恋人たちのレビュー・感想・評価
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黒田大輔がいい!
最愛の妻を通り魔に殺された若者、田舎で姑と同居している主婦、ゲイのエリート弁護士と、彼らを取り囲む人達の群像劇。
通り魔への怒りが社会への怒りに変化して自分で生きづらくしてしまってる若者にしても、自他ともに認める才能を活かさずにいるし、暇つぶしに書いている小説を好きな男の前に置いておきながら「見ちゃやだー」と媚びを売るタバコ吸い過ぎ主婦とか、エリート意識が鼻につく弁護士、その他の周辺の人間もロクデナシばっか。共感する部分があるとは言え全面的には好きになれない人達の中で、唯一、若者の上司だけは泣けるほど良い人。
橋口亮輔監督の作品は初めて観たけどクスクス笑えるシーンも割とあり、他のも観てみたいと思った。
でも主婦の夫の変化などは説明がないというか無理があり、またその主婦が繰り返し見ている雅子さま御成婚当時のビデオの中で彼女の友達がスマホを手にしている?けっこう雑なのね、なんて。
じわじわと良くなって来た
最初は色々シーンが変わって行き、わかりずらいので「これが2時間以上か・・」と思っていました。
でも物語が進んでいくと主要な3人を中心にエピソードが展開されていき、ノンフィクションのような映画の肌触りで物語に引き込まれていきました。
3人が身近な知り合いのような気になってしまっていました。
終りの頃には「もっと続けて見たい」気になっている不思議な映画です。
映画ではなくて連続ドラマでも良かったかな・・でも地味すぎてスポンサー付かないのでNHKかなと余計な事まで考えていました。
人と幸せについて
脇役含め俳優陣がとても良かったです。
どれもメチャクチャはまってる。
主人公が複数いて、それぞれ生きにくさや辛さやもどかしさなどなど持っているが、主人公が複数いることで深く感情移入することなく立体的に「生きにくさ」のようなものを感じられた。
主人公がアツシだけだったら辛すぎて観るのは苦しかったかもしれない。
アツシが仏壇にむかって「一緒になってもいいって言ってくれた時に生まれてきてよかったなって」
とつぶやくところに涙があふれた。
人と心で繋がる幸せをとても大切に感じた。
詐欺師に騙された瞳子が呆然としながら結婚の馴れ初めを語る。
彼女はただただ人についていきながら生きてきたように思う。
最初はこの人はバカだなーと思ったけれど、時間がたつうちにバカだなとかはどうでもよくなってきて。
このおばさんも人と関わって幸せを求めながら生きてるんだなと。
人との幸せを考えさせられました。
もういない恋人との幸せはアツシには戻ってこないけれど、笑顔が戻るように祈ります。
ラストの空やチューリップに気分が救われました。
あっと言う間の220分。
橋口監督の作品は1度はみたいなと思っていて初見。上映時間見て気が引けたけどあっという間でした。
立ち直れない人たちのオムニバス。三人三様の人生に明かりが見えない人々の生活がただ淡々と描かれてました。
話は暗いのに昔の日本映画のような重さは感じない。撮影がうまいんだと思う。あと、シーンの変わり具合もうまい。
ラストの立ち治り具合も最高、でした。
タイトルをどうにかできなかったものか
シンプルでつまらなそうな題名をつけることによって、この映画の覚悟を感じるが、さすがにもったいないと思ってしまう。危うく自分自身、タイトルだけでスルーしそうになった。内容が素晴らしかっただけに、余計このタイトルについて疑問を感じてしまっただけなのだが─。
まさに社会の縮図がそこにあり、ひどいドキュメンタリーなんかよりもリアルな日本を感じ取ることができる。
日常を丹念に描きつつ、涙も笑いも怒りも幸せもエロスも醜悪さも、社会が持っている面白いところを全て網羅しているような気がした。
とにかく皆一生懸命につくってるなぁ、そう感じるて、自然と涙・・・。
主演の彼が思いっきり笑ったときが一番泣いたなー。
音楽もしっくりハマっていたし、何より自分が好きな部類のものだったから一層話に入り込んでいった。
東京の水上交通の映像も良かった。見れそうで見れないところ、そして何気に美しかったりするもので、ブルーに染まって見応えあり。
全てにわたって抑えが効いていて、短絡的になることなく、淡々と終結するところが非常に自分には合っていた気がする。
長くて平坦な映画だが、東京物語なみに最後まで飽きることなく観賞できた。
ドラマチックじゃない人間の複雑さ
登場人物(特に妻を亡くした男)の置かれた状況がつら過ぎて、始まるとすぐに、早く終わってくれ〜と思いながら観る。
分かりやすい盛り上がりはほとんどないが、役者たちの恐ろしくリアルな演技に引き込まれて、イヤな気持ちとはウラハラに目が離せなかなった。
