「魂を信じるかどうか」カフェ・ド・フロール だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
魂を信じるかどうか
異なる時代の2つの物語がちりばめられた構成ですが、やがてそのつながりが見て取れるという仕組みです。やや難しい作りに思えます。タイトルになっているカフェドフロールという曲が2つの時代の最初からある共通項です。
以下に、いったいこの映画は何を描いていたかを分析した結果を記します。
主観による分析なので正解かはわかりませんが、大変ネタバレですので、閲覧は自己責任でお願いします。
一言で言うとリインカネーションの話でした。日本語で言えば輪廻転生です。
パリのジャクリーヌはモントリオールのキャロルで、
パリのローラン(ダウン症の息子)が、モントリオールのアントワーヌで、
パリのヴェラが、モントリオールのローズなんですね。
60年代のパリでジャクリーヌは女手ひとつでダウン症のローランを、普通の子供と同じように育てようと頑張っています。
やや、その愛情は過剰でもありますが、この世で二人っきりという孤独感がジャクリーヌの愛を増長させているとも考えられ、まぁリアリティのある母と息子の姿に思えます。ローランはカフェドフロールという音楽が好きで、毎日レコードをかけてくれと母にせがみます。そんな母子の前にダウン症の少女ヴェラが表れ、ローランとヴェラは7歳ながら一眼で恋に落ち離れなくなります。
学校も親たちも困惑し、引き離そうとするけれど、ローランは大抵抗。ジャクリーヌは思い通りにならない息子に芝居を打ったり、手をあげたり、挙句にベッドに縛り付けたりしてどうにかヴェラから引き離そうとしますが、ついにはヴェラとローランを車に乗せ、心中をしてしまいます。
三人で乗った乗用車で事故を起こしたと思われます。
時は流れて2011年。20年連れ添った妻がいるのに若いローズに恋をしてしまったアントワーヌは妻キャロルと離婚し、ローズと熱愛中です。しかしなにやらアントワーヌはジンの瓶に描かれた近衛兵の幻覚を見たり、セラピストと会話したりしており不安定な様子。一方捨てられた妻は夢遊病に悩まされます。ダウン症の男の子を乗せて車を飛ばす大変危ない夢です。キャロルはこの夢の意味が知りたいと霊媒師を訪ねます。霊媒師にあってわかったのは車にのせているダウン症の男の子はアントワーヌの前世の姿で、運命の相手の女の子といる。その女の子はキャロルではない。キャロルはその男の子の母親であり、運命の相手ではない。というあたりを、知らされたのだが理解したのだがして泣きます。
それでもアントワーヌが自分の元へ戻ってくることを願わずにいられないキャロルですが、ジャクリーヌが車で事故を起こすシーンを夢で見てしまい、これではいけない!となって(多分)アントワーヌにわたしをゆるして(解放してあげるってゆう意味か?)といい、キャロル、アントワーヌ、ローズの三人で和解の抱擁をします。そしてアントワーヌとローズは結婚、輪廻転生を経て運命の二人は結ばれました。
時系列であらすじを纏めるとこのようになると思います。
前世?生まれ変わり?寝言は寝て言えと思います。そういうの苦手です。
その存在を実感したことがないので信じようがない。
魂の永遠性というやつを、全然信じられない私です。
なので、その辺は嘘も方便、として読むことにしました。
運命の相手だと信じて愛した男が、他の女を愛するようになったことを、どうにか納得したいキャロルに用意されたファンタジーと捉えました。そうすると何とか腑に落ちました。
終わってしまったとしても、過去の思い出まで呪いたくないし、娘もいるから今後のアントワーヌたちもなんとか好意的に受け止めたいし、てなところから出てきた幻想なんだと思えば、受け止められます、、、多分。
いやいや、作り手は真正面から輪廻転生して結ばれた奇蹟を賞賛していますから、私の見方は見当はずれに違いないのですが、、、好みというか思想の問題ですね。
魂はずっとずっと生き続けていて前世の記憶や業に引きずられながら我々は生きているならば、私の魂の来し方とやらをを見せてみなさいよ!
そんな的はずれな怒りも湧きつつ、キャロルに幸あれと思ったりしたのでした。
アントワーヌとローズの出会いのシーンでもカフェドフロールは流れていてその後のアントワーヌの愛のテーマみたいになっています。
ローランもカフェドフロールを聞くとヴェラを思い出すと言っています。
パリのシーンで、窓ガラスにちらっとローズが映ったりもしてました。
飛行機雲が太陽に向かって伸びるカットが何度も挿入され、ラストで飛行機が爆発してましたがあれはなんの象徴なんでしょうかね。わかりませんでした。
アントワーヌが見ていた近衛兵の幻覚はなんだったんでしょうね。キャロルへの罪悪感?
映像はかっこいいし、音楽もいいし、構成もちりばめられた伏線も楽しめましたのでいいのですが、主題がどうにも…
好みが分かれるところですね。