劇場公開日 2015年8月8日

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「終わらせることの難しさ。」日本のいちばん長い日 TSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0終わらせることの難しさ。

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

過去鑑賞作のレビュー(レンタルDVD。2023年5月頃)。

同じ原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」とどちらを先に観たのか記憶が怪しいが、本作の方が数ヶ月前であったと思う。
歴史探偵こと半藤一利原作ノンフィクションの映画化2作目。私の昭和史の先生は半藤一利先生。残念ながらお亡くなりになったが、本作の原作も含めまだまだ読んでいない作品も多いので、これからも読んでいこうと思う。

さて、この映画であるが「ポツダム宣言受諾の裏でこんなことがあったとは知らなかった!」という衝撃を受けた。2・26事件未遂のような出来事があったとは。映画は、戦争を題材にしたものだが、残虐な戦闘シーンはなく、薄氷を踏むような駆け引きが展開されるサスペンスドラマのようである。
驚きの史実を描くストーリーもさることながら、昭和天皇を演じる本木雅弘、阿南大臣を演じる役所広司、鈴木首相を演じる山崎努の3人の演技が素晴らしい(松坂桃李の純粋な狂気も良い。しかし、それ以上に3人が良かった)。

始まった戦争は終わらせることが本当に難しいのだと改めて考えさせられる。劇中の台詞にもあるように、終わらせる役割は「貧乏くじ」なのだ。始めたのが自分でなくても責任をとらされるから。それでも、最終的にその貧乏くじをこの3人はそれぞれの形で引いたのだ。
最も重い責任を背負ったのは昭和天皇であろう。本木雅弘が当初この役を引き受けるのをためらったという話を聞いて、それはそうだと思った。しかし、本木雅弘の演技は迫真にせまるものがあった。そこに「人間」としての昭和天皇を観た。
また、侍従として天皇の側で仕えたことのある鈴木、阿南両名も大変な覚悟を迫られた。特に鈴木は「聖断」を迫る役割を担った。ある意味、こんにちの日本があるのは彼のおかげと言えるかもしれない。山崎努は人生最後の大仕事をする首相、役所広司は組織のトップとしての責任の取り方と家族愛を見事に演じていた。

非常に短い期間の濃密な出来事を速いテンポでまとめていく撮り方は原田監督お得意の手法(あるいは癖?)なのだろうか。ある程度の知識がないと、登場人物達の会話や行動の意味、背負うものが理解出来ないまま置いて行かれるかもしれない。万人受けする映画とは言えないだろう。
劇中に登場する昭和天皇、鈴木貫太郎(元侍従長。海軍軍人。2・26事件で襲撃を受けた)、東条英機(元首相。陸軍軍人。戦争を実質的に始めた政府首脳の1人)、阿南惟幾(元侍従武官。陸軍軍人。)、米内光政(元首相。海軍軍人。良識の人)。彼らがどういう人物であったかを知っていると、ぐっと見方も変わると思う。

結論。戦争をやっていい理屈などない。終わらせるのが難しい戦争なんて、絶対に始めてはいけないのだ。

TS
みかずきさんのコメント
2024年2月2日

共感ありがとうございます

機械があれば、是非、1967年版を御覧になって下さい。
太平洋戦争が時代とともに風化していくのがよく分かると思います。

では、また共感作で。

ー以上ー

みかずき