「浅く早くなる呼吸を感じる」怒り tempさんの映画レビュー(感想・評価)
浅く早くなる呼吸を感じる
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テーマは信じるということ。
人は他人をどこまで信じられるのか。
どうして簡単に信じることができるのか。
3つの物語の登場人物は、
互いを信じたい、信じよう、
疑いたくない、だけど疑ってしまう、
と苦しみ、怒りが生まれていく。
沖縄編を筆頭にそれぞれの怒りが綻びを生んでいく。
タイトルの怒りとは
LGBTや沖縄、性風俗の人間が
昔から受けている潜在意識下の差別に対して
感じているものなのか、
信頼関係やプライドを傷つけることに対する私的な怒りなのか、、、
演技がすごい。端的には
ストーリーがすごい、というより
演技がすごい、と紹介してしまう映画。
気迫のある演技に飲み込まれ、
悲劇の連続に心臓が潰れそうになりながら、
浅く早くなる呼吸を感じながら
映画は進んでいく。
でもそれでも、全く救われないわけではない、
李監督はそんな映画を作る。
途中の綾野剛がお弁当の位置を直すシーン、
なんで不器用なんだと、胸が締め付けられる。
一生懸命に生きている登場人物がすごく胸に迫ってくる。
沖縄の少年の悲しみと怒り、
信じていたので許せなかった、
という言葉に対して、
勝浦の宮崎あおい、
東京の妻夫木聡は、
信じることができなかった。
ラストの宮崎あおい、カメラをグーっと見つめて、
僕らは一気に現実世界へと引き戻される。
そして広瀬すずの、
友達を二人同時に失った後の声のない叫び。
この映画に正義はあったのだろうか。
イーストウッドのミスティックリバー
ポールハギスのクラッシュ
のような重〜い人間ドラマ。
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