせられるものがあった。
その“半生”としては文句の付けようがない。
が、“映画”としては残念な点が。(それ故、採点4にならずに3.5に…)
最も大事な“赦し”のシーンがエンディングにて簡潔に説明されるだけで、劇中にて描かれてない事。
そこはしっかり描かなくちゃダメでしょ!
歴史的事実なのだからしょうがないけど、例えばルイスが長野オリンピックの聖火ランナーとして“凱旋”した時、渡邊と三度再会、渡邊がルイスに土下座し泣きながら懺悔するシーンとか脚色でもいいから欲しかった~!