「Ari Folman監督が描く近未来の世界はdystopiaなのか、それとも…」コングレス未来学会議 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
Ari Folman監督が描く近未来の世界はdystopiaなのか、それとも…
前半は痛烈な現代マスメディア(とくにハリウッド業界)批判、後半は一転してアニメーションを通じてドラックとXRに覆われた近未来の世界を描いている。
そこでは人びとがなりたい人物になりきることが可能な世界であり、他人とのコミュニケーションも問題なくできて、容易に自己実現が可能な世界。
大半の人びとは拡張現実の世界で生きているが、一握りのエスタブリッシュ層だけがまさに「天空」の世界で現実世界を生きている。
極端な所得格差で分断された社会と「見たいものだけを見る」世界はすでに今ここに在る世界であり、この作品で描かれている世界はその延長線上に過ぎない。むしろその社会課題の解決策を提示しているともいえる。
この作品で描かれている世界はディストピアなのか。近未来の向こう側からみれば、こちら側の現実世界がディストピアとみえなくもないのではないかと。
向こうにみえる景色がディストピアかユートピアかはそれぞれの主観的価値観にもとづくものであり、ヒトの主観的価値にもとづく課題はTechnologies によって十二分に補完できるというのがPeter A.Thielの主張で、その主張は直接間接問わず社会に受け入れられつつある。
この作品を通じて、私たちはこれからどのような社会を迎えたいのか、個人個人が考えて周りの人と議論することは決して無駄なことではないと思う。
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