「「アリスのままで◯◯◯」の◯◯◯にどんな言葉を入れますか?」アリスのままで ウシダトモユキさんの映画レビュー(感想・評価)
「アリスのままで◯◯◯」の◯◯◯にどんな言葉を入れますか?
さすがのジュリアン・ムーアですねー。「迫真の演技!」とか「すごい役作り!」とかそういうとこで勝負してないカンジが良かったです。脚本や演出に依るところも大きいと思うんですけども、ただただ感じ良くて聡明なお母さんを体現していて、観客はアリスを好きになりますよね。
「観客がアリスを好きになる。」この映画のけっこう重要なポイントだと思いました。
この映画、若年性アルツハイマー病を“社会派”的に取り上げてる話じゃないです。また、いわゆる典型的な難病モノとして、死に別れの悲しさで泣かせる話でもないようです。そういう「大きな話」に意図的にしていなくて、これはたぶん、「アリスという人に、観客を寄り添わせる話」なんでしょうね。だから「観客がアリスを好きになる。」ってのが重要で、そうさせたら勝ちって映画だったんだと思います。
観てる途中はですね、どんどん記憶をなくしていくこれからの自分に対して、アリスが仕組んだある仕掛けがあるんですけども、その是非について考えさせる映画なのかなーと思ったんです。その仕掛けをする自由が、人にはあるのか?そんな話だったのかなぁってエンドロールの最中も考えていたんです。人間が人間であるために必要なものと、自分が自分であるために必要なものの違いについてとか。
そういう思考を保留にしながら映画館を出た時に、前より天気が少し良くなっていて、
ふと、「おし、今日からもっと精一杯生きよう。」という気持ちになったんです。
そしたらもう、テーマだのメッセージだのはどうでもよくなっていましたよ。あぁ、こういう映画の楽しみ方もあるんだなぁって思いましたね。そんな映画でした。
「アリスのままで」ってタイトルにどんな言葉を続けるか?
「アリスのままで、できるだけ生きる」
「アリスのままでいられるうちに死ぬ」
「アリスのままでいたいけど、もうムリ」
「アリスのままでという扱いで接し続ける」
いろいろ当てはめて考えていたんですけど、そもそも原題は「Still Alice」。
だったら「アリスのまま」って直訳ですよ。「で」が余分だったんです。
どうなろうと彼女は「アリスのまま」ってことですよ。
彼女自身に記憶が消えても、誰かが彼女の記憶をもって彼女のそばにいるならば、彼女は「Still Alice」ってことなんだなと思いました。やっぱりね、アリスという人に寄り添うことで感じる映画なんですね。
何の話だかわからなくなってきましたね、たぶんこれは愛の話です。