屍者の帝国のレビュー・感想・評価
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理屈抜きの冒険活劇
普通のアクションアニメでした.
Project Itoh第一弾ということで昨年から期待していた作品ですが,予想以上に普通のアニメに仕上げてきたと思いました.
原作は未読でしたが,何となく言わんとしていることは分かりますし,視聴者を置いてけぼりにしないような配慮はされていると思います.
この作品のみ円城塔氏と伊藤計劃氏の合作が原作であり,円城塔氏といえば『スペース☆ダンディ』で難解な脚本を書いていたことが記憶に新しいです.同作品でも,難解でありながら繰り返しみるとスルメのような味わい深さがあり,円城氏の魅力がありました.
一方で,本作はそのような難解さは極力排除しており,分かりやすい人間関係と派手なアクションシーンを前面に押し出してきていました.そういう意味で期待外れではありましたが,十分な品質のアニメには仕上がっているのではないでしょうか.
良い点としては,美術デザインです.19世紀らしい小道具をSF的にアレンジしているのは見事です.屍者の首筋につなぐプラグは『攻殻機動隊』や『マトリックス』へのオマージュを感じさせながらも当時ありそうな痛々しさも残しており,しっかりと作り込まれていると思いました.パイプオルガンを使用した音楽など雰囲気作りもバッチリだったのではないでしょうか.
閉口した点としては,唯一の女性キャラクター「ハダリー」でしょうか.いかにもなプロポーションと服装で,何か理由があるのかと思えば,特に何もなかったのでただの目の保養狙いだったのかと感じました.説明不足はここだけではないのですけど,主要キャラクターで絵面的に浮いていたのを放置するのはどうなのかなと思いました.
あとは,時代設定でしょうか.前半の19世紀のロンドンや古来の戦争シーンからスチームパンクへのワクワク感を高めておいて,クライマックスの超技術連続は逆に興ざめを誘う要因になると思いました.主人公ワトソンの結末を考えると妥当ではある設定ですが,その肉付けを現代的におこないすぎている印象を受けます.
総評すると原作者から予想したものとは違うけれども,一見さんでも楽しめるように仕上げた作品となります.全体的にマイルドにしている分,中毒性のようなものはなく,誰でも楽しめる普通の作品に仕上がっていると思います.
少なくとも,原作を読んでみようという気分にはなると思います.
発想が面白い
原作とは別作品
伊藤計劃の虐殺器官、ハーモニー、屍者の帝国は読みました。
屍者の帝国自体はそんなに好きではありませんが、他の2作品も映画化されますので、せっかくなので全部観ようと思いました。
原作とは別作品です。
フライデーが主人公の友人の死体…というのは原作にはありません。
なのでフライデーに魂を宿らせようとする主人公の行動はすべて映画オリジナルです。
また、登場人物の性格も原作の印象とは随分違います。(特にバーナビー)
日本あたりまではいい感じのペースでしたが、そこから先は詰め込み過ぎというか…時間配分がいまいちだったなという印象。
原作のセリフがちょいちょい無理やりねじ込まれていますが、ストーリーが大幅に変わっているので違和感を覚えました。
他の2作品も同様に原作を無視した展開になったら嫌だなぁ…。
ゾンビブーム?
