「映画『あん』で吹く風…大切なものは見えない(松本隆)」あん オガサワラマコトさんの映画レビュー(感想・評価)
映画『あん』で吹く風…大切なものは見えない(松本隆)
作詞家の松本隆さんは、
「風は目に見えない。人間って、凄く大切なものは必ず目に見えないんですよ。目に見えるものはそんな大したものではないな、お金とか地位は目に見えるんだよね。あと風は動いている、暴れるとすごいことになるし。また、動物が危険を察知するときは、風の中に匂いが入っていて嗅ぎとる。今でいう情報みたいなものが風に含まれている」(「インタビュー『ことば』を風に乗せて世界へ」慶應塾生新聞)
「重要なものは見えない。重要であるほど目に見えない。水も重要だが、見える。見えないものは存在しているのかどうかわからない。それが人間にとって重要なのだと思う。海も河も雨も好きだけれど、水は見えているのが残念だ」(『松本隆のことばの力』インターナショナル新書)
と仰います。
吉井徳江(樹木希林)の言葉、東京郊外の風景、四季折々の樹々の動き、そして風の音…
永瀬正敏、樹木希林、内田伽羅、浅田美代子(敬称略)たちが織りなす時間を、まるでドキュメンタリーのように感じて引き込まれてしまいました。名演技!なんて安直に評したくはない表情、見事な編集!と片付けたくはない音や映像の繊細な表現が、本当に素晴らしい作品です。
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