今にも感情が爆発しそうなエピソードが積み重なるから、最後にとんでもないことが起きるのでは?という緊張感が続くが、たまにどうしようもない人間のバカバカしい振る舞いにクスリとくる場面もあり、とことん暗くならないバランスが良かったのかも知れない。
これまでの自分とはあまりにも境遇の違う人達の話なので、共感ではなく、いつか自分やその周りに来るかもしれないその時を想像しつつ、そんな中でもなんとかやっていけるのかも知れない、人間ってそんなに単純で弱いもんじゃない、なんてことを思った。
感情的で分かりやすくカタルシスを感じさせる映画が基本的には好きだが、たまにはこういう映画も良い。
日本社会を描いてくれてありがとう
韓国の南北問題を描いたレッドファミリーやフランスに根付く教養の階級社会を描いたアデルブルーは熱い色
アメリカを風刺した天才スピヴェット等。
社会の姿を切り取った名作は沢山あるのに、どういうわけか日本の社会を描いたドラマには最近出会っていなかった。
日本のいまを生きる人々の出口の見えない絶望が、橋口監督の実体験を交えてスクリーンに映し出され続ける。
この映画の舞台である日本は紛れもなく自分達が生きている社会で、登場人物達は自分達の隣人であり、自分達自身でもある。
しかしこの映画は同時にかすかな希望を納得のリアリティで提示してくれる。
橋口監督には、日本社会を描いたこんなにも良質な作品を撮ってくれた事に感謝したい。
人生ってのは筑前煮みたいなもので、この映画も、筑前煮みたいな映画でした。
人生ってのは筑前煮みたいなもので、この映画も、筑前煮みたいな映画でした。
人生の挫折とか、社会の残酷さとか、そういうものを体験してる人なら、ジワっとくると思います。
つまり万人受けする映画なんだけど、こういった煮物みたいな映画に慣れていない人にはハードルが高いと思います。
僕はこれ鬱の時に見てたらきっと号泣してましたね…。いまが辛い人に見て欲しい映画です。
冷たい熱帯魚みたいに、人生ってのはなぁ辛いんだよぉ!と言わない所が、好きです。勿論冷たい熱帯魚も大好きですが。
見てる間は退屈なんだけど、見終わると、一つ一つのシーンが、とても印象深いです。そしてあの登場人物たちにも、実際に会ってきた、そんな感じがします。
あの胡散臭いスナック アムールのおばさんや鶏のおっさん。
タバコを肺に入れないで吸う薄っぺらいおばさん。
人生に絶望している主人公の男。
元左翼で左腕吹っ飛ばしちゃった優しい目のおっさん。
橋下徹みたいに偉そうな弁護士。
調子のいい職場の後輩。
立ちションのバカカップル。
メインから脇役までみんなすごくいいです。みんな一見嫌な奴なんだけど、みんな各々辛く苦しい人生を生きています。
主人公の男は、見えない欠陥を探す仕事です。
彼はトンカチで橋の支柱を叩きながら、自分の人生が壊れているかを確認します。
支柱に大きな×を書いて、全部壊れてるよ、と言い投げます。自分の人生は壊れているんだと。
誰にも感謝されるわけでもなく、客の笑顔も見えない仕事は、辛いです。
だからこそ、先輩に、才能あるんだからさ。なんて言われると、とても救いになります。
食べて、笑えれば、それで良いんだよ。
という台詞にも、とても救われます。
先輩の言葉は、痛みを知ってる人が言える言葉だと感じました。
それは彼の態度や表情にも十分現れています。
Akeboshiの主題歌も良いです。
Usual life。映画の登場人物たちが普段の生活に戻るように、映画を見終わった観客たちに、エンドロールで「Get back to usual life」と語りかける感じです。
オリジナル版は、安倍さんのアンダーコントロールスピーチをサンプリングしています。是非聞いてみてください。
劇場を出た後、世界が少し変わって見えました。今年の邦画で一番感動しました。
良いダメ 悪いダメ タチの悪いダメ
映画の内容自体は、この手の作品の題材で使われるような出来事であり、救われないという意味では往年のATG映画のようでもある。但し、そういう映画自体が少なくなっている現在に於いては希有な作品として評価されてもいいと思う。
社会の厳しく、苦しく、絶望的ですらある事実に、否応なしに巻き込まれそして堕ちていく生活の破綻に、それでも自ら生を終わりに出来ず、藻掻き、足掻き、益々沈んでしまう負のスパイラルを人間はどうやって乗り越えるのか、否、乗り越える必要があるのか、そうやって生きるという『地獄』をやり過ごすきっかけを掴むのが、作品としての締めである。
強い感動はない、感嘆もない、静かに静かに沁みる映画である。
浅ましく、だらしない、そしていて強く逞しく過ごす人間に称賛を送っている監督の気持ちが強く刻まれているのを、ジワジワと心に入り込む。
切ない、非常に切ない、そしていて、それでも生きようよって、元全共闘の片腕を爆弾で吹き飛ばしてしまった上司の存在、その役がこの作品を言い表しているような・・・
やたらと評判が良いから観たけど、何が良いのかさっぱりわからなかった...