伊藤計劃、知りません(陳謝) 純粋にノイタミナ保証で観覧した。
所謂ゾンビ関連が溢れている昨今ではあるが、これもその一つ。
その中に於いて、生命や意思、言葉、気持ちなどを質量に表すと21gになるそんな科学活劇アニメ、所謂SFである。
やはりゾンビをうまく演出していくにはアニメが一番しっくりくるのはそれが現実的では無いという至極尤もなことを押さえて、だからこそ、その荒唐無稽なパラレルワールドを楽しめるのもアニメの得意なところである。
『メトロポリス』という昔のSF実写映画にインスパイアされた、古いのか新しいのか混在しているメカニカルなギミックは、それ自体郷愁を誘うのはなぜだろう?! 動いてる原動力がスチームというのも産業革命の凄まじい技術革新を体現してるメタファーなのかもしれない。
一寸こそばゆいのが、やたらと器具を首の後ろ、脊髄辺りをブッスブッス差し込む、いやねじ込んでいるシーンが出てきて、これが気持ち悪いというかなんというか(苦笑)
『攻殻機動隊』原始バージョンって感じだけど、やはり直差しは痛さが伝わるというか(^^;)
演出も最後はパーッと花火が咲くような力ずくで押し切るような感じ。スペクタクルで華やかな最後の決闘シーンも、初めの我慢を続けての解放というのが狙いなのかもしれない。
色々な偉人や有名古典小説の名前が出てきて、それが微妙に関係してあるところもその背景を知ってる人が観ればもっと面白さもあるのかもしれないが、学がない者で・・・
その少々の難解さも魅力と感じたストーリーであった。
雰囲気は良かった
原作は知らない。全体的な話の流れは悪くない。日本編まではとても良かったがクライマックス辺りは無駄に話を大きくし過ぎ。
キャストについてはハダリー以外はすごく良かった。ハダリーだけは最後まで違和感が抜けず。キャラデザと声が合ってないのと機械にしてはセリフに表情がありすぎかな。
そもそもこの話にハダリーが不要。あんた魂持ってるよと言いたくなるぐらい自然に会話し、状況判断できる頭脳があるなら、何も使い勝手の悪そうな屍者なんて使わずにハダリー量産するでしょう。
すごく良いところ沢山あるのにどうも余計なものを盛り込みすぎた。
決して改悪などではない
屍者の帝国。素晴らしい出来だったと思う。
設定に変更があり、それを「改悪だ」という方もいるようだが、「フライデーを蘇らせる」という強い目的を置くことによって物語の筋がはっきりしていた。
原作の本筋は変わっていないながら、わかりやすく多少は優しくなっていたと思う。
「改悪」ではないが、決して「改善」ではない。
小説は文字ならではの表現があり、映像と音声では物足りないところもあった。さらに「2時間」という短い時間に収めなければならないため、展開が急だと感じることもあった。
しかし。それを補うだけの映像での表現のクオリティは凄まじかった。
原作を読みながら脳内で描いていた想像より遥かに壮大で、正直アニメ映画のクオリティか?と疑いたくなるくらいだった。
そしてなにより、キャスト陣である。
とにかく「フライデー」役の村瀬歩さんの叫びには鳥肌がたった。回想で出ていた生前のフライデーの落ち着いた雰囲気からは想像できないような叫び声。
また、エンドロール後の語りも非常によかった。他にも語りたいキャスト陣はいるが、長くなるので割愛する。
とにかく言いたいことはただ一つ。
みんな見てくれ!
原作ファンなら後悔はないと思うが、設定変更に不満がある方もいるだろう...
劇場版はわかりやすくなっているものの、「アニメ映画」としてみると少々難しいかもしれない。ただ、内容があまり理解できずとも面白さを感じた方がいるようなので、そういう方は是非、原作を購入していただきたい。
屍者の帝国がこの世に生まれ出てくれくれたこと。
伊藤計劃先生
円城塔先生
劇場版のスタッフとキャストの皆様
本当にありがとうございました。
絶対に劇場で
面白かった
伊藤計劃として観るのではなく、「Project-Itoh」として観るべき
私は伊藤計劃さんの「虐殺器官」、「ハーモニー」、「The Indifference Engine」「伊藤計劃思想1・2」を読み、また円城塔さんの「道化師の蝶」、「これはペンです。」を読んでいる。それを踏まえた上での感想だ。
円城塔さんが原作中のあとがきで「僕は伊藤計劃さんではないし、伊藤計劃さんならこうするだろう、という事は全く考えずに続きを書いた。それに、伊藤さんを引き継いで書いた訳でもない」と書いている。
「The Indifference Engine」からも分かるとおり、「屍者の帝国」の序盤の30ページは伊藤計劃だ。そして、序盤後は円城塔によって伊藤計劃らしさは全くない、別物を書き上げた。
だから、この作品は円城塔による「Project Itoh」と評価したい。
映画を観て、「なんだ、伊藤計劃ってこんな感じか」という感想を持つのは早計であり、円城塔としての評価を得るべき作品だ。
なので、伊藤計劃というフィルターを通してみた映画「屍者の帝国」は全くの駄作である。前述した評価としてならば納得の作品だと思う。
一作目にして度肝抜かされました。
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