劇場公開日 2016年9月17日

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「それぞれの怒りが心にズシリと重くのしかかる」怒り スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それぞれの怒りが心にズシリと重くのしかかる

2016年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

まあとにかく重たかったですが、でも物凄く見応えのある映画でしたね。
主軸は人間ドラマだったとは言え、サスペンスとしても十二分に堪能できる仕上がりになっていて、2時間22分飽きることなく映画に没頭することが出来ました。
同時進行で描かれた直接繋がりのない千葉、東京、沖縄それぞれのエピソードの見せ方も絶妙で、音だけ先に聞かせて別の舞台のシーンへ移動する手法には、毎回ハッとさせられましたよ。
映像や音を上手く使って見る者をグイっと引き込む李相日監督の手腕、お見事でした。

犯人の手配写真や映像の作り込み具合もこれまた素晴らしかったですね。
各エピソードの3人皆それぞれがこの男かもと思わせるようなクオリティは、本当に見事としか言いようがありません。
結果配役からまあそうだよな~的ところに落ち着いた感は否めませんが、見ているうちはいろんなパターンが想像できて本当に混乱しました。
勿論、綾野剛、松山ケンイチ、森山未來は顔の系統が一緒と言うだけでなく役者の力としてもホント素晴らしかったです、綾野剛の受けの演技が特に良かったなぁ、もし自分がそっち方面の人だったら、間違いなく好きになります、傾いた弁当を直すしぐさが最高でした!

しかし本作のテーマでもあった人を信じることの難しさを、まあとにかく痛感させられた作品でしたね。
信じる為には疑う必要もある、知ることから信頼を築いていける、そんなことを各エピソードから改めて考えさせられました。
妻夫木聡と綾野剛の台詞が特に印象深かったです。
逆に知ろうともせずただ信じたら、悲劇を招く可能性があることも痛感・・・。
それにしても沖縄エピソードの広瀬すずの演技には驚いた、こんなことまでできるのか、今までも逸材だと思ってきましたが今後も更に楽しみになってきました。

沖縄と言えば、基地問題と言う現実の社会問題までストーリーに絡めていたのはとても印象的でしたね。
どこにぶつけていいのか分からない沖縄の方々の怒り、心動かされましたよ、この映画を見た方が知ることで少しでも変わることを期待します。
その他にもそれぞれの怒りがズシリと重くのしかかる作品でしたね。
しかし日本を代表する名優7人(+安定の脇役・池脇千鶴&少ない時間で抜群の存在感・高畑充希)の演技は本当に見応えありました。
監督が代えのきかないキャストと言い放ったのも至極納得の演技でしたね。

スペランカー