やたらと評判が良いから観たけど、何が良いのかさっぱりわからなかった。ダメダメな3人のオムニバス形式だが、ダメなまま終わってしまう。自分はダメな人に厳しいのだろうか。全く感情移入出来ない。
シーンがころころ変わって初め意味分からないが、徐々に意味が分かって...
シーンがころころ変わって初め意味分からないが、徐々に意味が分かってくる群像劇。弁護士さんが一番共感したかな。自分が望んでも、どうにもならないんだよね。
後、素敵な役者が何人かいた。会社の先輩、会話もない献身的な奥さん、弁護士も好青年そう。
恋人たち
『それでも人は生きていく』がタイトルのほうがしっくりくる気がするけれど、ある意味、確かにラブストーリーな気もする。
期待しすぎたせいか、絶賛とまではいかないが良作ではあると思う。
実際にこういった出来事は身近で起きていてると思うんだけど、考えれば考えるほどリアルなのかそうでもないのか、ちょっとわからなくなってしまう部分も…
ラストは、それぞれに、少なからず小さな光を見つけられた感じでよかった。
それでも人は生きていく…
片腕のおじさんの存在が一番ぐっときた。
ウェルメイドの対極にある訴求力
妻を通り魔に殺害されたアツシと、
姑とも夫ともしっくりこない瞳子と、
親友への密かな思慕を偏見によって奪われた弁護士のお話です。
悲しみと絶望と、ほんの少しの希望が、荒々しく突きつけられる映画でした。
見易さや、行儀の良さや、受けの良い美しさから遠い映画です。だから私の生きる世界にとても近く思いました。
アツシが黒田に怒りを吐露するシーンは、やっと誰かに話せたね、ゆえゆえ!という気持ちと、アツシの怒り、悲しみが流れ込んできて涙がこぼれました。
アツシは不器用ですね。不器用な人って周りのフォローがないとこんなに生きづらいのか、と愕然としました。アツシが悪いわけではないのに、そのうまく行かなさについついアツシを叱責したくなりました。
がんばって人に伝えようと誰もいない部屋で一人語りをするアツシ、弁護士にがんばって伝えようとするアツシ。でも、本当に内容が拙くて、気持ちは慮れるけれども、つたない言葉で、弁護士に華麗にスルーされる感じがリアルでした。
あれ、台本通りなんですかね?すごいなぁ、あんなセリフかけるなんて、すごいなぁ。整った文章を書けて、物語を構成できる技量がある上であの表現でしょ?すごいなぁ。
黒田がよかったです。黒田がとても救いでした。私は誰かの黒田になりたいです。黒田のそっと寄り添ってくれる感じが、とても救いに思いました。あめちゃんをくれた女の子もよかったですけどね。
痛々しさに目を背けるシーンが多数ありました。特にパート主婦の言動に、とてもよく知っているから見たくないものを見たきがして、何度か目をそらしました。
気まずさです。
恐らく彼女に自分を見たのでしょう。
ラストに提示された瞳子の希望は、夫からの関心のようでしたが、あの交わりで本当にいいのか?と思いました。
つか、常備しなさいよコンドーム。今時自販機て…見たことないわ。もう少しコミュニケーションとしての性交渉があるならいいですが、あの夫とのそれは生きてる穴扱いじゃないですか。夫がしたいときに跨るだけって…
瞳子が訪ねてきた光石研に絵を見られて、見ないでーきゃーみたいなことしてるのが腹たちました。オバハンの出す声ちゃいまっせと思いましてね。
もっと生きやすくなる方法あったやろうし、なんであんな夫と結婚してられるねんとか、鶏をしめたとこがどうおもろいねん、鍋でその肉つつきながらしめた話するなよなどなど、瞳子にはイライラしました。
