「華々しい逆転劇とならないけど、等身大のリライフで心がほんわか温まりました」Re:LIFE リライフ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
華々しい逆転劇とならないけど、等身大のリライフで心がほんわか温まりました
さて、ラブコメの帝王と長年女性ファンを魅了してきた主演ヒュー・グラントも人気が低迷してきて、新機軸を狙った作品がこれ。長年コンビを組んできた脚本兼監督のローレンスだけに、あてがきともいえる内容は、グラントにとっても『リライフ』となった作品といえるでしょう。
落ち目とはいえかつてはアカデミー賞脚本賞を受賞した主人公が、田舎の大学の文学部で客員講師として教える脚本についての講義内容は、映画業界を目指す人にとって、一見の価値ある内容でした。
物語は、ハリウッドで何度となく演じられてきた、ダメダメ男の復活劇。華々しい逆転劇とならないのは、映画としちゃあ、つまんないのだけれども、主人公にとってはタイトル通り『Re:LIFE』となり得る大ききな一歩を見せてくれて、心がほんわか温まりました(^。^)
電気代も払えなくて真っ暗闇に追い込まれた、落ち目の脚本家キースは、渋々大学でシナリオコースの講師引き受けを約束するものの、見事にやる気なし。見学気分でやってきた大学のある街で、偶然自分のファンだという学生と知り合い、一晩を共にしたことから、やっと赴任する踏ん切りがつく始末。
それでも、初日の歓迎パーティでは、うるさ型の女教授に文学論争をふっかけたり暗雲ただよう仕事はじめでした。
教えることが大嫌いなキースは、受講希望者から10人を選定する選考にも、全くやる気が出ません。希望者が書いてきた脚本も読まずに、プロフィールの見た目だけで適当に選んでしまうのですからひどいものですよね。
講義の仕方も分からず戸惑うキースでも、生徒から質問されると脚本家として思わず答えてしまいます。腐ってもプロとしてのアドバイスが奏功して、生徒たちの表現力は確実に上がっていくのでした。そんな生徒たちの成長に、教えることの楽しさをキースは逆に学んでいくのです。決定的なことは、ひとりの生徒の脚本がハリウッドに採用されたとき、キースは教師としての醍醐味を感じるのですね。
成功を掴んだ生徒の作品に自分もおこぼれでプロデューサーとして参加できるというのに、それを断ってまで、おまえ独りでこれからは頑張るんだと見栄を切ったのはなぜか?については、重要な伏線になるので、ぜひ劇場でご確認ください。
教え子と深い仲になったことが発覚して、キースは教職を追われそうになります。どうせ最初は嫌々受けた仕事だったから、未練はありません。生徒の脚本から着想を得た脚本作りも進みつつあったキースが自分にふさわしい「リライフ」を最後に選択します。どんな選択をしたのでしょうかねぇ(^^ゞ
印象的なシーンは、教え子のひとりが病に倒れ、キースが見舞いに行くシーン。実はキースは離婚していて18歳になる息子と離婚後に音信不通になっていたのです。ふと気がつくと、病気の生徒も同じ歳の18歳。そして病室では見舞いに来た家族と仲慎ましく談笑しているではありませんか。思わず息子のことを思い出したキースは、疎外感がこみ上げてきて嗚咽するシーンが、ジンと来ました。
本作は、離ればなれになった親子の物語でもあったのです。
そんなキースを教師として導き、息子と連絡するよう勇気づけるのがカーペンター。彼女はシングルマザーとして子育てのため休学して復学してきた年増女。でも明るく気丈にキースを支える姿は、次第に魅力的に映ってくるのです。本作の重要なキーマンとなるカーペンター役をマリサ・トメイが存在感たっぷりに演じていました。
また『セッション』では強烈な鬼教師を演じたJ・Kシモンズは一転して、家族思いの温厚な学部長役を好演しています。家族のことを思うだけで、30秒で泣き出してしまうキャラは、爆笑ものでした。
他にも10人の生徒は、全員キャラが立っていて、笑わせてくれます。ユーモラスで肩が凝らない展開のなかで、本当の自分と出会うために、人生の書き直し方を教えてくれる作品でした。