恋人たちのレビュー・感想・評価
全96件中、41~60件目を表示
バランスの悪い肩透かし映画
ほとんどが知らない役者ゆえか生々しく迫ってきた。
しかし、説明過多が目立った。説明が感動のオチになるのは興醒める。
また逆に、道具を散りばめたが、散りばめただけで消化不良も目立った。
つまりバランスが悪い。
抑えられた感情がどう炸裂するか、をたのしみにしていたが、
この監督特有の、演者自己陶酔に終った。
生活感がリアルで重い群像劇
横浜シネマリンで2016/02/08に鑑賞。
タイトルからして恋愛物っぽいと思って観たら、それぞれ重い悩みを抱えた3人の生活感溢れる群像劇だった。
妻を通り魔に殺された男、篠塚アツシは基本的に真面目だし、妻を真剣に愛していたいい奴なんだが、相談された弁護士にとっては無茶な思い込みで無理な裁判を起こそうとする困った依頼人。篠塚アツシの職場の先輩の黒田大輔がいい人でこの映画の唯一の救いだったなあ。
弁当工場パート主婦の高橋瞳子は要領は悪いが誠実で人はいい。だが家庭に問題ありとはいえ、不倫して駆け落ちまでする寸前だったのに、その相手がシャブ中だと知るとしれっと家庭に戻る強かさも持ち合わせている。
若手弁護士でゲイの四ノ宮、彼は同棲している若い恋人をぞんざいに扱いつつ、高校の頃から好意を持ち続けている相手には迷惑をかけないように誠実に対応している。また精神状態が不安定だと依頼人にもぞんざいになったりするムラっけのある性格。3人の主人公の中では一番クズかも?w本気で好きな相手には誠実なのが唯一の救いかな?彼の生活環境も唯一、生活感ないし、他の主人公とはちょっと異質。
それぞれいいところもあるし黒い部分も持ち合わせている、そんな生々しい人間描写が良かった。
ラストもそれぞれの悩みがスカッと解決するような終わり方ではないけど、一筋の光のようなものを示して終わる。現実もそうなんだよね。やけにならずに地道に前に進むしか無い、きっとそれしか無いんだ、そう思わせてくれた。
エール
観ていて苦しくなることもありましたが、大切なことを描いている作品だと思います。
『腹いっぱい食べて、笑ってたら、人間なんとかなるよ。』このセリフと表情が頭に焼きついて離れません。
現代を生きる人へのエール。
次に橋口監督が作品をつくるときは、どんな世の中かな…
人生の5年ごとに観返したい一本。
監督舞台挨拶ありでの鑑賞。
まさに「普通の人々の物語」の一本。
観ていて痛い、苦しい、息が詰まる。
それは主人公三組が決して突飛な人間ではないから。
誰もが抱える「日常の当たり前」と化したルーチンワークの中の行き詰まり。
そこ破ろうと少し足を踏み出す、そんな人たちの話。
三者三様、いろいろな痛み。
でもこれは特別なものでなく、日々生きていれば誰もの中にあるものだと自分は思う。
「自分は特別ではなく、また他人も特別である。」
禅問答のようだが、そんなことを感じた。
劇中に「救い」は用意されているのだが。
それを噛み砕いて観られるほど、個人的に抱える問題はまだ溶けるのに時間がかかるんだなと感じた作品。
「たった一人でいいんだよ」という監督の言葉と。
劇中、携帯のメモリを見ながら主人公がつぶやく
「昔友達だったあなたたちは、いまもともだちですか?」
その一言が忘れられない。
息がつまる
無差別殺人で妻を亡くし、毎日を生きるのが苦しい被害者遺族男性。夢とはほど遠い、退屈な毎日をおくる田舎の主婦。周囲から愛想をつかれるゲイのエリート弁護士。毎日を苦しみながら生きる3人のストーリー。
不器用な3人の負の日常のループ。加えて、何か不幸が重なり一度、階段から足を踏み外すと軌道修正を許さない社会。
自分自身が感じる今の日本の生きづらさや空気がそのまま切り取られていて、見ていてすごく息が詰まった。
悪い人じゃないけど気の合わない同僚、職場の程度の低いバカわらいと疎外感、変なトーンの喋り方……リアリティあるシーンが物語に現実味を与える。
俳優はこれが演技なのか、と疑うほど自然な語り口、ふるまい。聞き取れないセリフもあるほど。ドキュメンタリーを見ているような気持ちになる場面も。
橋口監督が描く繊細な空気感はヒリヒリ痛く、辛く。こんなに空気感というものが映像化できるのか、と舌を巻く。
繰り返し出てくるセリフ『くだらない世の中だけど生きていくしかない』これが映画のすべて。くだらない世の中だけど前へ進もう、いつもの優しいラストで救われる。
不器用な男女の群像劇
悩みや迷いを抱えて出口が見えないと思っている中で、身近な人に案外すんなり救われることもある。映画の軸になる3人もそう。目先のことから一生懸命やっていれば、それを見ている人は必ずいるのです。
映画に華美な感動はない。描かれているのは極めて控えめな希望ですが、それがあるから人は心を支えられて生きていけるのだと思います。
商品としてどうか
普通の人たちの群像劇。批評などを読むと、現代日本社会とそこに生きる「私達」をリアルに描いている、ということになっている。
私には全くリアルに思えない。
まず、主演俳優達の演技がつたない。そのつたなさが役柄の不器用さとかぶって見えるという印象はあるけれど、芸としての上手さが感じられない。リズムも良くないし、セリフの抑揚もなく、くどく聞こえる。
自分の伝えたい事を伝えるために創作したものは、あくまで作り物であって、現実としての力はもたない。素人同然の役者を使っても、ドキュメンタリーっぽい物にすぎない。役者そのものを描きたいならドキュメンタリーにすればいい。
テーマも「そもそも生きてくってそういうことじゃない?」という問題で、日本社会の問題を掘り下げているようには思えない。
全体に監督が感じていることを詰め込んだという印象で、お金をとるなら商品としてもっと整えてほしいと感じた。
不思議な気持ちになりました。わくわくするわけでもなく、単調なんだけ...
