セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターのレビュー・感想・評価
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最も善良な人
主人公のブラジル出身のセバスチャン・サルガドさんはユージン・スミス賞をはじめ世界中の主要な写真賞を受賞している名写真家だそうですが不勉強にも本作で初めて知りました。
冒頭の巨大なシエラ・ペラダ鉱山に群がる5万人もの労働者を俯瞰でとらえた写真に先ずは理屈抜きに圧倒されました、只者ではないことは咄嗟に理解できましたが、元は経済学の博士号迄持つエコノミストで写真を撮り始めたのは奥さんのライカを借りてからと言うからずいぶん遅咲きの巨匠だったのですね。
本作は2009年セバスチャン65歳の時に息子のジュリアーノ・リベイロ・サルガド35歳が父の撮影旅行に同行することで撮り始め、2011年に映画化をヴィム・ヴェンダースに持ち掛けたそうです、ヴェンダース監督はスタジオにセバスチャンを座らせ彼が写真集の中からピックアップした写真の撮影当時の回想を語る様子をマジックミラー越しに撮影したそうです。
湾岸戦争でフセインが油田に火を放ち必死で消火に当たる人々を撮った写真はまさに戦場カメラマンでもありました。
映画の中盤を占める内戦で国を追われ虐殺される難民や飢餓に苦しむ人々の写真の数々はまさに地獄絵図で観るのがとても辛かった。
映画には出てきませんでしたが、1981年、セバスチャン37歳がまだ駆け出しのカメラマンだったころレーガン大統領の襲撃に居合わせ撮った写真が世界中に売れ、25万ドルも稼ぎ、そのお金でアフリカへの取材が実現し社会派カメラマンとして大成したらしい。もっとも、世界の惨状を撮り続けることに挫折、その後は自然派カメラマンに転向し老いては妻と共に故郷の緑化再生に尽力していました。
タイトルの地球へのラブレターというのは後年の自然派に転向してからのことでしょうね、原題のLe sel de la terre(地の塩)は新約聖書の一説からとった社会の中で最も善良な人の例え、またサルガドとはポルトガル語で塩辛いという意味でもあるそうですから、まさに主人公のことですね。
セバスチャンの偉業もさることながら陰には必ず妻レリアの支えがあったのですね。写真集もともかく波乱万丈のヒューマンドラマと言っても良い傑作ドキュメンタリーでした。
彼の答え。
africa
exodus
work
genesis
彼は世界中を旅し、写真を撮ることで飢餓や難民、紛争など様々なヒトの問題を提示した。いうなれば代弁者のように。
旅を続けていくうちに撮る対象・目的が変化し、そのつど彼なりの課題と答えを導き出していてすごいと思った。
アフリカの紛争で大量虐殺された人々がゴミのようにブルドーザーで運ばれる写真には、ショックを受けた。そんな状況をこの映画で知れただけでも、知ることしか出来ないかもしれないけど、観てよかったと思った。
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