「2時間30分の間に映画を3本見ているよう」怒り ちゃーるすとんさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間30分の間に映画を3本見ているよう
2時間30分の間に映画を3本見ているのかと思うほど、疲れた。
これは、2時間30の間にうまくまとまっていると言うのか、
どうせなら前後編にして4時間でと思うのかどちらかというと
私は後者。
映画の前に原作を読むことはあまりないのだが、「悪人」を見て気が変わり、原作を1晩で読んだ。
原作を読んだ印象は、「素晴らしい」の一言。人間と人間が1つの事件を軸にして、感情を奮い立たせる3つの物語を1つの小説にすることは難しかったろう。
映画ともなると、それ以上である。
私は試写会で本作を見たが、その前にみた予告編は素晴らしかった。まぁ、どの映画でも予告は素晴らしいが。と同時に、1本でどのように表現するのか疑問だった。
そして、試写会を見た。本当に疲れる物語。
殺しのシーンも、グロテスクな部分は無いし、ゲイのシーンもそこまでひどくない。これは悪人でもそう感じたが、
まず、圧倒的に説明が少ないと感じた。
3つの物語が始まる部分、私は原作を読んでいたのでわかったが、原作を読んでいない、予告も見ていない、なんて人は3つの物語が交差していることに気づくのに時間がかかったのではないかと思う。
ただ、それぞれの役者の演技は素晴らしかった。宮崎あおいの演技は折り紙つき。妻夫木もいつも通り素晴らしい。広瀬すずも、原作に合った通りの、心から怒りを叫ぶ演技。バラエティ番組で彼女を見ていると、なぜ、ここまで心が入った演技ができるのか疑問に思う。
演技で驚いたのは、綾野剛と森山未來。
綾野剛は最近、劇場で見すぎていたが、ゲイのシーンより、静かにしている彼の印象がこの映画では強く残り、普段のぶっ飛んだ演技とは一線を画していたため、とても記憶に残った。
森山未來も、自分が犯人だというのに、広瀬すずや、少年にうそをつく演技は、迫真。原作を知っている自分も騙されそうになった。
演技は素晴らしかったが、原作のすばらしさを生かし切れていないと感じた。説明が少なかったから。
特に、宮崎あおいの人柄や、広瀬すずのシーンが少なかったり、事件後のヒロインたちの感情がすごく薄れてしまったし、
一番残念なのが、ピエール滝たちの刑事が島に来なかったこと。
なぜ、最後の森山未來を殺すシーン。あそこをもっと、スクリーンで見たかった。
よって、前後編にしてほしかったというのが一番の印象。
演技は素晴らしいが、原作のポイントを押さえ切れていなかった。
吉田修一 x 李相日を楽しみにしてきたので、少し残念。