不思議な気持ちになりました。わくわくするわけでもなく、単調なんだけど、でも、最後までずっと集中して見続けました。この映画は面白い。悩み深いな。みんな。と思いました。
なんか不幸な気分
評判の映画で、人の入りも上々。
ここででの評価も良いのですが、私には面白くない映画でした。
何かが得られたわけでも無し、感動したわけでも共感したわけでも無し。
しかも美しい映画と言えない・・・・し
思おうがままにならない世界を描きたかった?
観た後、不幸な気分になりました。
しかし、力強くて人を引き付ける力がある映画であるのは事実です。
それでも頑張ろう!
人対人の付き合いを濃くしようと動き始めた矢先に見た映画。
「そうそう、人付き合いってこうだよね〜」と、スクリーンに映る泥臭くてどうしようもない生きづらさを、ある種、懐かしみながら見ていられたのが序盤だけ。それぞれの生きづらさが徐々に色濃くなるに連れ、自分のダメさと重なることが多くなった。ラストシーンが今後の自分を写してしまうようで、このままどこまで堕ちて行くのだろうと心配になった。
でもそれでもなんとか生きていく。
ダメでもいいさ、いいこともある。
ラストシーンの空と笑顔、
そしてエンドロール後の風景が
清々しい余韻を残した。
あまり考えすぎず、自分らしく人と接する勇気をもらった。
いいタイミングでもらった希望。
つらい気分になる
女性も男性も負の側面ばかりが描かれていて、誰も魅力的に見えなかった。
特に奥さんを通り魔に殺された人は、犯人を死ぬほど憎んで国民健康保険を滞納するほど弁護士を当てにしていて、「自分はバカだから」と弱音を吐き、自殺未遂するほど苦しんでいた。見ていてつらかったのは、彼には勉強して自分で裁判を起こす覚悟も、殺人術を見に着けたり、殺害の方法を練るなどする覚悟がないところだ。「罪は罪であり、彼には立派に更生して社会に戻って欲しいです」とほほ笑んで話して、本心は誰にも言わず、犯人が自由になったら殺せばいいのにとしか思えなかった。
服役や死刑が怖いのだろうか。自分を安全な場所において石を投げようとしている態度にイライラして、そんな人の愚痴を見るのが苦痛だった。
更に彼の身近には軽はずみに天皇を殺害しようとして、腕を失った人がいる。その人の苦悩たるやどれほどの事だろう。そんな狂人を近くに置くことで、彼の立場を相対化しているような表現はどんな意図なのだろう。彼によりそった表現なのか、突き放した表現なのか、意図がよく分からなかった。全体的に辛辣な目線での表現なので、突き放していたのかなと思った。
川をボートで移動する描写の爽快感が素晴らしかったし、彼には天才的な橋の点検能力がある。周りの人も優しかった。舞台設定が東京なのか田舎なのかよく分からなかった。
スナックのおじさんと不倫するおばさんが、野ションしたり、雑におっぱいを見せたりと、とんでもない役だった。
立ちションするデート中のカップルが、女の子がブスなんだけどニコニコしていてかわいらしく、とても楽しそうだった。この映画で唯一楽しそうな場面だった。
個人は描けたが、世間は描けてないのでは・・・
『ぐるりのこと。』以来7年ぶりの橋口亮輔監督作品『恋人たち』は、今年、一・二を争う注目作品。
前作『ぐるりのこと。』では、夫婦の物語を通して、日本という国全体を文字どおり「ぐるり」と見廻した。
謳い文句の「それでも人は、生きていく」というのも心に引っかかる。
さて、そんな期待を胸に、映画のこと。
主人公は三人。
橋梁の安全点検作業者のアツシは、数年前、通り魔に妻を殺害された過去を持っている。
夫と反りの合わない姑と三人暮らしの主婦の瞳子は、弁当をづくりのパートをしながら、退屈な日々を送っている。
同性愛者の弁護士の四ノ宮は、相手を見下していることを悟られ、同棲相手から別れを切り出されてしまう。
そんな彼らが、居場所を求め、居場所を探し、自分の気持ちと折り合いをつけて生きていく、そんなハナシ。
主人公の三人を演じるのは、これまで演技経験のない、いわば素人。
橋口監督とのワークショップで、役作りをしたという。