夫からの平手打ちはかわいそうでしたが、なぜ別れないでいられるんだろう。
弁護士はあまりいい人間ではないです。すくなくとも私は苦手なタイプです。アツシを見下した態度や、恋人を人前で愚妻扱いするところなど、尊大で男尊女卑的な嫌いな人の典型です。
笑顔がまた胡散臭く(小沢健二をすこし今風にしたような…)嫌でした。あの笑顔は仮面とわかっていても、むかっとします。
彼の被った理不尽は、ずっと思慕していた友人を、その妻の偏見から失ったことです。明らかなる偏見からの差別で、お気の毒なのですが、君はちょっと自分の行いを改めた方がいいよ?と思いました(子供の耳たぶを触った件ではなくね)。
足の怪我も明らかに突き落とされてましたからねぇ、恨まれてるんでしょうね。
脇役が実力派揃いでした。
偏屈姑役の木野花(歩き方がすごく年寄りっぽくてメガネ会計ばばぁの面影なし←褒めてます)、
ヤバイ人役の光石研(注射打つシーンのマトモからの逸脱感はすごかった…)、
ヤバイ人②役のリリーフランキー(人の話を聞かずに煙に巻く話術がうさんくさかった←褒めてます)、
美人水って何よ?な、安藤玉恵(皇室詐欺うけたw)と、
なかなか揃ってます。皆さん見るものの心をガリッと引っ掻いてくれました。
あ、忘れてた、山中崇もだ。この人も尊大でしたねぇ。行政、公務員というやつのいやーなイメージそのものですわ、あの態度。
で、名の知れてない人も、いい爪痕を残していました。
アツシの後輩のうるせーばか男子と、
部落(って言ったよね?)出身を隠して結婚した旦那と別れたいという女子アナ(ムカついた←褒めてます)が、
インパクトありました。
女子アナの人は、見たことある顔だけど名前がわからん人でした。
他にも言いたいことは一杯あるんですが、すごく長くなりそうなのでこの辺で…
地味なのに飽きさせない
地味なストーリーなのに、飽きさせないストーリー展開は、まさに職人芸。
主人公たちに感情移入はできないが、傍観者の視点で淡々と眺めることで、人の人生のヒトコマを面白く、哀しく、感じとることができる映画。
じわじわ
劇場満席、立ち見も出るくらいだったので驚きました。
観賞した直後より時間が経過した後の方がじわじわくる映画だと感じた。
エンディングに明確な救いがある訳でもない、それでも呑み込み受け入れて生きて日常は続いていく、その中に光を見出だせる瞬間がある、ということなのかな、と。
語り口の3人を取り巻く人々もそれぞれ何かしら抱えているのを匂わせてくる感じで、全て語らないところがまたよかった。
それでも生きて行く
メジャー作品では表現しにくい感情の剥き出し具合が凄く、橋口監督らしさ全開で安心しました。
現代を生きる自分たちにとって目を背向けたくなる様なシーンが多く、社会的弱者を強制的に目の当たりにさせられるのは正直胸が苦しくなりました。
それでも絶望せず、踠きながらも明日も生きて行こうとする主人公3人に感情移入してしまう手腕は名監督たる所以だと思います。
終盤、妻を亡くしたアツシが上司の黒田に溜まりに溜まった怒りや悲しみの感情を吐露するシーンは涙腺崩壊必死です。
こんなにリアルで悲しみに満ちたワンシーンは、近年の甘ったるくて虫酸の走る様な邦画ばかり見ている方にこそ見て頂きたい名場面です。
かの淀川長治氏が橋口監督を「人間のハラワタを掴んで描く人」と評してましたが、正にその通りの内容です。
この時代の「今」を生きる人に劇場でリアルタイムに観て欲しい映画です‼︎
(自分は映画関係者ではありません笑)
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