「現実 対 虚構の真意。」シン・ゴジラ YAMATOさんの映画レビュー(感想・評価)
現実 対 虚構の真意。
この映画、日本映画にしてはハイクオリティな映画だった。
例えば政府。
ゴジラ上陸時の緊急有識者会議、閣僚会議、形式的な会議などの描写。
これは、民主主義の負の面をリアルに写しているシーンだ。被害が拡大する中、閣僚会議をしない限りは水際の対策、また記者会見すら開けないというのは現実世界で実際に起きた際もこうなるのではないかと思う。
また、なんと言っても自衛隊の描き方。これも実にリアルだ。
ゴジラを自然災害として有害鳥獣駆除の名目で自衛隊を派遣するか。国、または国に準ずる組織として、防衛出動を出すのか。
現実では自然災害と捉えるのが妥当だろうが、劇中の微妙な駆け引きに私はリアリティを感じた。
あと、B-5作戦(タバ作戦)の描写。
綿密な計画を練り、10式戦車、対戦車ヘリコプター(Apache)、F-2等を主力とし、完璧な順序で作戦を進行。結果的に失敗したが、自衛隊の作戦成功への精度の高さに改めて感心した。
しかし、私が一番感激したのはゴジラの描き方だ。
人類の知識を凌駕する体内構造。人類への物理学的な可能性を示唆する福音。体内新元素。環境に適合するための進化。第8形態まで形が変わる様(さま)。
もはや神話の領域だ。1954年にはこんな映画は描けないだろう。また、庵野秀明監督にしか出来ないであろう。
また、ゴジラと政府対応の描写は3.11を彷彿とするシーンだと認識している。
ゴジラを3.11、政府を当時の民主党政権と考えれば分かるだろう。あの描き方は7年前と全く同じだった。さすがとしか言えない。
しかし、知識が無い人がこの映画を見たら初見殺しも甚だしいだろうw
ゴジラの体内冷却システムの強制停止の仕組み、元素変換能力、それを阻害する極限環境微生物の分子式などのシーンは専門的な用語が沢山出てきてわからない人も多かっただろう。私は、幸いその知識をかじってたので理解は出来たが、知識がない人は大変だっただろう。
しかし、あえてこのような描写を入れることによってこの映画がよりリアリティになったのは違いないのでそこら辺も高く評価したいと思う。
あとはなんと言ってもヤシオリ作戦のシーン。
無人在来線爆弾。無人新幹線爆弾。イージス艦ヒューイからのハープーン攻撃。誘導爆破、定置爆破。特殊建機第一~第三小隊。
どの描写をとっても文句のつけようがないシーンだったと言える。また、バックで流れてる伊福部マーチと相まってとても興奮し、好奇心が擽られたシーンだった。
ゴジラ ニッポン
現実 対 虚構
「日本は今後、ゴジラと共存していくしかない。」
「私は好きにした。君らも好きにしろ。」
これらはとても考えさせられる副題、台詞だったと思う。