「執着を捨てる旅」わたしに会うまでの1600キロ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
執着を捨てる旅
クリックして本文を読む
1600km歩いたその道程を描いた映画。
人によっていろいろな受け止め方があると思う。
あの母親は、理想的な母親みたいな感じもするけど、なにかひっかかる。
そのひっかかるところに主人公はイラついていたのかも知れない。
母親を強く愛すると共に嫌ってもいて、嫌っていたからこそ、母が亡くなったあとに立ち直れないほどの激しい罪悪感に苛まれてしまったのかも。
あまりに巨大な母親の愛は、人を支配してしまう。死んだ後でさえも。
主人公の変化が象徴的に描かれるシーンがたくさんある。
スタートするとき、馬鹿馬鹿しいほどの巨大な荷物を背負い、それを意地でも運ぼうとする。
旅の途中でアドバイスされ、荷物を減らすことを覚える。
旅の最後では、スタートとは見違えるほどの軽くなった荷物を軽快に運ぶ。
必要なくなった本は燃やせ、とアドバイスされるが、がんとしてこばむ。
しかしそのこだわりはいつか消え、平気で燃やせるようになる。
ビーチに行くたびに書いていた元夫の名前は、書かなくなる。
元夫からの荷物や手紙も気にしなくなる。
これらは全て、主人公が抱えていた執着を徐々に手放す過程のように見える。
そして、最も重要な執着である、母親の愛。それは、野狐に象徴されているように思える。
主人公は偶然出会った野狐に、愛を求める。しかし狐は逃げ、主人公は絶叫する。
旅の最後、現れた野狐を、もう主人公は追うことはしない。逃げるなら、逃げるままにする。
ありのままの自分を受け入れ、ありのままの世界を受け入れる。その末に、自然な活力と他人への思いやりがあふれてくる。
なんだかまるで仏教の教えのような映画に見えた。
コメントする