彼らが表現する感情は痛いほど伝わってくる。
自分の気持ちは、どうしたら他人が判ってくれるのだろうか。
自分は、不当に扱われている(しまっている)のじゃなかろうか。
自分に居場所なんかないんじゃないか。
なんだか、あまりにも理不尽な世の中だ・・・
そんな感情が吐露され、爆発する。
たしかに、そういう気持ちはわかる、そういう気持ちになることもある。
しかし・・・
そういった「自分が」「自分は」ばかりを見せられると、観客としてツラくなる。
『ぐるりのこと。』もツラいハナシだったが、夫婦ふたりに感情移入したり、自己投影したりして、そういうことで「ぐるり」と世間が見えたけれど、この映画ではそれが見えない。
なんなんのだろうか、この違い。
考えてみると、主人公三人を取り巻くひとびとのエピソードが薄っぺらいからではありますまいか。
特に、かなりの尺を割いて描かれる瞳子に絡む光石研と安藤玉恵のエピソードが作り物めいている。
そして、ふたりが演技すればするほど、ハナシが嘘にみえてくる、世間が嘘にみえてくる。
そういうように見えてしまうと、「自分が」「自分は」といっている主人公三人の感情の吐露も爆発も、うまく受け取る(受け容れる)ことができなくなってしまった。
個人は描けているが、世間は描けていない。
『ぐるりのこと。』とは、そこが大きな違いでしょう。
とはいえ、やはり今年一・二を争う注目作品ということは変わらない。
悲惨な愛にも輝きの瞬間はある
ドキュメンタリータッチの映画だが、悲惨な恋愛事情の人々がなんとも痛い。
にぶい生活と色褪せた愛、ただれた愛。
タイトルからくる明るいイメージは一切ない。
わかるけど、共感したくない世界。
微妙な作品ですな。
心の距離を映すカット
人の不幸は蜜の味などと言ったりもするが、この言葉の主はまだ他人の不幸に関心があるということになる。ここに登場する人々はその不幸を周囲の人に分ってもらうこともこともできずに、苦しみを抱えて生きている。
生きていれば辛いことや、理不尽な境遇に陥ることもある。しかし多くの場合、そうしたことが人生を崩壊させることに直接つながらないのは、周囲にその苦しみを理解する存在があるからだ。
人とは不思議なもので、同じ苦しみでも、人に理解を示されたり、苦しんいる姿を受け入れてもらえるだけでそれを乗り越えていくことがある。
そのようなものから見放されていたが、少しずつ取り戻していく男性と女性を一人ずつ。そのようなものに包まれていたつもりだったのに、突然失ってしまった男性が一人。そのようなものをはじめらから信じてはいない一組の男女が登場する。
とりわけ印象深いのは、「雅子様フィーバー」の時にTVに映った時のビデオを繰り返し観ている主婦である。そのビデオに映る若いころのその女性と雅子様、そのどちらも今は失われてしまった快活さや明るさに溢れている。その映像を夜中に虚ろな目で眺めている彼女の心の中にはどのような寂しさがあるのだろうか。何度か繰り返されるこのビデオのシーンだけでも十分にドラマチックだ。
もう一つ印象的なシーンは、妻を殺された男性が職場の女性との会話で、女性の母親が夕食に招待していることを伝えるというもの。
この瞬間に、この男性の周囲に誰もいなかった世界の半径が一気に縮まる。その距離感が、彼の飲んでいた缶コーヒーの上に、彼女が置いていったキャンデーが表していて、観ているこっちがホッとできる。冷たい孤独が温められて溶けていく様をスクリーンに切り取った素晴らしいカットだ。
一気に橋口監督のファンに!
当たり前の日常のなかにある生きづらさが少しずつ、少しずつ明らかになってゆきます。序盤は客観的に観ていられるけど終盤はこちらまで息が苦しくなってくるようで完全に映画の世界に入り込んでいました。主人公の悲痛な「駄目、駄目!!」のシーンは悲しい気持ちが溢れて、辛かった。
ふえるかわめとか、ヒステリック弁当屋、女子アナなどの小ネタも面白くてついニヤニヤしてしまいました。演技、間が完璧すぎて。
シュールなのが好きな方にオススメです。
全96件中、41~60件目を表示