「魂の在りか」屍者の帝国 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の在りか
親友の魂を戻すためフランケンシュタインの著書をめぐり旅をする話
「虐殺器官」を見てから興味が湧き伊藤 計劃原作のアニメーションを見ることに。
原作は約30ページの未完の原稿を円城塔が引き継いだとのこと。
そう考えると作風と言うかトーンが違うようにも思える。
スチームパンクと死者と近代の組み合わせは聞いただけでも「好きです!!」と言いたくなる。作画も安定していて作品自体の完成度も高かったと思う。
友人の理論を証明するため、言葉が聞きたいから、主人公が旅をする動機も理解できるし魅力的なキャラクター達もいい味をだしていた。
物語の展開や行動が難解だったので表層しか理解できなかった。一応自分なりには納得できる点があったのでよかった。
物語のテーマは「虐殺器官」「ハーモニー」と同じで、魂の本質を探る旅、言葉と魂の繋がり、新世界の創造。
連続して作品を見ると、一貫性が見えてくる。
伊藤計劃さんは病に伏せりながら命と死後の世界そして新世界に思いを巡らせていたのではないだろうか。
死を目前にして、平和な世界、死の無い世界を想像し自分なりの答えを出したのかも知れない。
本作は死者を肉体的蘇らせることのできた世界、しかし、魂までは蘇らせられない。魂の重さ21gの在りかを探る物語。
言葉により意思が生まれるとした理論は難しくて完全には理解できなかった。
だだその理論からすると伊藤氏は作品を媒介に肉体は無いものの魂は現世に有り続ける、留まっているのではないかと思った。
ある意味「屍者の帝国」は彼を蘇らせるのに一役かっているのかも知れない。
事実、伊藤計劃を全く知らなかった自分の中に彼の作品、意思が入って来て記憶されたのは確かだ。
劇中セリフより
「君に僕は見えるかい」
瞳の輝きの中には魂が宿っている
見ようと思っても見えないモノ、見たくないのに見えるモノ。
それは魂の意思により判断されるのかも知れない。
まずは今見えてるモノをどうするか、だと思った。